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価格の高騰が継続中! 下がらない『米価格』の背景と対応策

25.05.06
業種別【飲食業】
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近年、食卓に欠かせない米の価格が、高騰の一途をたどっています。
飲食店にとって、米は定食や丼もの、寿司など、幅広いメニューで使用する重要な食材です。
米の価格高騰は、仕入れコストの増加に直結し、経営を圧迫する大きな要因となっています。
この状況が今後も続くのであれば、メニュー価格の値上げも視野に入れざるを得ないかもしれません。
しかし、値上げは顧客離れを引き起こす可能性もあり、慎重な判断が求められます。
米の価格高騰が続く背景を把握し、飲食店が取るべき対応策について、考えていきましょう。

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食卓へ影響「令和の米騒動」はなぜ起きた?

近年の米の価格高騰については、落ち着く兆しが見えず、むしろ加速している状況です。
過去数年と比較しても米の価格は非常に高い水準で推移しています。
取引価格の指標として農林水産省が公表している「相対取引価格」によれば、2025年3月の時点で、去年の同月と比べて全銘柄平均68%上昇し、前月比で2%下がったものの、依然高止まりが続いています。
地域や銘柄、品質によって変動しているものの、業務用米として需要の高いコシヒカリやあきたこまちといった品種も、顕著な価格上昇が見られており、全体的に高止まりしているといえるでしょう。

では、なぜ米の価格高騰がここまで続いているのでしょうか。
理由はいくつかありますが、その一つに天候不順による不作があります。
近年、異常気象による高温や長雨、台風などの影響で、米の収穫量が減少するケースが増えています。
特に2024年は記録的な猛暑になり、稲の生育環境や収穫にも小さくない影響を与えました。

また、異常気象と共に、減反政策の影響も無視できません。
政府が長年推進してきた減反政策(生産調整)により、米の生産量は抑制されてきました。
2018年に減反政策が廃止されましたが、農家の高齢化や離農が進んでいたため、生産量がすぐに増加するわけではありません。

さらに、全体的なコストの上昇も一つの要因となっています。
原油価格の高騰や人手不足の影響で、米を輸送するための物流コストが上昇しているなかで、急激な円安も輸入肥料や農業機械の価格高騰につながり、米の生産コストを押し上げています。

ほかにも、世界的な人口増加や新興国の経済成長に伴い、食料需要が増加していることも理由の一つです。
こうした複合的な理由によって、米の価格高騰が続いています。

供給不足と需要のバランスが崩れることで生じる米の価格高騰は、最終的に米不足を招きます。
近代に入っても何度か米不足は起きており、記録的な冷夏と日照不足によって全国的な大凶作に見舞われた1993年の「平成の米騒動」は、タイやアメリカ、中国などから大量の米を輸入するという対策が取られました。
近年の米の価格高騰に関しては、平成の米騒動になぞらえて「令和の米騒動」と呼ばれており、政府は対策として、米の安定供給と価格の調整を目的に、備蓄米の放出を行なっています。

米の価格高騰に飲食店ができる対策とは

米の価格高騰が続くなか、特に影響を受けるのが飲食店です。
米は多くの飲食店にとって欠かせない食材であり、価格高騰は仕入れコストの増加に直結します。
ただし、仕入れコストが増加しても、すぐにその分をメニュー価格に転嫁できるとは限りません。
価格競争が激しい地域や業態では、値上げがむずかしく、利益率が圧迫される可能性があります。
価格に転嫁する場合には、顧客離れを防ぐためにも、慎重な価格設定が必要になります。

また、米の使用量を減らすために、メニューの見直しを余儀なくされるかもしれません。
メニューを見直すのであれば、たとえば丼ものの全体量を減らしたり、米以外の食材を使ったメニューを増やしたりするなどの対策が考えられます。
業態によっては、健康的なイメージのある雑穀米や麦ごはんなどのメニューも受け入れられるでしょう。

経営状況によっては、仕入れ先の見直しも検討する必要があります。
複数の業者から見積もりを取り、より安く仕入れられる業者を探しましょう。
簡単ではありませんが、産地直送の契約を結ぶことで、コストを削減できる可能性もあります。
ほかにも、光熱費や消耗品費などのコスト削減や、オペレーションの見直しによる人件費の削減も効果的です。

米の価格高騰は、今後もしばらく続く可能性が高いと見られています。
政府も対策に乗り出していますが、効果が出るまでには時間がかかるでしょう。
飲食店の経営においては、現状を正しく理解し、適切な対策を講じることが大切です。


※本記事の記載内容は、2025年5月現在の法令・情報等に基づいています。