株式会社 未来サポートアスカ

倒産も増加!『門前薬局』の減算措置によるクリニックへの影響は?

26.06.30
業種別【医業】
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クリニックの開業において、いわゆる「門前薬局」の誘致は、長らく医療提供体制の基本スタイルとして定着してきました。
しかし、薬局の経営環境は大きな転換点を迎えており、それに伴い、クリニックの経営方針にも影響を及ぼすことが懸念されています。
令和8年度の調剤報酬改定では、「門前薬局等立地依存減算」が新設されました。
これは、特定の条件に該当する薬局に対して、調剤基本料を減算するというものです。
さらに、経営難に陥る薬局の倒産数も増加傾向にあります。
薬局を取り巻く現状や、クリニックと薬局の関係性の変化などについて、解説します。

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新設された「門前薬局等立地依存減算」

厚生労働省の調査によると、2024年度末時点での全国の薬局の数は63,203施設にのぼりました。
前年度と比べると375施設(0.6%)増加しており、この数は全国にあるコンビニエンスストアの総店舗数を上回ります。
また、都市部だけでなく地方都市においても、複数の薬局が軒を連ねる光景は日常的なものとなりました。

このように薬局数の増加に伴い、そこで働く薬剤師の数も同様に増加傾向にあります。
かつては薬剤師不足が叫ばれる時期もありましたが、現在では業界全体として、薬局も薬剤師も飽和状態にあるといえます。

こうした薬局の飽和を背景として、令和8年度の調剤報酬改定において、「門前薬局等立地依存減算」が新設されました。
この減算は、都市部などへの薬局の新規出店を抑制することを目的としています。
具体的には、2026年6月以降に、特別区や政令指定都市といった都市部の門前薬局が密集している地域、もしくは複数のクリニックが集まる医療モール内において、「処方箋受付回数が600回超1,800回以下かつ処方箋集中率が85%超」の薬局を新規開設すると、減算の適用を受けることになります。
適用の対象となった薬局は、調剤基本料から一律でマイナス15点という減算措置を受けます。

ただし、都市部に該当する地域であっても、出店予定地の半径500メートル以内にほかの保険薬局が存在しない地点での開設は減算の対象外です。
こうした仕組みからもわかる通り、調剤報酬における減算措置は、地域における薬局の偏在を是正し、医療資源が不足している地域への適正な配置を促すことが狙いの一つです。

これまで多くの門前薬局は、病院の前という好立地にあったため、比較的安定した収益を上げることができました。
隣接するクリニックの処方箋を持った患者が来局することで、事業として成立していたからです。

しかし、前述の通り、現在は薬局も薬剤師も供給過剰の状況にあります。
また、高齢化の進展により全国で発行される処方箋の総枚数も増え続けています。
限られた財源のなかで増大する総医療費を抑えるためには、増え続ける薬局の数を適正化し、効率的な医療提供体制へ移行させることが国の急務となっています。
こうした減算措置は、門前薬局の新規開設を事実上抑制し、地域全体の医療資源のバランスを整えるための施策といえます。

ドラッグストアとの連携も選択肢の一つに

国は、これまでも薬局の再編に力を入れてきました。
厚生労働省は、2015年に「患者のための薬局ビジョン」を策定し、特定の医院と連携して処方箋を処理する従来の「門前薬局」から、患者本位の機能を持つ「かかりつけ薬局」への再編を促してきました。
かかりつけ薬局とは、一人の患者が複数の異なる医療機関を受診した場合でも、その服薬情報を一元的かつ継続的に把握し、薬の重複投与や相互作用を未然に防ぐ役割を担う薬局を指します。
つまり、今後の薬局には、調剤して薬を渡すだけでなく、地域住民の健康管理をトータルでサポートする機能が求められるということです。
実際に、特定の医療機関からの処方箋調剤に頼るビジネスモデルは限界を迎えつつあり、施設数が増加する一方で、2025年度には調剤薬局の倒産件数が前年度を上回ったというデータもあります。

こうした薬局業界の大きな変化は、クリニックの開業や日々の経営戦略にも影響を及ぼします。
薬局側にとって、減算のリスクや将来的な経営不安を伴う門前薬局としての新規出店はハードルが高く、誘致の成功率が下がることは避けられません。
したがって、今後のクリニック経営においては、単一の門前薬局との連携ではなく、地域に根ざし、複数の医療機関から広く処方箋を受け付けている薬局との連携を模索することになります。

その際の有力な選択肢の一つが、調剤機能を持つドラッグストアです。
ドラッグストアチェーンは資金力や人材確保のノウハウを持っており、日用品の販売から調剤まで、地域の健康拠点として多様なサービスを提供しています。
立地に依存しない集客力や患者の利便性を強みとするドラッグストアを連携先の候補として考えることは、クリニックにとっても集患や患者満足度の向上につなげるための選択肢の一つとして検討してもよいのではないでしょうか。


※本記事の記載内容は、2026年7月現在の法令・情報等に基づいています。