現場では要注意! 熱中症の予防と対策について
屋外での作業が基本であり、長時間にわたり炎天下で作業することも多い建設業。
気温が上がる夏場は、熱中症や脱水症状などによって体調を崩さないように特に注意が必要です。
建設業で発生する労働災害では熱中症が多く、これまでに厚生労働省などでも、さまざまな対策が考えられてきました。
今回は、厚生労働省による熱中症予防キャンペーンをヒントに、熱中症による事故を防ぐための方法と対処法を説明します。
気温が上がる夏場は、熱中症や脱水症状などによって体調を崩さないように特に注意が必要です。
建設業で発生する労働災害では熱中症が多く、これまでに厚生労働省などでも、さまざまな対策が考えられてきました。
今回は、厚生労働省による熱中症予防キャンペーンをヒントに、熱中症による事故を防ぐための方法と対処法を説明します。
長らく熱中症の防止が課題
厚生労働省が行った調査『令和2年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況』によると、2020年の熱中症による死傷者数は959人で、うち死亡者数は22人となりました。
特に死傷者数が多いのが建設業と製造業で、過去5年間の死傷者数においては、2019年を除き、全ての業種のなかで建設業がトップでした。
そこで厚生労働省では、2017年より『STOP! 熱中症 クールワークキャンペーン』を実施し、災害防止団体と連携して熱中症予防に取り組んでいます。
このキャンペーンを通じ、すべての職場に対して『職場における熱中症予防基本対策要綱』に基づく熱中症予防対策を講ずるよう広く呼びかけるとともに、期間中、事業者が WBGT値(暑さ指数。人体の熱バランスに影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つを取り入れた指標)を把握して、それに応じた適切な対策を講じたり、初期症状の把握と緊急時の対応体制の整備を図ったりすることを徹底するとしています。
会社全体で取り組むべき熱中症対策
次に、2021年も準備期間を入れた4月から9月まで実施されている『STOP! 熱中症 クールワークキャンペーン』の重点実施事項のなかから、建設業における熱中症の予防と対策のヒントを抜粋して紹介します。
【令和3年『STOP! 熱中症 クールワークキャンペーン』各事業所における重点事項】
(1)準備期間中
●WBGT値(暑さ指数)の把握
現場のどこが、どれくらい暑いのかを把握する。
直射日光下などで参考値と乖離しそうな場合は、実測してデータをとる。
●暑熱環境下における作業に対する作業計画の策定
暑さに伴うリスクを勘案した作業計画を策定すること。
●緊急事態の措置
事業場において、労働者の体調不良時に搬送を行う病院の把握や緊急時の対応について確認を行い、労働者に対して周知すること。
(2)キャンペーン期間中
●WBGT値(暑さ指数)の把握と評価
WBGT値の把握は、日本産業規格に適合したWBGT指数計による随時把握を基本とすること。
実測したWBGT値は、日本工業規格が定める『身体作業強度等に応じたWBGT基準値』に照らして評価し、熱中症リスクを正しく見積もること。
WBGT基準値を超える、または超えるおそれのある場合には、WBGT値の低減のための対策を徹底する。
●作業環境管理
WBGT基準値を超えるおそれのある場所で作業を行うことが予定されている場合には、簡易な屋根の設置、通風または冷房設備の設置、ミストシャワー等による散水設備の設置を検討し、検討したWBGT値の低減対策を行う。
屋内作業においては、冷房時の換気に注意する。
●作業管理
作業場所の近くに冷房を備えた休憩場所または日陰等の涼しい休憩場所の確保を検討する。
休憩場所は横になることのできる広さのものとし、氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やすことのできる物品および設備を設ける。
また、水分および塩分の補給を定期的かつ容易に行うことができるよう飲料水、スポーツドリンク、塩飴の備付け等を行う。
●健康管理
熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する者に対しては、医師等の意見を踏まえ配慮を行う。
当日の作業開始前には、労働者に対し、当日の朝食の未摂取、睡眠不足、前日の多量の飲酒、体調不良等の健康状態の確認を行い、必要に応じ作業の配置換え等を行う。
作業開始前に労働者の健康状態を確認する。
(3)重点取組期間中
●作業環境管理、作業管理、異常時の措置
WBGT値の低減効果を再確認し、必要に応じ追加対策を行う。
水分および塩分の積極的な摂取や熱中症予防管理者等によるその確認の徹底を図る。
異常を認めたときは、躊躇することなく救急隊を要請する。
1年のうち、熱中症を特に発症しやすいのが7、8月です。
現場監督や職人であれば熱中症対策は毎年のこととはいえ、それでもできるだけ早いうちから熱中症対策をしておきたいものです。
従業員に熱中症の症状が現れたら
熱中症は、最初の症状は軽度であっても、放っておくと重症化しやすいため注意が必要です。
軽度から重度に至るまでの主な症状は、次のとおりです。
軽度:めまい、こむら返り、身体がだるい
中度:全く汗をかかない、または大量に汗をかく、皮膚の表面が乾燥して赤くなっている、皮膚が高温になっている
重度:呼びかけても反応がない、異常な返答が返ってくる、水を飲むことができない
軽度の症状のときは「なんとなくいつもより疲れやすい」と感じるくらいで、そのまま対策を取らずに過ごしてしまいがちです。
特に肉体労働が多い建設業の人は、不調を単なる疲れとして流してしまいやすいといえます。
しかし、軽度の状況を放置すると、あっという間に症状が進行してしまいます。
不調を「気のせいかも」と思って見過ごさず、わずかな異常も意識することが重要です。
また、中度の症状が出ているときは「しばらく休んで様子を見よう」という判断をしがちですが、これも対応としてはリスクがあります。
具合の悪そうな従業員を休ませて様子を見ていたが、容態が急変したとして病院に運んだという事例も非常に多く起きています。
明らかに症状が出ている場合は、すぐに病院にかかるよう促しましょう。
熱中症の予防は、水分・塩分・ミネラルを意識的に摂るように声掛けをする、休憩時間をこまめに設定し、冷房の効いた休憩所やミストシャワーを設けるなど、先回りした対策が肝心です。
そして、少しでも体調が悪そうな従業員を見かけたら、無理をさせずに涼しい場所で休ませたり、悪化しないよう早めに対処することが大切です。
従業員の命を最優先に、夏の現場を乗り切りましょう。
※本記事の記載内容は、2021年6月現在の法令・情報等に基づいています。
厚生労働省が行った調査『令和2年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況』によると、2020年の熱中症による死傷者数は959人で、うち死亡者数は22人となりました。
特に死傷者数が多いのが建設業と製造業で、過去5年間の死傷者数においては、2019年を除き、全ての業種のなかで建設業がトップでした。
そこで厚生労働省では、2017年より『STOP! 熱中症 クールワークキャンペーン』を実施し、災害防止団体と連携して熱中症予防に取り組んでいます。
このキャンペーンを通じ、すべての職場に対して『職場における熱中症予防基本対策要綱』に基づく熱中症予防対策を講ずるよう広く呼びかけるとともに、期間中、事業者が WBGT値(暑さ指数。人体の熱バランスに影響の大きい湿度、輻射熱、気温の3つを取り入れた指標)を把握して、それに応じた適切な対策を講じたり、初期症状の把握と緊急時の対応体制の整備を図ったりすることを徹底するとしています。
会社全体で取り組むべき熱中症対策
次に、2021年も準備期間を入れた4月から9月まで実施されている『STOP! 熱中症 クールワークキャンペーン』の重点実施事項のなかから、建設業における熱中症の予防と対策のヒントを抜粋して紹介します。
【令和3年『STOP! 熱中症 クールワークキャンペーン』各事業所における重点事項】
(1)準備期間中
●WBGT値(暑さ指数)の把握
現場のどこが、どれくらい暑いのかを把握する。
