忘れないよう注意が必要! 遺言書の検認手続、遺留分
遺言書を保管していた人や、被相続人が亡くなった後に遺言書を発見した人は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に検認の申し立てを行う必要があります。
そして、財産の相続には、一部の法定相続人に認められた最低限遺産を取得できる遺留分があります。
今回は、相続が開始したらすぐに手続をしたほうがよい『遺言書の検認手続』と『遺言の遺留分』について紹介します。
そして、財産の相続には、一部の法定相続人に認められた最低限遺産を取得できる遺留分があります。
今回は、相続が開始したらすぐに手続をしたほうがよい『遺言書の検認手続』と『遺言の遺留分』について紹介します。
遺言書は開封する前に検認手続が必要
被相続人が亡くなった瞬間から、相続は自動的に開始となります。
相続が開始した後、相続人らは、すぐに遺言書を開封してはならず、家庭裁判所に遺言書を提出して検認の手続を受けなければなりません。
検認とは、相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言の形状やその内容を明確にして遺言書の偽造や変造を防止するための手続です。
それゆえ、実質的に遺言の内容、効力等を判断するものではありません。
遺言書検認の申し立ては、自筆の遺言書を保管していた者または遺言書を発見した相続人が、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
その際に必要な書類は、遺言者の出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本です。
検認申し立てにかかわる費用としては、遺言書1通につき収入印紙代金800円と、そのほかには家庭裁判所との連絡用郵便切手も必要となります。
遺言書検認の申し立てをすると、裁判所から相続人全員に対して検認期日(申し立てから大体1カ月後くらい)の通知がされます。
当日は、相続人全員が出席しなくても検認手続は実施されますが、申立人は、必ず遺言書を持参して出席しなければなりません。
当日、出席者の立会いのもと、申立人から提出された遺言書が開封され、その形状等、全文、日付、筆跡、署名、押印、加除訂正の形式・内容等が確認されます。
遺言書検認手続が終了すると、申立人らの申請(150円分の収入印紙が必要)により検認済証明書が発行されます。
遺言の執行をするためには、遺言書に検認済証明書が付されていることが必要です。
なお、2020年7月10日から施行される『法務局における自筆証書遺言書保管制度』を利用すると、遺言書の検認手続は不要となります。
遺言がすべてではない! 遺産相続の遺留分に注意
個人で事業を営む経営者などは、事業の承継のため、共に事業を営む長男に必要な資産すべてを承継、すなわち相続させたいと考え、その旨の遺言書を作成することがあります。
しかし、他に相続人がいる場合、たとえ財産すべてを長男に相続させるとの遺言をしても、相続人の権利である遺留分を排除することはできません。
遺留分とは、相続人の生活保障のために、一定の相続人である配偶者、子(直系卑属)、父母・祖父母(直系尊属)に法律上必ず保留しなければならない遺産の一定部分で、原則、法定相続分の2分の1となります。
たとえば、不動産、動産、預貯金等の遺産の総額が8,000万円ある被相続人が、相続人である長女に預金1,000万円を譲り、残りはすべて長男に相続させるという遺言をしたとします。
この場合、法定相続分は各2分の1なので、遺留分はその2分の1である4分の1(2,000万円分)となります。
したがって、長女について遺留分の1,000万円分が侵害されており、遺留分侵害額請求権を行使すれば、長男に対し、遺留分侵害額に相当する1,000万円の支払いを請求することができます。
以上のように遺言は、事業を承継する相続人の一人に資産のほとんどを相続させるような内容の遺言をしようとする場合、他の相続人の遺留分を侵害しないように注意する必要があります。
ところで、事業を承継することになる長男は、相続が発生していきなり長女から1,000万円の支払いを請求されても、ただちに支払いに応じられないというのが実情でしょう。
2019年から段階的に変更・新設されている新相続法では、このような場合、長男が請求すれば、裁判所により長男の負担額1,000万円の全部または一部の支払いについて、相当の期限を許与してもらうことができます。
これにより長男は、事業を継続しながら長女への支払いについて猶予を得て、その間にその資金繰りをすることができるようになります。
相続が開始したら、まず、遺言書の検認手続や遺留分の確認を行うことが重要です。
※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。
被相続人が亡くなった瞬間から、相続は自動的に開始となります。
相続が開始した後、相続人らは、すぐに遺言書を開封してはならず、家庭裁判所に遺言書を提出して検認の手続を受けなければなりません。
検認とは、相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言の形状やその内容を明確にして遺言書の偽造や変造を防止するための手続です。
それゆえ、実質的に遺言の内容、効力等を判断するものではありません。
遺言書検認の申し立ては、自筆の遺言書を保管していた者または遺言書を発見した相続人が、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
その際に必要な書類は、遺言者の出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本です。
検認申し立てにかかわる費用としては、遺言書1通につき収入印紙代金800円と、そのほかには家庭裁判所との連絡用郵便切手も必要となります。
遺言書検認の申し立てをすると、裁判所から相続人全員に対して検認期日(申し立てから大体1カ月後くらい)の通知がされます。
当日は、相続人全員が出席しなくても検認手続は実施されますが、申立人は、必ず遺言書を持参して出席しなければなりません。
当日、出席者の立会いのもと、申立人から提出された遺言書が開封され、その形状等、全文、日付、筆跡、署名、押印、加除訂正の形式・内容等が確認されます。
遺言書検認手続が終了すると、申立人らの申請(150円分の収入印紙が必要)により検認済証明書が発行されます。
遺言の執行をするためには、遺言書に検認済証明書が付されていることが必要です。
なお、2020年7月10日から施行される『法務局における自筆証書遺言書保管制度』を利用すると、遺言書の検認手続は不要となります。
遺言がすべてではない! 遺産相続の遺留分に注意
個人で事業を営む経営者などは、事業の承継のため、共に事業を営む長男に必要な資産すべてを承継、すなわち相続させたいと考え、その旨の遺言書を作成することがあります。
しかし、他に相続人がいる場合、たとえ財産すべてを長男に相続させるとの遺言をしても、相続人の権利である遺留分を排除することはできません。
遺留分とは、相続人の生活保障のために、一定の相続人である配偶者、子(直系卑属)、父母・祖父母(直系尊属)に法律上必ず保留しなければならない遺産の一定部分で、原則、法定相続分の2分の1となります。
たとえば、不動産、動産、預貯金等の遺産の総額が8,000万円ある被相続人が、相続人である長女に預金1,000万円を譲り、残りはすべて長男に相続させるという遺言をしたとします。
この場合、法定相続分は各2分の1なので、遺留分はその2分の1である4分の1(2,000万円分)となります。
したがって、長女について遺留分の1,000万円分が侵害されており、遺留分侵害額請求権を行使すれば、長男に対し、遺留分侵害額に相当する1,000万円の支払いを請求することができます。
以上のように遺言は、事業を承継する相続人の一人に資産のほとんどを相続させるような内容の遺言をしようとする場合、他の相続人の遺留分を侵害しないように注意する必要があります。
ところで、事業を承継することになる長男は、相続が発生していきなり長女から1,000万円の支払いを請求されても、ただちに支払いに応じられないというのが実情でしょう。
2019年から段階的に変更・新設されている新相続法では、このような場合、長男が請求すれば、裁判所により長男の負担額1,000万円の全部または一部の支払いについて、相当の期限を許与してもらうことができます。
これにより長男は、事業を継続しながら長女への支払いについて猶予を得て、その間にその資金繰りをすることができるようになります。
相続が開始したら、まず、遺言書の検認手続や遺留分の確認を行うことが重要です。
※本記事の記載内容は、2020年6月現在の法令・情報等に基づいています。