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合同会社から株式会社へ!『組織変更』に必要な登記申請

25.06.03
業種別【不動産業(登記)】
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会社の成長戦略において、組織の形態の変更、いわゆる「組織変更」は重要な選択肢の一つです。
特に、合同会社から株式会社への組織変更は、事業拡大や信用力の向上を目指すうえで前向きに検討する必要があります。
組織変更を行うためには、さまざまなステップを踏むことになりますが、そのなかでも特に重要性の高い手続きが登記申請です。
今回は、組織変更に伴う登記申請のなかでも、「合同会社から株式会社へ組織変更する場合」に限定して、その登記申請について解説します。

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組織変更を行うメリットと具体的な手続き

組織変更とは、合同会社、合名会社、合資会社といった持分会社から株式会社へ、あるいはその逆の株式会社から持分会社へ、法人組織を変更する手続きを指します。
組織変更を行うことで、会社の責任体制や意思決定の構造、資金の調達方法などが変わることになります。

会社が組織変更を検討する背景にはさまざまな要因がありますが、たとえば、成長過程にある中小企業やベンチャー企業などの合同会社は、将来を見据えて、株式会社への組織変更を検討することが少なくありません。
事業規模の拡大に伴い、より多くの資金調達が必要になった場合には、株式会社の方が株式発行を通じて広範囲の投資家から資金を集めやすくなりますし、上場を視野に入れる場合は、株式会社であることが前提となります。
合同会社のままでは上場できませんし、やはり取引先や金融機関に対する信用力も、一般的には株式会社の方が有利に働きます。
合同会社から株式会社への組織変更は、会社の成長フェーズに応じた戦略的な決断といえるでしょう。

では、具体的にどのように組織変更を進めていけばよいのでしょうか。
最初に必要なのは、組織変更のベースとなる「組織変更計画」の作成です。
組織変更計画とは、組織変更後の会社の商号、目的、本店所在地、発行可能株式総数、取締役に関する事項、効力の発生日など、重要な事項を定めた計画のことで、内容については、効力の発生日の前日までに全社員の同意を得ておく必要があります。

続いて必要なのは、「債権者保護手続き」です。
この手続きは、組織変更によって自社の責任体制や財産の扱いが変わることで、取引先や金融機関などの債権者が不利益を受けないようにするためのものです。
具体的には、組織変更を行う旨を官報に公告して、知れたる債権者に対して個別に催告します。
同時に、債権者からの異議申し立て期間を設け、異議の申し立てがあれば、弁済や担保の提供などの対応を行います。
なお、知れたる債権者がいない場合でも、官報による公告手続きは必ず行う必要があります。

こうした一連の手続きの最後に、組織変更の登記申請を行うことになります。

組織変更の登記申請で注意すべきポイント

組織変更の登記申請は、合同会社から株式会社への移行を法的に完了させるための重要な手続きです。
まず、法務局のホームページで「持分会社の組織変更(持分会社から株式会社)の登記申請書」をダウンロードし、記載例に従って、必要事項を記入していきます。
記入済の申請書と、複数の必要な書面を添付して登記所に提出することで、株式会社の設立登記と、持分会社の解散登記を同時に申請したことになります。

添付する書面は、組織変更計画書や全社員の同意書、債権者保護手続きに関する書面、代表取締役の選定に関する書面などです。
個々のケースで異なることもあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

また、登記申請を行う際には、登録免許税を納付する必要があります。
税額は、新たに設立する株式会社の資本金の1,000分の1.5と定められていますが、その額が3万円未満であれば、納める額は3万円になります。
そこに組織変更による解散登記の登録免許税3万円が加わるため、最低でも6万円の登録免許税がかかることになります。

さらに、組織変更の登記に関する申請期間は、組織変更の効力の発生日から2週間以内と定められています。
つまり、債権者保護手続きによる債権者の異議申し立て期間が終わり、組織変更計画で定めた効力の発生日が来たら、登記申請を行うことになります。
効力の発生日から2週間を過ぎてから登記申請を行うと、過料の対象になる可能性があるので注意しましょう。

法務局による審査は、通常1~2週間ほどで完了します。
この審査が通れば、会社の形態が合同会社から、正式に株式会社になります。

株式会社への組織変更は、会社の成長と発展にとって、重要なステップです。
特に、登記申請は法的に組織変更を完了させるうえで不可欠な手続きであり、正確な知識と入念な準備が求められます。
手続きに不安を感じる場合は、専門家に相談することをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2025年6月現在の法令・情報等に基づいています。