消費税の『税込経理』と『税抜経理』の違いを理解しておこう!
消費税の課税事業者による消費税の会計処理は、『税込経理』と『税抜経理』のどちらかを選ぶことができます。
税込経理は消費税を取引価格に含めて、取引の総額として会計処理する方法のことで、税抜経理は消費税を取引価格に含めず、それぞれを分けて会計処理する方法のことです。
どちらを選んでも最終的に納める消費税額は変わりませんが、数字や仕訳方法などに違いがあります。
税込経理と税抜経理で異なるメリット・デメリットと、それぞれの特性を説明します。
税込経理は消費税を取引価格に含めて、取引の総額として会計処理する方法のことで、税抜経理は消費税を取引価格に含めず、それぞれを分けて会計処理する方法のことです。
どちらを選んでも最終的に納める消費税額は変わりませんが、数字や仕訳方法などに違いがあります。
税込経理と税抜経理で異なるメリット・デメリットと、それぞれの特性を説明します。
税込経理と税抜経理の併用は可能?
税込経理と税抜経理は会計処理を行う際の、仕訳方法が異なります。
税込経理は課税売上にかかる消費税の額は売上金額に、課税仕入にかかる消費税額は仕入金額などに含めて計上します。
消費税などの納付税額は租税公課として必要経費または損金に算入します。
税抜経理は、課税売上にかかる消費税額を『仮受消費税』、課税仕入にかかる消費税額を『仮払消費税』とします。
仮払消費税と仮受消費税は相殺され納付額を算出するので、納付する消費税額は税込経理と変わりません。
税込経理と税抜経理は事業者が任意で選択することが可能ですが、原則として、その事業者が行うすべての取引について同じ会計処理を行うこととされています。
例外的に、収益に係る取引について税抜経理を選択適用する場合には、(1)棚卸資産、(2)固定資産、繰延資産、(3)経費などのグループごと(売上・資産・経費)に異なる会計処理を行うことは可能ですが、個々の固定資産・経費ごとに税込経理と税抜経理を使い分けることはできません。
税込経理は税込価格だけを記帳すればよいため、仕分作業が簡単であるのがメリットといえます。
ただ、消費税額を含めて仕訳することになるため、利益が多く計上されることになり、実際の損益の把握や納付する消費税額などの予測がしづらいというデメリットもあります。
税込経理は処理が簡単なことから、人員や時間に余裕がなく、経理担当者の負担を減らしたい中小企業などが採用する傾向にあります。
また、消費税の納税義務が免除されている免税事業者は、そもそも消費税を区分する必要がないため、すべてにおいて税込経理で処理することになります。
一方、税抜経理は本体価格と消費税を分けて計上するため、経理処理がやや煩雑になるというデメリットはあるものの、実際の損益が把握しやすく、期末の消費税額や法人税額の予測が立てやすいというメリットがあります。
実際に使える金額を比較すると有利なのは?
処理の煩雑さでは税込経理、損益などのわかりやすさでは税抜経理に軍配が上がりますが、実際に使える金額を比較すると、税抜経理のほうが有利といえます。
たとえば、資本金が1億円以下の中小企業は、年間で800万円までの交際費を損金として計上することが認められています。
しかし、税込経理の場合は消費税額を含めた税込価格で判定され、税抜経理の場合は消費税額を除いた税抜価格で判定されるため、税抜経理よりも税込経理のほうが損金として計上できる交際費の額が減ることになります。
税抜経理であれば交際費を800万円まで使えますが、税込経理では税抜で730万円ほど交際費を使うことで、税込で800万円に到達してしまい、それ以上は損金への計上ができません。
税込経理と税抜経理で70万円ほどの判定基準の差がついてしまうため、毎年、700~800万円を超える多額の交際費が発生している法人であれば、税抜経理を選んでおいたほうが得策といえるでしょう。
また、減価償却資産などの場合でも税抜経理が有利です。
減価償却資産や繰延資産ついての会計処理も、税込経理は税込価格で判定され、税抜経理は税抜価格で判定されます。
現在、特例として中小企業には、取得価格が30万円以下の減価償却資産について、一定の要件のもとその購入金額を購入年度に損金として算入することが認められています(平成18年4月1日から令和6年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した減価償却資産が対象)。
たとえば、税抜価格が29万5,000円の減価償却資産を会計処理する場合、税抜経理の場合は購入年度にその金額のまま損金算入することが認められますが、税込経理の場合は税込価格で32万4,500円になるので、購入年度の損金算入が認められません。
近年では会計ソフトの普及に伴い、税込経理も税抜経理も処理の煩雑さに差はなくなっており、損益の把握や金額判定などの面から考えると、税抜経理のほうにメリットがあるといえます。
