計画の提出期限は2024年3月末! 法人版事業承継税制の利用法
この制度を利用するには事前に計画を策定し、その内容を記した『特例承継計画』を提出する必要があります。
計画の提出期限は2024年3月31日までですが、計画策定には時間がかかるため、早めに準備しておくほうがよいでしょう。
期限後の計画変更も可能なため、特例承継計画だけ提出しておいてはいかがでしょうか。
今回は、法人版事業承継税制の概要と特例承継計画について説明します。
一般措置の欠点を解消する特例措置が導入される
事業承継において、経営者の保有する株式を後継者に譲り渡す『株式譲渡』はよく用いられる方法の一つです。
後継者は一定数以上の株式を譲り受けることで、安定した経営を行うことができます。
事業承継における株式譲渡は、『生前贈与』『相続』『売買』の3つに分けられます。
このうち生前贈与では贈与税が、死亡後に相続すると相続税が発生します。
法人版事業承継税制は、贈与される株式が非上場株式であるなど一定の条件を満たしていることを条件に、贈与税や相続税の納税が猶予される制度です。
事業承継後に企業が倒産したり、後継者が死亡した場合、あるいは次の後継者へ免除対象の株式が贈与された場合などは、納税が免除されます。
当初の法人版事業承継税制は、納税猶予対象となる株式が最大で3分の2までであることや、相続税の80%までしか猶予対象とならないことなど、いくつかの制限がありました(一般措置)。
しかし、2018年度の税制改正により、2027年12月31日までの期間限定ではありますが、対象株式を全株式としたうえで、猶予の割合も贈与税・相続税ともに100%とした特例措置が導入されました。
この特例措置によって、贈与税と相続税の全額免除も可能になりました。
ひとまず特例承継計画を作成して提出しておく
一般措置と比べるとメリットの多い特例措置ですが、適用を受けるには、いくつかの条件を満たす必要があります。
まず、一般措置との最大の違いは、特例承継計画を提出しなければならないということです。
特例承継計画とは、株式などを承継するまでの期間における事業計画と、後継者が株式などの譲渡を受けてから5年間の事業計画などを記したもので、さらに、税理士や商工会、商工会議所などの認定経営革新等支援機関による所見も記載する必要があります。
また、この特例承継計画は2024年3月31日までに都道府県知事に提出して確認を受ける必要もあり、それまでに提出しないと、特例措置を受けることができなくなります。
ほかにも特例措置を受けるためには、後継者が贈与前に3年以上はその企業の役員である必要があるなど、さまざまな条件があります。
しかし、特例承継計画を提出するだけであれば、ハードルはそこまで高くありません。
特例承継計画を提出できるのは、非上場企業かつ中小企業者で、先代の経営者が代表権を持っているなどの条件があります。
また、中小企業者の定義は業種ごとに異なります。
諸条件について詳しくは、国税庁サイトなどで確認してください。
特例承継計画は、あくまで事業承継の準備のためのものであり、提出時点では特例措置の適用条件を満たしている必要はありません。
将来的に事業承継を考えているのであれば、とりあえず特例承継計画を提出しておけば、あとから条件を満たすことで、特例措置を受けることが可能です。
提出後に後継者の変更や追加などがあれば、認定経営革新等支援機関の指導および助言を受けることで、特例承継計画の変更申請を行うこともできます。
しかし、提出期限の2024年3月31日を過ぎると提出そのものができなくなってしまうため注意してください。
また、特例承継計画を提出してから結局、株式の贈与や相続を行わなかったとしても、特にペナルティなどはありません。
法人版事業承継税制を利用するかは置いておいて、将来的に事業承継を考えているのであれば、まずは特例承継計画を含めた事業承継を取り扱う専門の税理士などに相談してみましょう。
※本記事の記載内容は、2023年6月現在の法令・情報等に基づいています。