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今すぐにできる相続対策と、知っておきたいその落とし穴

23.08.01
業種別【不動産業(相続)】
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『終活』という言葉が世間に定着し、書店などでは法律知識のない人でも簡単に遺言書を作成できる遺言書作成キットのような商品をよく見かけるようになりました。
自分の最期を考えるとき、相続問題について悩む人も多いでしょう。
亡くなった人が何も準備をしていない場合でも、相続は法律に従って開始されます。
しかし、相続問題はひとたび紛争化すると、感情的対立が強くなり、解決までに何年もの時間がかかってしまうことも珍しくありません。
今からできる相続(争族)対策と注意点を解説します。
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やはり確実なのは遺言書! だが注意点も

自分が亡くなった後の相続で、どのように財産を遺すのかを考えた際に悩む理由は、人それぞれです。
たとえば「自分がこの世を去った後、家族が憎み合うような事態は避けたい」、「家を継ぐ長男や特定の相続人に、多くの財産を承継させたい」など、家族構成や立場などによってもさまざまでしょう。
このように明確な意思を持つ人に有効な相続対策といえばやはり、『遺言書』の作成です。

遺言書には複数の種類があり、そのなかで最も安全性が高いのは、公証役場で作成する公正証書遺言といえます。
法律知識に富んだ公証人の関与のもと作成できるので、無効となる恐れはあまりありません。また、原本を公証役場で保管するため、自己保管で起こりがちな紛失・偽造といったリスクもなくなります。

しかし、遺言書による相続対策には、いくつかの注意点があります。
まず、方式が厳格であり、無効になる恐れがあることです。
遺言書は、民法の定めとは異なる方式で作成された場合、無効になります。
特に、自筆証書遺言は方式不備が原因で無効になることが少なくありません。
ほかにも、内容が不明確だったり、遺言能力が欠如していたと判断される場合など、無効になるケースはいくつかあります。

次に、遺言書を用意しても、遺言で指定した内容どおりに必ず相続されるとは限らないということです。
遺言書で特定の相続人に多くの財産を相続させる旨を書いた場合、その相続人がほかの相続人から遺留分侵害額を請求されることがあります。
遺留分とは、遺言をもっても侵害することができない各相続人の最低限の相続分をいいます。

たとえば、相続人が3兄弟の子どもの場合、被相続人が「長男にすべての財産を相続させる」という遺言書を作成したとします。
この場合、最低限の相続分として次男と三男それぞれに相続財産の6分の1ずつの遺留分が保障されるため、遺言の内容にかかわらず、次男と三男は6分の1ずつ長男に対して請求することが可能になります。

このように、たとえ遺言書を作成しても、すべて思い通りになるというわけではないことを理解しておかなければなりません。

生前贈与がトラブルの引き金になることも

被相続人の意思を記した遺言書による相続対策をしていても、回避しづらい相続問題があります。
よくあるのは、相続について頭を抱える資産家がよく取る対策の一つ『生前贈与』です。

生前贈与は、相続が開始してからの税金対策としては有益といえます。
しかし、『争族』対策としては注意が必要です。
というのも、複数の相続人のなかで、特定の相続人だけが被相続人から生前贈与を受けていた場合、『特別受益』があったとみなされ、生前贈与分を考慮して相続分を計算しなければならないことがあるからです。
これには、相続人同士の公平を保つため、相続分の前渡しを得ている相続人がいる場合に、その調整を図るという目的があります。

なお、すべての贈与が特別受益にあたるわけではありません。
生前贈与のうち特別受益とされるのは、『婚姻または養子縁組のための贈与』もしくは『生活の資本としての贈与』である場合に限られます。

そのため相続問題では、そもそも生前贈与があったかどうかや、生前贈与されていた場合はそれが特別受益として考慮すべき贈与に当たるかどうか、といった点が注目されます。

生前贈与に関しては、よかれと思って取った節税対策が、実は将来的なトラブルの引き金になっている可能性があります。
遺せる財産と、その財産を自分はどのように相続してほしいのかを明確にし、具体的な行動に移る前に弁護士などの専門家へ相談するのがよいでしょう。


※本記事の記載内容は、2023年8月現在の法令・情報等に基づいています。