藤垣会計事務所

メンタルヘルス対策の救世主『職場復帰支援プログラム』

20.07.28
ビジネス【人的資源】
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厚生労働省の調べによると、職場の人間関係や労働環境が原因で強い不安やストレスを抱えている労働者は、労働者全体の6割以上にもなるといわれています。
さらに、心の健康問題が原因で休職する人も多く、企業にとってそのような休職者をいかにスムーズに職場復帰させるかが、大きな課題となっています。
厚生労働省では、心の健康問題によって休職した従業員の円滑な職場復帰のために、各企業へ向けて、『職場復帰支援プログラム』の策定を促しています。
今回は、休業開始から業務への復帰までの流れや、従業員への支援の手順など、具体的な策定方法について紹介します。
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まずは休職者が安心して療養できるケア体制を

“ストレス社会”ともいわれる現代において、労働者のストレス緩和は急務といえるでしょう。
メンタル面の不調を理由とした休職者は年々増え続けており、近年では心の健康問題による1カ月以上の休職者、または退職者がいる事業所は全体の7.6%にもなっています。

人材不足が深刻化している昨今、休職者の職場復帰は、労働力の維持や確保の観点から見ても重要な課題であり、企業全体として取り組むべき案件となっています。
そこで、休職者が職場復帰できるよう規定を整備したり、休業から復帰までの流れを明確にしたりするのが、『職場復帰支援プログラム』です。

職場復帰支援プログラムを策定しておけば、従業員が心の健康問題で休職したとしても、心の健康を取り戻し、安心して職場復帰するための助けとなります。
企業の業務形態などによって内容を細かく変えていく必要がありますが、ここでは厚生労働省が定めた一般的な職場復帰までのステップを見ていきましょう。

まず『第一ステップ』は、『病気休業開始及び休業中のケア』の策定です。
通常、従業員が休職する場合は、従業員側から『診断書(病気休業診断書)』が会社側に提出されます。
このときに会社側の取るべき対応が決められていないと、これから休職する従業員を不安にさせてしまうのです。
本人の同意を得たうえで主治医に職場の状況や勤務状況などの情報提供を行ったり、休職者の悩みを相談できる窓口を設けたり、主治医と相談しながら休業中にも従業員と連絡を取れる手段を備えるといった、従業員が安心して療養に専念できるようなケア体制を構築しておきましょう。

ほかにも、休職期間中の雇用形態の扱いを就業規則で定めたり、休職者への休職制度の説明をどのように行うかを決めたりといったことも必要になってきます。
従業員は心の健康問題で休職するのですから、余計な不安を与え、病気を長期化させてはいけません。
休職者が速やかに復帰できる支援を用意しておくのが大切です。


職場復帰後は、フォローアップで再発防止

続いての『第2ステップ』は、休職者がいつごろ職場復帰できるのかを確認するための、『主治医による職場復帰可能の判断』です。

診断書には、前もって療養の見込み期間を記入してもらい、だいたいの職場復帰時期の見当をつけます。
時期が近づいてきたら、従業員の職場復帰に向けた意志確認や、産業医などによる精査を経て、主治医に判断を仰ぎます。
主治医は必ずしも従業員すべての業務を把握しているわけではありません。
復帰後に仕事を遂行できるかどうかなどを判断してもらうためにも、従業員の勤務形態や受け持っていた業務内容など、会社からの情報提供は必須です。

そして、主治医による判断を仰いだ後に、『第3ステップ』の『職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成』を行います。

ここでは本人の意志や、主治医や産業医の評価をもとに、職場復帰が可能かどうかを、事業所内の産業保健スタッフらが中心となって判断します。
そのなかで『職場復帰が可能』という判断が出てはじめて、『職場復帰支援プラン』の作成となります。
『職場復帰支援プラン』の作成にあたっては、産業保健スタッフを中心に、管理者や休職者本人も交えて、具体的な職場復帰日や、業務のサポート内容や治療上の留意事項、さらには配置転換の必要性や勤務形態変更の可否なども検討します。
本人の希望や産業医などの意見を踏まえつつ、無理なく計画的に実施できるプランを考えていきましょう。

『第4ステップ』の『最終的な職場復帰の決定』では、再度本人の状態を確認し、問題なければ、事業主が最終的な職場復帰の判断を下します。
こうして、休職者は晴れて職場復帰ができるわけです。
もちろん、その後のフォローはとても大切です。
主治医と連携して治療状況を確認したり、職場環境を改善させたり、休職者の管理者へ配慮を求めたりと、再発を防止するための様々な施策を打っていくことが必要です。
『ステップ5』の『職場復帰後のフォローアップ』まできちんと行いましょう。

心の健康問題を抱えた従業員に対しては、焦らずに、このような複数の段階を踏んで職場復帰させることが重要です。
主治医や産業医の判断を仰がずに休職者本人の希望だけで職場復帰をさせてしまうと、再発どころか体調が悪化したり、思わぬ事故にもつながりかねません。
社内で適切な施策をとっておき、どの従業員が休職しても安心して戻ってこられる職場にすることが大切なのです。
『職場復帰支援プログラム』の作成は、産業保健総合支援センターに依頼すれば、メンタルヘルス対策促進員が事業所を訪問し、厚生労働省の補助事業として無料で相談に乗ってくれます。

従業員の労働環境の整備という意味でも、『職場復帰支援プログラム』を策定していない企業は、一度相談してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2020年7月現在の法令・情報等に基づいています。