なお、税込経理から税抜経理に変更することは可能ですが、税込経理のときに購入した減価償却資産は、そのまま税込価格に基づく減価償却を行うことになるので注意が必要です。
今後、インボイス制度の導入にあたり、消費税の会計処理がさらに煩雑化する可能性もあります。
自社の経理を見直す際に、消費税の会計処理方法についても確認し、気になる点は専門家に相談すると安心でしょう。
※本記事の記載内容は、2023年4月現在の法令・情報等に基づいています。
税込経理と税抜経理は会計処理を行う際の、仕訳方法が異なります。
税込経理は課税売上にかかる消費税の額は売上金額に、課税仕入にかかる消費税額は仕入金額などに含めて計上します。
消費税などの納付税額は租税公課として必要経費または損金に算入します。
税抜経理は、課税売上にかかる消費税額を『仮受消費税』、課税仕入にかかる消費税額を『仮払消費税』とします。
仮払消費税と仮受消費税は相殺され納付額を算出するので、納付する消費税額は税込経理と変わりません。
税込経理と税抜経理は事業者が任意で選択することが可能ですが、原則として、その事業者が行うすべての取引について同じ会計処理を行うこととされています。
例外的に、収益に係る取引について税抜経理を選択適用する場合には、(1)棚卸資産、(2)固定資産、繰延資産、(3)経費などのグループごと(売上・資産・経費)に異なる会計処理を行うことは可能ですが、個々の固定資産・経費ごとに税込経理と税抜経理を使い分けることはできません。
税込経理は税込価格だけを記帳すればよいため、仕分作業が簡単であるのがメリットといえます。
ただ、消費税額を含めて仕訳することになるため、利益が多く計上されることになり、実際の損益の把握や納付する消費税額などの予測がしづらいというデメリットもあります。
税込経理は処理が簡単なことから、人員や時間に余裕がなく、経理担当者の負担を減らしたい中小企業などが採用する傾向にあります。
また、消費税の納税義務が免除されている免税事業者は、そもそも消費税を区分する必要がないため、すべてにおいて税込経理で処理することになります。
一方、税抜経理は本体価格と消費税を分けて計上するため、経理処理がやや煩雑になるというデメリットはあるものの、実際の損益が把握しやすく、期末の消費税額や法人税額の予測が立てやすいというメリットがあります。
実際に使える金額を比較すると有利なのは?
処理の煩雑さでは税込経理、損益などのわかりやすさでは税抜経理に軍配が上がりますが、実際に使える金額を比較すると、税抜経理のほうが有利といえます。
たとえば、資本金が1億円以下の中小企業は、年間で800万円までの交際費を損金として計上することが認められています。
しかし、税込経理の場合は消費税額を含めた税込価格で判定され、税抜経理の場合は消費税額を除いた税抜価格で判定されるため、税抜経理よりも税込経理のほうが損金として計上できる交際費の額が減ることになります。
税抜経理であれば交際費を800万円まで使えますが、税込経理では税抜で730万円ほど交際費を使うことで、税込で800万円に到達してしまい、それ以上は損金への計上ができません。
税込経理と税抜経理で70万円ほどの判定基準の差がついてしまうため、毎年、700~800万円を超える多額の交際費が発生している法人であれば、税抜経理を選んでおいたほうが得策といえるでしょう。
また、減価償却資産などの場合でも税抜経理が有利です。
減価償却資産や繰延資産ついての会計処理も、税込経理は税込価格で判定され、税抜経理は税抜価格で判定されます。
現在、特例として中小企業には、取得価格が30万円以下の減価償却資産について、一定の要件のもとその購入金額を購入年度に損金として算入することが認められています(平成18年4月1日から令和6年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した減価償却資産が対象)。
たとえば、税抜価格が29万5,000円の減価償却資産を会計処理する場合、税抜経理の場合は購入年度にその金額のまま損金算入することが認められますが、税込経理の場合は税込価格で32万4,500円になるので、購入年度の損金算入が認められません。
近年では会計ソフトの普及に伴い、税込経理も税抜経理も処理の煩雑さに差はなくなっており、損益の把握や金額判定などの面から考えると、税抜経理のほうにメリットがあるといえます。
なお、税込経理から税抜経理に変更することは可能ですが、税込経理のときに購入した減価償却資産は、そのまま税込価格に基づく減価償却を行うことになるので注意が必要です。
今後、インボイス制度の導入にあたり、消費税の会計処理がさらに煩雑化する可能性もあります。
自社の経理を見直す際に、消費税の会計処理方法についても確認し、気になる点は専門家に相談すると安心でしょう。
※本記事の記載内容は、2023年4月現在の法令・情報等に基づいています。