中小企業の経営を丸裸にする5つの重要指標!【後編】
春風が心地よい季節となりましたがいかがお過ごしでしょうか。さて、税理士を超えた経営のパートナーであるSS総合会計では、決算書が読めるようになり経営を改善したいとお考えの経営者様のお役に立つべく【決算書】にまつわるコラムをお送りしております。今回は第5弾!ぜひご覧ください。
《目次》
中小企業の経営を丸裸にする5つの重要指標!【後編】
1.5つの重要指標とは?
2.重要指標3:総資本経常利益率
3.重要指標4:短期的安定性=当座比率
4.重要指標5:長期的安定性=自己資本比率
中小企業の経営を丸裸にする5つの重要指標!【後編】
それは、①固定費生産性②労働分配率③総資本経常利益率(ROA)④当座比率⑤自己資本比率の5つです。損益計算書分析における重要指標は①②であり、貸借対照表分析においては④⑤が重要指標になってきます。③だけは特殊で貸借対照表と損益計算書の両方を使う重要指標となります。またもう一つの重要な観点をお伝えします。決算書を分析する上で意識すべき重要な2点があります。一つは収益性です。つまりどれだけの投資に対してリターンがあるかが分かるものでなければなりません。もう一つは安全性です。経営は収益性が高いことが大事であると同時に安全でなければなりません。この2つを満たして初めて経営がバランスが取れているといっていいでしょう。前編に続き、今回は重要指標3:総資本経常利益率から見ていくことにしましょう。
例えば…
つまり、総資産を減らして売上高を増やすことで総資産回転率(=売上÷経常利益×100%)を上げていくことができます。売上に貢献していないような無駄な資産を処分することが大事になるわけです。例えば①不要な在庫を整理又は処分する②回収が難しい売掛金などの債権を整理して貸倒損失にする③遊休資産など不要になった土地や建物を処分する④土地や建物を売却しオフィスをレンタルするといった施策が考えられるわけです。
しかし打ち手はそれだけではありません。当然売上高経常利益率を上げていけば、さらに投資効率が良くなるわけです。しかし先ほど売上高経常利益率は意味がないといった手前、ここをさらに分解して、粗利(限界利益)÷売上高 と 経常利益÷粗利(限界利益)と分解してみるとさらに経営が分かりやすくなります。つまり、粗利率を高め、経営安全率を上げることによってさらに経営効率が高まるという意味なのです。経営安全率=経常利益÷粗利(限界利益)は、固定費生産性とまったく同じ意味合いとなります。なぜなら固定費生産性は、粗利-経常利益=固定費で粗利を割った数字であり、算式の構成要素が全く同じだからです。つまり、粗利率を高め固定費生産性を高めれば、ROAは高くなっていくわけです。そういう意味でいうと、この表は貸借対照表と損益計算書の要素を含んだ網羅的な投資効率を表したものとなり、ここを高めることができればかなり収益性は高いといえる指標になるわけです。
決算書を紐解く5つの指標をお分かりいただけたでしょうか。次回はそれら指標を使って分析する上で、さらに有効な方法をお伝えします。どうぞご期待ください!
中小企業の経営を丸裸にする5つの重要指標!【後編】
1.5つの重要指標とは?
2.重要指標3:総資本経常利益率
3.重要指標4:短期的安定性=当座比率
4.重要指標5:長期的安定性=自己資本比率
中小企業の経営を丸裸にする5つの重要指標!【後編】
1.5つの重要指標とは?
それは、①固定費生産性②労働分配率③総資本経常利益率(ROA)④当座比率⑤自己資本比率の5つです。損益計算書分析における重要指標は①②であり、貸借対照表分析においては④⑤が重要指標になってきます。③だけは特殊で貸借対照表と損益計算書の両方を使う重要指標となります。またもう一つの重要な観点をお伝えします。決算書を分析する上で意識すべき重要な2点があります。一つは収益性です。つまりどれだけの投資に対してリターンがあるかが分かるものでなければなりません。もう一つは安全性です。経営は収益性が高いことが大事であると同時に安全でなければなりません。この2つを満たして初めて経営がバランスが取れているといっていいでしょう。前編に続き、今回は重要指標3:総資本経常利益率から見ていくことにしましょう。2.重要指標3:総資本経常利益率
総資本経常利益率は、総資本に対する経常利益の割合を示す指標です。英語ではROAと呼ばれReturn On Assetの頭文字をとったものです。この指標は、企業の経常的な活動による業績状態を示すもので、投下したすべての資産に対してどの程度の利益を生み出したのかを知ることができます。算式は当期純利益の額 ÷ 総資産額(総資本額)× 100で表されます。この指標は、貸借対照表の総資産額と損益計算書の経常利益を組み合わせた算式となっており、自分からすると企業の投資効率を最もよくあらわした表になります。ROAの目安や平均値は一般的には10%ほどで大変優良、5%ほどで良い、1~2%ほどで普通と判断されます。この数字を良くするためには単純に考えれば利益額を増やすか総資産を減らすかどちらかになるわけですが、この算式を分解すると様々な打ち手が出てきます。例えば…
つまり、総資産を減らして売上高を増やすことで総資産回転率(=売上÷経常利益×100%)を上げていくことができます。売上に貢献していないような無駄な資産を処分することが大事になるわけです。例えば①不要な在庫を整理又は処分する②回収が難しい売掛金などの債権を整理して貸倒損失にする③遊休資産など不要になった土地や建物を処分する④土地や建物を売却しオフィスをレンタルするといった施策が考えられるわけです。