直射日光下などで参考値と乖離しそうな場合は、実測してデータをとる。
●暑熱環境下における作業に対する作業計画の策定
暑さに伴うリスクを勘案した作業計画を策定すること。
●緊急事態の措置
事業場において、労働者の体調不良時に搬送を行う病院の把握や緊急時の対応について確認を行い、労働者に対して周知すること。
(2)キャンペーン期間中
●WBGT値(暑さ指数)の把握と評価
WBGT値の把握は、日本産業規格に適合したWBGT指数計による随時把握を基本とすること。
実測したWBGT値は、日本工業規格が定める『身体作業強度等に応じたWBGT基準値』に照らして評価し、熱中症リスクを正しく見積もること。
WBGT基準値を超える、または超えるおそれのある場合には、WBGT値の低減のための対策を徹底する。
●作業環境管理
WBGT基準値を超えるおそれのある場所で作業を行うことが予定されている場合には、簡易な屋根の設置、通風または冷房設備の設置、ミストシャワー等による散水設備の設置を検討し、検討したWBGT値の低減対策を行う。
屋内作業においては、冷房時の換気に注意する。
●作業管理
作業場所の近くに冷房を備えた休憩場所または日陰等の涼しい休憩場所の確保を検討する。
休憩場所は横になることのできる広さのものとし、氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やすことのできる物品および設備を設ける。
また、水分および塩分の補給を定期的かつ容易に行うことができるよう飲料水、スポーツドリンク、塩飴の備付け等を行う。
●健康管理
熱中症の発症に影響を及ぼすおそれのある疾病を有する者に対しては、医師等の意見を踏まえ配慮を行う。
当日の作業開始前には、労働者に対し、当日の朝食の未摂取、睡眠不足、前日の多量の飲酒、体調不良等の健康状態の確認を行い、必要に応じ作業の配置換え等を行う。
作業開始前に労働者の健康状態を確認する。
(3)重点取組期間中
●作業環境管理、作業管理、異常時の措置
WBGT値の低減効果を再確認し、必要に応じ追加対策を行う。
水分および塩分の積極的な摂取や熱中症予防管理者等によるその確認の徹底を図る。
異常を認めたときは、躊躇することなく救急隊を要請する。
1年のうち、熱中症を特に発症しやすいのが7、8月です。
現場監督や職人であれば熱中症対策は毎年のこととはいえ、それでもできるだけ早いうちから熱中症対策をしておきたいものです。
従業員に熱中症の症状が現れたら
熱中症は、最初の症状は軽度であっても、放っておくと重症化しやすいため注意が必要です。
軽度から重度に至るまでの主な症状は、次のとおりです。
軽度:めまい、こむら返り、身体がだるい
中度:全く汗をかかない、または大量に汗をかく、皮膚の表面が乾燥して赤くなっている、皮膚が高温になっている
重度:呼びかけても反応がない、異常な返答が返ってくる、水を飲むことができない
軽度の症状のときは「なんとなくいつもより疲れやすい」と感じるくらいで、そのまま対策を取らずに過ごしてしまいがちです。
特に肉体労働が多い建設業の人は、不調を単なる疲れとして流してしまいやすいといえます。
しかし、軽度の状況を放置すると、あっという間に症状が進行してしまいます。
不調を「気のせいかも」と思って見過ごさず、わずかな異常も意識することが重要です。
また、中度の症状が出ているときは「しばらく休んで様子を見よう」という判断をしがちですが、これも対応としてはリスクがあります。
具合の悪そうな従業員を休ませて様子を見ていたが、容態が急変したとして病院に運んだという事例も非常に多く起きています。
明らかに症状が出ている場合は、すぐに病院にかかるよう促しましょう。
熱中症の予防は、水分・塩分・ミネラルを意識的に摂るように声掛けをする、休憩時間をこまめに設定し、冷房の効いた休憩所やミストシャワーを設けるなど、先回りした対策が肝心です。
そして、少しでも体調が悪そうな従業員を見かけたら、無理をさせずに涼しい場所で休ませたり、悪化しないよう早めに対処することが大切です。
従業員の命を最優先に、夏の現場を乗り切りましょう。
※本記事の記載内容は、2021年6月現在の法令・情報等に基づいています。