法人化はお得? 経費として認められるものをピックアップ
個人事業主と法人は、開業の手続きや税金、信用度などの面でさまざまな違いがあり、認められる経費の範囲も異なります。
どちらも、事業にかかった費用は経費として計上できます。
さらに、法人は個人事業主よりも認められる経費の範囲が広いため、個人事業主から法人になる『法人成り』によって、その恩恵を受けることが可能です。
今回は、法人成りすると認められる経費について説明しましょう。
個人事業主と法人の経費に対する考え方
経費とは事業に使用した費用のことで、たとえば、事業で使用している事務用品は『消耗品費』として、取引先との事業に関係する飲食代は『接待交際費』として経費にできます。
通常、税金は事業によって得た収益から、経費の分を差し引いた利益に対して課せられます。
つまり、経費が多ければ多いほど、利益が少なくなり、その分かかる税金が減るので節税になるというわけです。
ただし、経費が増えるということは、出費が増えるということでもあります。
いくら経費で落とせても出費が増えれば、その年の会計が赤字になってしまうこともあります。
また、本来は経費と認められない事業に関係ない費用を経費として計上していると、税務調査の際に指摘を受けることになります。
法人には、会社を設立した代表者とは別に、『法人格』として法律で認められた権利能力が与えられます。
事業を行う事業者が法人になるため、従業員が代表者一人だったとしても、代表者と法人は分けて考えられます。
一方、個人事業主は、代表者も事業者も同一です。
そのため、通信費や家賃、水道光熱費などはプライベートで使用した分と、事業で使用した分が曖昧になってしまうため、確定申告の際に『按分』を行う必要があります。
たとえば、自宅の3割を仕事で使用している場合は、家賃の3割を経費として計上します。
また、個人事業主は事業によって得た利益が自身の所得となります。
法人の場合、事業によって得た収益のなかから代表者に給与が支払われるため、給与を経費として計上することができます。
法人なら家賃も経費計上できる
法人成りすると、人件費以外でも、個人事業主のときよりも経費として認められるものが増えます。
法人では、賃貸物件を会社名義で借りて社宅とすることで、家賃の一部が経費として認められます。
ただし、社宅の家賃を経費計上するには、住んでいる従業員から賃貸料相当額の50%以上の家賃を徴収する必要があるなど、条件があります。
社宅は役員に貸し出すことも可能ですが、建物の規模によって賃貸料相当額の計算方法が変わるので注意しましょう。
さらに、法人名義で契約した生命保険料なども経費に計上することができますが、保険金の受取人が法人ではなく、被保険者や被保険者の遺族の場合は、給与になるので注意が必要です。
ほかにも、出張した際の交通費や宿泊費、出張手当を経費にできます。
一方、個人事業主も、取引先との打ち合わせなど事業に関係する飲食代、交通費や出張時の宿泊費などは経費計上できます。
しかし、個人事業主の生命保険料は経費計上できず、出張手当も一般的にはありません。
法人成りには、個人事業主よりもさまざまな経費を計上できるということよりも、信用度が増すことや、赤字を繰り越せる期間が長いなどのメリットがあります。
ただし、法人成りはメリットばかりではありません。
法人成りすると、会社の設立費用や社会保険の加入義務、さらには赤字であっても地方税の均等割りが課税されるなど、費用や手間がかかるので注意が必要です。
節税対策の一環で、経費として使える範囲を広げたいといった理由で法人成りを検討する事業主は、多く存在します。
しかし、一定額以上の利益額や売上高がある場合などに検討されるケースが多く、法人成りの適切なタイミングはさまざまです。
法人成りを検討する際は税理士に相談するなどして、個人事業主でいる場合との比較などについてアドバイスをもらうとよいでしょう。
※本記事の記載内容は、2023年8月現在の法令・情報等に基づいています。