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源泉所得税の『納期の特例』を利用する条件と注意点

24.12.24
ビジネス【税務・会計】
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源泉徴収は事業者が給与や報酬・料金を支払う際に、あらかじめ所得税の分を差し引いて、本人の代わりに納付する制度です。
日本の税金徴収方法の一つで、会社や個人事業主は差し引いた源泉所得税を原則として支払った月の翌月10日までに納付しなければいけません。
給与の支払いが発生している場合は、毎月差し引いた源泉所得税を納付することになりますが、一定の条件を満たしていれば、特例によって納付の頻度を減らすことができます。
源泉所得税の『納期の特例』について、利用する条件などについて解説します。

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源泉徴収の範囲と遅延などによるペナルティ

源泉徴収の対象となるのは主に給与所得ですが、それ以外にも個人事業主やフリーランスなどの個人に報酬・料金を支払う場合にも、支払い額から所得税分を差し引く必要がある場合があります。
所得税法で、以下の報酬・料金の場合に源泉徴収の対象となると定められています。

<個人の源泉徴収の対象となる範囲>
(1)原稿料や講演料など
(2)弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
(3)社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
(4)プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
(5)映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
(6)ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
(7)プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
(8)広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

事業者はこれらの報酬・料金や給与から所得税分を差し引き、翌月の10日までにまとめて納付する必要があります。
たとえば、6月に給与の支払いを行なったとしたら、その分の源泉所得税の納付は翌月の7月10日までになります。
このように源泉所得税を納付する義務がある事業者のことを「源泉徴収義務者」と呼びます。

もし、納付が期限までに間に合わなかったり、漏れがあったりした場合には、源泉徴収義務者がペナルティとして「不納付加算税」を納付しなければいけません。
不納付加算税とは納付すべき所得税額の10%が徴収される加算税のことですが、遅延した後からでも自発的に源泉所得税を納付すれば5%に軽減されます。
また、災害や交通の遮断、もしくは納付の委託を受けた金融機関の事務処理のミスなど、源泉徴収義務者側に遅延の責任がない場合は、ペナルティを受けることはありません。

『納期の特例』の仕組みと申請の方法

給与から差し引く場合は原則として毎月、源泉所得税を納付することになりますが、事務負担の軽減のため、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者であれば、源泉所得税の『納期の特例』を利用することができます。
納期の特例を使えば、給与や退職手当、税理士などの報酬・料金から徴収した源泉所得税について、1月から6月までの分を7月10日までに、7月~12月分を翌年の1月20日までと、年2回にまとめて納付することが可能になります。

半年に1度の納付になることで事務負担は減り、納付遅延のリスクも少なくなります。
ただし、1度に納付する額が大きくなるため、資金繰りには注意しなければならず、源泉徴収として預かった額を半年間はキープしておく必要があります。

また、納期の特例の対象となるのは、「給与や退職手当、税理士などの報酬・料金から徴収した源泉所得税」に限定されます。
給与以外は、前述した「個人の源泉徴収の対象となる範囲」の(1)~(8)のうち、(2)の報酬・料金しか認められていません。
それ以外の報酬・料金は原則として支払った月の翌月10日までに納付する必要があります。

そして、納期の特例を受けるには、承認に関する申請を行う必要があります。
申請は国税庁のホームページにある「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」に必要事項を記入して、税務署に提出します。
提出時期は特に定められておらず、提出して承認を受けた翌月に支払う給与などから適用されます。
たとえば、9月に申請書を提出した場合、翌月の10月から適用がスタートし、10月から12月までの分を翌年の1月20日に納付することになります。

なお、すでに源泉所得税の納付を滞納したり遅延したりしている源泉徴収義務者は、特例の承認が受けられない可能性があります。
また、承認を受けている源泉徴収義務者も、納付期限に間に合わないと承認が取り消されることがあるので注意してください。

さらに、給与の支給人員が常時10人以上になった場合は、条件から外れてしまうため、納期の特例が受けられなくなります。
常時10人以上になった時点で、速やかに「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を用意して、税務署長に届け出るようにしましょう。
支給人員が常時10人以上になったにもかかわらず、この届出書を提出していないままでいると、支給人員が10人以上になった時点まで遡り、不納付加算税および延滞税が課せられることになる場合があるため、注意が必要です。


※本記事の記載内容は、2024年12月現在の法令・情報等に基づいています。