しかし打ち手はそれだけではありません。当然売上高経常利益率を上げていけば、さらに投資効率が良くなるわけです。しかし先ほど売上高経常利益率は意味がないといった手前、ここをさらに分解して、粗利(限界利益)÷売上高 と 経常利益÷粗利(限界利益)と分解してみるとさらに経営が分かりやすくなります。つまり、粗利率を高め、経営安全率を上げることによってさらに経営効率が高まるという意味なのです。経営安全率=経常利益÷粗利(限界利益)は、固定費生産性とまったく同じ意味合いとなります。なぜなら固定費生産性は、粗利-経常利益=固定費で粗利を割った数字であり、算式の構成要素が全く同じだからです。つまり、粗利率を高め固定費生産性を高めれば、ROAは高くなっていくわけです。そういう意味でいうと、この表は貸借対照表と損益計算書の要素を含んだ網羅的な投資効率を表したものとなり、ここを高めることができればかなり収益性は高いといえる指標になるわけです。
3.重要指標4:短期的安定性=当座比率
さぁ次に貸借対照表です。貸借対照表は一時点の財産状態を表したものであり、会社設立からの積み上げで成り立つものであるので企業の本質的な強さを測るには持ってこいの指標です。そして貸借対照表は会社の安全性を最も分かりやすく示してくれます。安全性には2つの視点があります。1つは短期的安全性、そしてもう1つが長期的安全性です。短期的安全性からお話するのですが、これは当座比率を見ればよく分かります。当座比率とは流動負債に対して当座資産((現金預金、売掛金、受取手形、有価証券、未収金等)のある程度すぐにお金に変えられる資産のこと)がどの程度保有されているかを示す指標で、短期の債務返済能力に関する財務安全性を示すものです。算式は当座資産÷流動資産となっております。ではどれくらいの比率があればよいでしょうか?自分はできれば300%欲しいと思っております!えっそんなに?100%あればいいんではないですか?なんて声が聞こえてきそうですね。それではダメです。短期的安全性が低いとなると倒産リスクが高まるからです。お金は血液です。人間でいうと血液が無くなるとと即命にかかわりますよね。企業も同じです。ですからここが薄い場合には金融機関から借り入れをしてでも厚くする必要があります。人間でいう輸血です。緊急事態のときは尚更です。コロナショックが起きた直後、我々SS総合会計は全顧問先にコロナ対策融資を目一杯受けるよう指導しました。なぜならコロナで企業がどのようになるかまったく不透明だったからです。そのとき調べて分かったのですが、もし売上が0になった場合に半年もつ企業は実はほとんどありませんでした。それが実態です。それでも借入が怖くて躊躇する顧問先もたくさんありました。コロナショックでの経験を活かし我々はなんとか説得して借りてもらいました。この指標を見る上での注意点を言いますね。当座資産はすべて現金預金ではなく売掛金といった貸倒れる可能性のある資産も含まれます。ですので貸倒の可能性を加味して指標を出すようにしてください。また流動負債に支払手形がある場合には十分に注意する必要があります。支払手形を事故を起こすと銀行取引停止となり実質倒産という状態になります。ですので支払手形はできる限り減らしていくのが賢明であると考えています。4.重要指標5:長期的安定性=自己資本比率
最後に貸借対照表における長期的安定性を示す指標です。それはズバリ自己資本比率です。自己資本比率が高く長期的安定性が高い会社は、経営的な視点から真に強い会社であるといえます。自己資本比率は、自己資本÷総資産で算出することができますが、この自己資本は主に何で構成されているかというと税引後当期利益の積み上げからなります。ここから一つ言えることは節税のし過ぎは会社を潰します。なぜか?法人税は企業の最終的な差引利益をベースに課税されることになっております。ここから単純に考えれば法人税を下げようと思ったら差引利益を少なくすればいいわけです。そうなるとどうなるか?利益が薄くなり結果として自己資本を薄くします。すると自己資本比率が下がり会社の基盤を危うくするのです。経営のことを真剣に考えれば、節税など大したことではないのです。経営の神様ドラッカーは「税制に基づく経営判断ほど愚かなことはない」ときっぱり断言しております。つまり自己資本比率を高めるためにはしっかり利益をだして法人税を払っていくことなんて経営の基本なのです。ではこの差引利益を出すためにはどうすればいいでしょうか?重要指標1,2で説明したように適正な労働分配率で経営を行い、固定費生産性を高めれば利益が出てくるのです!そうすると最終的に自己資本比率が結果として高まっていくのです!すべては繋がっているのです!この税引後利益の積立のことを内部留保と呼びます。内部留保を厚くすることの意義はすなわち生産効率を高めることで利益を最大化させそれを地道に積み上げていくことで会社に長期安定性をもたらす基盤を作り上げることにあるのです。非常に時間がかかることではあるのですが非常に本質的なことでもあるのです。では自己資本比率はどれくらいあればいいでしょうか?自分はまず30%を目指しましょうとお話します。そしてできれば50%を長期目標にしていくことでいざ大不況が来たとしてもびくともしない基盤ができますよとお伝えしております。また自己資本は比率だけでなく自己資本額も大切です。いくら比率が高くても金額が少なければ、たちまち債務超過になってしまうからです。自己資本額の目安はおよそ1億円とお伝えしています。1億円が達成したら3億円。そして10億を目指していきましょうとお伝えします。まずは「30%1億円」ここが一つの目安となるでしょう。是非皆さんも目指していただきたいです!決算書を紐解く5つの指標をお分かりいただけたでしょうか。次回はそれら指標を使って分析する上で、さらに有効な方法をお伝えします。どうぞご期待ください!