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労働時間になる?『オンコール待機』についての考え方

24.12.03
業種別【医業】
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患者の急変などに対応するため、勤務医にオンコール待機をさせている医療機関は少なくありません。
オンコール待機とは労働時間外に自宅などの職場外の場所で医師に待機してもらい、緊急時には携帯電話などで呼び出して、駆けつけてもらう体制のことを指し、「宅直勤務」とも呼ばれます。
このオンコール待機は夜勤や当直勤務と同じような労働時間にあたるのでしょうか。
それとも労働時間にはあたらないのでしょうか。
オンコール待機が労働時間であるかどうかを判断するための考え方について解説します。

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法的な規定や上限規制もないオンコール待機

入院患者の急変や救急患者の対応、緊急手術などで労働時間外に、自宅など医療機関の外にいる勤務医を呼び出さなければならないことがあります。
勤務医はそうした緊急事態を想定して、常に待機していなければいけません。
これがオンコール待機(宅直勤務)です。

緊急時にすぐ出勤できる体制でいてもらわなければならないオンコール待機は、労務トラブルの原因になりがちです。
特にオンコール待機している時間が労働時間にあたるのか、それともあたらないのかについては、これまでさまざまな裁判で争われてきました。
もし、オンコール待機が労働時間になるのであれば、医療機関側は勤務医にその分の賃金を支払う必要があります。

しかし、オンコール待機は一律にすべて労働時間であると決めつけることはできません。
なぜならオンコール待機について定めた法律は存在せず、医療機関の内規や働き方の実態によって個別に判断しなければならないからです。

労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことを指し、使用者の命令や暗黙の了解によって労働者が業務に従事する時間が労働時間にあたることになります。
オンコール待機の場合も、医療機関の指揮命令下に置かれているかどうかが、一つの判断基準となります。

たとえば、勤務医の待機場所を自宅など一部の場所に限定し、電話には遅延なく出るように求めていた場合は、指揮命令下に置かれているといえます。
逆に、自宅以外の場所に自由に出かけることを認めており、状況によっては呼び出しに応じなくてもよいとしていた場合などは、指揮命令下に置かれているとまではいえません。

また、呼び出しの頻度も判断材料の一つになります。
たとえオンコール待機を命じていたとしても、実態として年に数回のみの呼び出ししか行なっていなければ、すべての時間が指揮命令下に置かれているとはいえないでしょう。
逆に、頻繁に呼び出しを行なっており、医師に常に精神的な緊張を強いていた場合は、医師を指揮命令下に置いていると見なされる可能性が高くなります。

過去には、緊急時の呼び出しへの対応を義務づけていた看護師のオンコール待機に関する裁判で、約1,000万円近い未払残業代の支払いを使用者側である訪問看護事業会社に命じた判例もありました。

オンコール待機で医療機関ができること

「医師の働き方改革」が進むなかで、今後はオンコール待機について、より厳しい目が向けられていくでしょう。
特に、これまで勤務医たちの自主的な取り決めやボランティア精神だけで支えられてきたケースなどでは、医師の不足などもあって、将来的には破綻してしまうかもしれません。

オンコール待機については、法的な整備も遅れていて、回数や時間、待機場所の規制なども存在しません。
ただでさえ多忙な勤務医はオンコール待機によって、さらなる精神的な負担を抱えることになり、「バーンアウト(燃え尽き症候群)」や「メンタルヘルス」などの問題を引き起こすことにもなります。

医療機関ができることは、オンコール待機についての内部調査を行い、実態を把握したうえで、回数や待機時間の上限規制や残業代、オンコール手当の支払いなど、適正な体制の整備を進めていくことです。

近年は、電話対応や往診を代行してくれる医療機関や介護施設などに向けたオンコール代行サービスなども登場しています。
医療機関向けのオンコール代行サービスは、主に在宅診療を行う医療機関に向けてのものですが、医師をはじめとした医療従事者の負担を少しでも減らすために、こうしたサービスの利用も検討してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2024年12月現在の法令・情報等に基づいています。