先代との確執!これは、後継者であれば、誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。後継者の悩みベスト3は何か?簡単にまとめると、1.将来のビジョンが見えない 2.古参社員を含め正社員を巻き込めない 3.先代との喧嘩が絶えない となります。 これは、私が後継者に対して経営塾を行っていて、悩みを聞いたり、後継者コンサルティングをやったときの肌感覚でこのように思います。後継者の皆さんなら、「あ~確かに」と思われたのではないでしょうか。本日はこのお悩みに対して、なぜ起きてしまうのか、どう解決していくのかについてお話します。
1.後継者の悩み・・・それは先代との確執
何を隠そうこの私代表の鈴木も、2代目経営者であり、後継者であります。いわゆるこの親子喧嘩を体験し、克服し、今現在もその葛藤に悩みながら経営している一人であります。私は平成31年3月に、幻冬舎MCより「デキる二代目社長は知っている事業承継5つの鉄則」という本を出版いたしました。自身が税理士であるにもかかわらず、実は事業承継税制といったスキームは一切書いておりません(笑)。親子の確執をどのように乗り越え、新しいイノベーションを戦略的に起こし、社員を巻き込んでいくかという経営承継について詳しく書きました。というのも、事業承継の根本問題は税制の問題ではないと思っているからです。とても嬉しいことに、悩まれている後継者がこの本を手に取り、全国より弊社主催の「理念策定塾」や「経営輝塾」に参加してくれています。詳しくは、この本を見ていただくか、塾に参加していただければ、経営承継のコンセプトや具体的な後継者としてのあり方については分かりますので参考にしてもらえればと思います。ここでは的を絞って親子の確執の乗り越え方について説明していきます。
2.なぜ親子喧嘩は起こってしまうのか?
では、そもそもなぜ親子喧嘩が起こるのでしょうか?私はその大きな一つの原因に、親子の甘えがあると思っております。もっというと甘えからくるコミュニケーションの質が悪さです。親子というのは面白いもので、なんだかんだいっても、根本的に愛が深い関係性だといえますよね。いきなり哲学の話ですか?という声が聞こえてきそうですが、哲学的な話をしないと理解はできません。特に親にとって子供に対する愛情は、ものすごく深いものがあります。どんなに口では「あいつはバカ息子だ」といったとしても、心の中では深い愛情が流れており「どうかどうか最後は俺以上の経営者になってほしい」と願っているのではないでしょうか。最近ではいろんな親がいますが、ほとんどの親は、もし子供の身に何かあれば、自分は命を投げ捨てても助けたいと思うもので、まさに親にとって子供は目に入れても痛くないほどかわいい存在なのだとも思います。しかしながら、子供はどうでしょうか?親の心とは裏腹に意外とあっさりしたものです。「親思う心にまさる親心」。子が親を思う心よりも、親が子を思う心の方が深いという意味の語ですが、事業承継の場でもまさにそれが当てはまり、子供は、親が子供のためにと思い苦労して築きあげた会社やお金を当たり前と思い、なかなか感謝の気持ちを表すことができないのが現実です。
3.コミュニケーションの悪化は、親子関係を破壊する。
で、この関係性を前提にすると何が悪いかといいますと、後継者に甘えという気持ちが発生しやすいために、コミュニケーションの型がどんどん悪くなるということです。これを許すと親に対する反発したような態度、不貞腐れたような態度を示す場面が多くなります。どんなに態度を悪くしても、最後は親父は俺のこと許してくれるよな!といっているかのようです。親父、結局は俺のことを愛しているんだろ!ということを逆手にとったかのように親を否定したり、批判したりするようにもなります。つまり、コミュニケーションの型がどんどん悪くなるのです。「そんなに嫌ならお前なんか辞めてしまえ!」「ああ、だったら、辞めてやるよ!」こんな風に啖呵をきって辞めたとしても、覚悟がなくて、1週間したらしれっと帰ってきて社長に謝りもせずに仕事をする。こんなことよくある話です。しかし、コミュニケーションは本当に気を付けなければなりません。コミュニケーションの型がとことんまで悪化すると、本当に親子の縁まで切れてしまうことがあるからです。それでは本末転倒もいいところです。その典型が大塚家具ですよね。大塚家具の定時株主総会で、久美子社長は、創業者で父の大塚勝久会長の退任を求め争いました。最終的に久美子社長が勝利しましたが、これは私から言わせれば、子供による親の公開処刑です。親からすれば屈辱だったことでしょう。ここまでくると、やったほうは、やったほうで親のやり方をまったく肯定できなくなります。つまり自己呪縛です。「会長は間違っている!周到してなるものか!!」こんな邪念にとらわれ、戦略策定に曇りがかかるのです。そんなことなら最初から継がずに、自分で事業を起こせばいいのです。
4.コミュニケーションの型を整え、事業承継の壁を乗り越える!
少し話がずれてしまいましたが、結局何が言いたかったかと言いますと、いくら愛の深い親子だとしても、一人の人間として接しなければ、お互いを誤解して親子関係が悪化していくということです。つまり、いくら親子でも一つの人格をもち自立した存在であり、個人の間にも一本の川が流れているのです。しかし、親子の場合には、それが陸続きになってしまっているケースが往々にしてあり、それ故コミュニケーションが悪くなります。そして「息子は言わなくてもわかってくれるだろう」「別に親父に反発しても、子供だから最後には許してくれるだろう」とお互いに努力しなくなります。すると、コミュニケーションはさらに悪化し、どんどん雑になります。するとどうなるか?結果として分かり合えるチャンスを失うのです。事業承継の鉄則は「守りながら変容」です。きちんとバトンを渡してもらうためには、先代が築いた価値観をしっかりと引き継ぎ、それを先代に感謝の言葉で伝えることが大事になるのです。喧嘩もしながらも、しっかりとこのプロセスを踏むことが後継者としての腕の見せ所になるわけです。後継者にも大人としての対応が求められるのです。親子のコミュニケーションは、親が強烈に子供を批判している場合もありますし、子供が親を邪険にしている場合もあります。ただ、どちらから歩み寄るべきかといえば、できれば子供から歩みよりたいものです。先代の価値観を理解するためには、コミュニケーションを通じてでしか理解できないですから。非言語コミュニケーションの型を意識して整えることができれば一人前です。どうか、先代の話に耳を傾け、意識して頷き、理解を示してみましょう!形が先で心は後です。先代が「あいつも少しは分かるようになってきたな~」と思ってもらったら、半分は事業承継もできたも同然です。あとは、実務で実績を出し、本当の意味で認めてもらえれば、バトンを渡してくれることでしょう。その道のりは険しいですが、一つ一つクリアしていきましょう!後継者の皆様ならできると信じています!