藤垣会計事務所

ゴールさえ明確なら、部下の個性は引き出せる

13.09.01
ビジネス【人的資源】
dummy
どんな組織にも、クセのある人間はいるものだ。
ひとくちに「クセのある」と言ってもさまざまだが、
組織を統べるリーダーにとっては扱いにくいはずだ。

ついには部下のひとりが、
「アイツをどうにかして下さい!」と訴えてきた。
あなたならどうする?
dummy
もう15年以上前になる。
サッカーJ1リーグのジュビロ磐田に、
ドゥンガという選手がやってきた。
サッカー王国と呼ばれるブラジルの現役代表選手、
しかもキャプテンを務めるほどのプレーヤーだ。

Jリーグは開幕から3年目のタイミングで、
日本人選手は本当の意味で
プロフェッショナルに成り得ていなかった。

試合中はもちろん練習中でも、
ドゥンガはチームメイトのミスを見過ごさない。
小さなミスでも怒鳴りまくった。
あまりに怒ってばかりいるので、
「鬼軍曹」というあだ名がついたほどである。

日本人のリーダー格だった選手が、
「どうしてそんなに怒るのか」と訊ねた。
ドゥンガはほとんど間を置かずに答えた。

「確かにオレは、みんなに文句ばかり言っているかもしれない。
でも、それによって試合に勝つことができて、
笑顔で『良かったね』と言い合えるほうが、
何も言わずに負けるよりずっとずっといいだろう?」

自己主張の激しい部下や、マイペースな性格の持ち主に対して、
「周りに合わせろ」と言うのは簡単だ。
ただ、上司なら一拍おいて考えたい。
自己主張は単なるエゴなのか?
マイペースはどれぐらい周囲に迷惑をかけているのか?
そして、彼らは何を考えているのか?

スポーツの世界でも、選手の動機付けはさまざまだ。
チームの一員であることがすべての選手がいて、
試合に出たい選手がいて、出るだけでは満足できない選手がいる。

それでも、それぞれの思いの着地点が同じなら、
その組織は分裂しない。
組織としての機能性を発揮できる。

リーダーに求められるのは、組織のゴールを明確にできるかどうか。
それさえしっかりと提示できれば、部下の個性を生かすことはできるはずだ。


[プロフィール]
戸塚 啓(とつか けい)
1968年、神奈川県生まれ。法政大学法学部法律学科卒業後、雑誌編集者を経てフリーのスポーツライターに。新聞、雑誌などへの執筆のほか、CS放送で欧州サッカーの解説なども。主な著書に『不動の絆』(角川書店)、『僕らは強くなりたい~震災の中のセンバツ』(幻冬舎)。