藤垣会計事務所

建設業界の人手不足、多様な働き方の導入で解消なるか

19.04.23
業種別【建設業】
dummy
近年では、男女問わず、ライフスタイルに合わせた働き方が求められるようになっています。
そんななか、建設業界でもさまざまな働き方を支援する動きがあります。 
今回は、現在活発に行われている、建設業界におけるさまざまな働き方の導入例と、その効果についてご紹介していきます。
dummy
男性の育児休暇取得が新しい常識になる時代 

建設業界は現在、深刻な人材不足に陥っています。
建設業の多くの企業で従業員が不足しており、高齢の就業者も全産業に比べて高い傾向にあります。 

日本建設業連合会が2018年9月に発表した『職員の労働時間に関する実態調査』の結果によれば、建設業の一般従業員の年間総労働時間について、『2,400時間を超えている』という回答が全体の38%に達しました。
同様の回答が全産業と製造業では平均4%であったことと比べて圧倒的な差があり、建設業の労働時間は他業種よりかなり多いことがわかります。 

しかし、現状は訪日外国人の増加で宿泊施設の建設ラッシュが相次いでおり、また、2025年に開催決定となった大阪万博などの影響も考えると、さらなる建設需要が見込まれます。 
そのため、人材の確保と、離職率の低下の実現が急務となっています。 

そんななか、“男性の育児休暇”の促進を行っている企業があります。 

現在、日本オーチス・エレベータは、“男性の育児休暇”を推進。
大成建設は、“男性の育児休業の有給化および在宅勤務”を検討しているとのことです。 

国も、企業の育児休暇取得を奨励するために、『両立支援等助成金(出生時両立支援コース)』を創設。
男性の育児休暇取得を促進し、女性の活躍を推進する企業に対して、助成金が支払われるようになりました。 

業種別にみてみると、2017年度で、男性の育児休暇率が最も高かったのは『金融業、保険業』の15.76%で、『建設業』はわずか3.96%でした。 

今後、建設に関わる企業は、男性の育児休暇の促進が大きな課題の一つとなっていきそうです。 


フレックスタイム制が人材の定着化を実現? 

近年は、建設業におけるフレックスタイム制の導入事例も増加傾向にあります。 

フレックスタイム制とは、社員自身が始業・終業時刻を決定して働くことのできる制度です。
勤務時間が個人の裁量に任せられるため、効率的に時間を配分することができ、残業を軽減できるというメリットがあります。
また、働き方の自由度が高く、人材の定着の向上につながるという側面もあるでしょう。 

建設大手の奥村組では、2018年4月から内勤の全部署にフレックスタイム制度を導入。
2021年までに全社で導入することを掲げています。
三菱地所設計では、妊娠・育児・介護者を対象としたフレックス・短時間フレックス制度を、石本建築事務所では、裁量勤務制やフレックス勤務制を採り入れています。 

これらの取り組みによって、これまで長時間労働などで建設業界をあきらめていた人材の新規就業を促し、すでに就業している人材の流出を防ぐことが期待されており、貴重な人材の確保が可能になるといえます。 


タイムマネジメントで従業員の業務時間を管理 

政府は、2017年3月28日に『働き方改革実行計画』を会議決定しました。
5年後の施行に向けて、建設業界については“発注者の理解と協力も得ながら、労働時間の段階的な短縮に向けた取組を強力に推進する”としています。 

さらに、“適正な工期設定や適切な賃金水準の確保、週休2日の推進などの休日確保”と、顧客からの要求に応えようと長時間労働になりがちな業界の体質の見直しを進める方針です。 

このような動きに合わせて、残業を管理するマネジメント層の指導を徹底する以下のような企業も出てきています。 

東急建設は『新任役職者に対するタイムマネジメント研修』の実施にふみきっています。
時間外労働にも基準を設け、基準を超過した者の上司には注意喚起メールを送信するなどの取り組みを始めました。 
また、前田道路は、“上長の許可無く就業時間を超えるとパソコンの電源が強制的にシャットダウンする”という対策を実施しています。 

これらは、フレックスタイム制とは逆に、会社側で、従業員の時間外労働をマネジメントするというやり方です。 
会社によるタイムマネジメントを導入することによって、重要度の高いタスクを優先的に処理したり、チーム全体が集中して効率的に業務を行えたりするメリットがあります。 
このような施策を展開する企業は今後ますます増えていくでしょう。 

男性の育児休暇なのか、フレックスタイム制なのか、タイムマネジメントなのか、自社にどのような制度を導入すれば、働き方の向上になり、離職率の低下につながるのか、考えてみる必要がありそうです。 


※本記事の記載内容は、2019年4月現在の法令・情報等に基づいています。