何によって知られるクリニックになりたいか? を問う
有床診療所や病院には昨年、「病床機能報告」という大変な作業が課せられました。昨年の通常国会で成立した「医療介護総合確保推進法」に基づく改正医療法によるものです。
簡単にいうと、すべての病棟ごとに「今年の7月1日時点(現在)は高度急性期・急性期・回復期・慢性期のどれを担っているか」「6年後はどうか」「2025年時点ではどうか(任意)」を答えるほか、構造設備、人員配置を記し、「具体的な医療機能」という項目ではレセプトに基づいて、現在具体的に提供している医療内容の実績データも添えなければなりません(まあ、レセプトデータの分析自体は、厚生労働省のほうでやってくれるようですが、かなり多岐にわたる項目を確認しなければなりません)。
繰り返しますが、これを「すべての病棟ごとに」です。事務スタッフが潤沢にいる大病院はともかく、有床診療所の負担のほどがうかがわれます。しかし、何しろ「医療法」による「義務」。未提出はもちろん、テキトーに答えたりしても都道府県からしかられ、へたすると公表のうえ30万円以下の罰金というのですから、どうにも逃げられないのです。
そもそもなぜ「2025年」なのか。それは、この年に団塊の世代が後期高齢者に突入するため。ただ、高齢化ということでいえば、実は2020年に後期高齢者数が前期高齢者数を上回ると予測されています。
あとたった5年で、高齢社会どころか「後期高齢社会」がやってくる。その時に、自施設はどういう医療を提供していくのか。「病床機能報告」は各医療機関がその展望を考えるよいきっかけになった可能性はあるように思います。「病棟ごとの2025年の医療機能」は任意回答項目になっていますが、現時点で回答できた施設は具体的な長期展望が描けているということでしょう。
この「病床機能報告」は、都道府県ごとにデータが公表され、それをもとに「地域医療構想」が策定されることになっています。これを機に、病床機能報告義務のないクリニックでも、まずは自施設の将来像を考えてみるのも良いのではないでしょうか。
今日は“マネジメントの父”と呼ばれたP.F.ドラッカーの名言でしめくくります。「もしドラ」で名前をご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
「人は、何によって人に知られたいかを自問しなければならない」(P.F.ドラッカー「プロフェッショナルの条件」ダイヤモンド社)
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[プロフィール]
中保 裕子(なかほ・ゆうこ)
医療ライターとして全国のがん医療、地域医療の現場を中心に医療者、患者、家族へのインタビューを行うほか、新聞広告等での疾患啓発広告制作、製薬企業等のマーケティング調査の実績も多い。有限会社ウエル・ビー 代表取締役。
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