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歩合制の最低賃金はどうなる? 計算方法や割増賃金の取り扱いを解説

22.08.30
ビジネス【労働法】
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最低賃金とは、最低賃金法によって定められた、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額のことです。
雇用形態を問わず、すべての労働者に適用されます。
最低賃金のなかでも地方最低賃金は、47都道府県ごとに1時間あたりの最低賃金が定められています。
月給制でも年俸制でも、時給換算した際にその額を下回ることはできません。
では、従業員の業績によって給与が決まる歩合制の場合、最低賃金をどのように設定すればよいのでしょうか。
今回は歩合制における最低賃金の設定について説明します。
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完全歩合制は労働基準法で禁止されている

歩合制とは、従業員の業績や成果によって給与を支払う成果報酬型の給与制度です。
不動産や保険の営業職、タクシードライバーにエステティシャンなど、個人の働きが売上に直結しやすい業種で多く採用されています。
また、チラシ配りや店頭での商品販売など、配った個数や売った個数が明確になるアルバイトやパートなどでも歩合制を導入しているケースがあります。

業務の成果が直接給与に反映されるため、労働者にとっては高収入を狙える魅力的な給料形態といえます。
一方で、業績や成果をあげられなければ、給与が減ってしまうというシビアな一面もあります。
生活に必要な賃金まで得られなくなってしまうと、生活もままなりません。
労働者の生活を保証するため、労働基準法では労働時間に応じて一定額の賃金を保証しなければなりませんので、『完全歩合制』を認めてはいません。
なお、完全歩合制とは、従業員の成果に応じた成果報酬しか支払わない給与制度を指します
原則的に労使関係にある場合は労働基準法が適用されるため、完全歩合制が適用できるのは、労使関係にない個人事業主との業務委託などに限られています
ただし、業務委託であっても、受注者が発注者の指揮命令下にある場合は、労使関係が認められるので注意が必要です。

給与制度に歩合制を採用する場合には、労働者の生活を保障するという観点から、固定給を併用した『固定給+歩合給』が一般的に使われています。
固定給と歩合給の割合は企業によってさまざまですが、行政は賃金の6割以上が固定給になるように求めています。


歩合制の最低賃金を確認しよう

歩合制であっても最低賃金法が適用されるため、47都道府県ごとに定められた最低賃金を下回ることはできません。

最低賃金を下回っていないか確認する方法は次のとおりです。
まず、従業員に支払っている1カ月の固定給と歩合給をそれぞれ総労働時間で割り、固定給と歩合給の1時間あたりの賃金額の合計を求めます。
それらの合計額が、最低賃金と比べて下回っていなければ、適切に給与を支払っていることになります

たとえば、最低賃金が1,041円(2022年9月時点)の東京都において事業を営んでおり、従業員の1カ月の平均所定労働時間が160時間、給与の総支給額が20万円だったとします。
この20万円のうち、固定給が15万円、歩合給が5万円であれば、下記の計算式で1時間あたりの賃金額を求めることができます。

固定給15万円÷所定労働時間の160時間=937.5円
歩合給5万円÷所定労働時間の160時間=312.5円

固定給1時間あたりの賃金額937.5円+歩合給1時間あたりの賃金額312.5円=1,250円となるため、東京都の最低賃金は下回っていないことになります。

ちなみに歩合制でも1日8時間、1週間40時間の法定労働時間を超えた分は、労働基準法第37条に基づき、25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
したがって、歩合制を導入している企業は、歩合給に相当する部分と割増賃金に相当する部分を明確にしておかなければなりません
割増賃金が加わった場合の最低賃金の算出方法は、固定給を所定労働時間数で除した金額に、歩合給を総労働時間数(時間外労働を含む)で除した金額を加え、その合計額が地域別最低賃金を下回っていないかを確認します。

もし、この1時間あたりの賃金額が最低賃金を下回っていた場合は、給与の未払いになってしまいます。
いつまでも未払いのままだと、従業員から未払い賃金の請求を受ける可能性があるうえ、労働基準監督署から是正勧告を受けることもあります。
悪質な場合は最低賃金法第40条により、50万円以下の罰金が科される可能性もあるので、未払いにならないように注意が必要です。
給与の支払いは重要なので、疑問点のない支払いを心がけましょう。


※本記事の記載内容は、2022年8月現在の法令・情報等に基づいています。