不動産登記法で定められた『却下』の理由やその他の手続
不動産の名義変更や抵当権の設定などを行う際には、法務局へ登記申請を行います。
提出された申請書や添付書類は、法務局の登記官によって審査され、内容に問題がなければ登記が完了します。
しかし、提出した申請の内容が一定の基準を満たしていない場合、不動産登記法第25条の規定に基づき、申請が却下されてしまうことがあります。
今回は、登記申請が却下される際の主な理由を詳しく説明すると共に、書類に不備があった場合の修正方法や、却下される前にみずから申請を撤回する「取下げ」の手続などを解説します。
登記申請が却下される際の主な理由
登記の申請が却下される理由は、不動産登記法第25条において第1号から第13号まで明確に定められていますが、そのなかでもよくある理由が管轄違いによるものです。
不動産の登記は、対象となる不動産の所在地によって管轄する法務局があらかじめ決められています。
そのため、異なる管轄の法務局へ誤って申請書を提出してしまうと、却下の対象となります。
また、本来登記簿に載せることを予定しない事項については、そもそも登記できないため注意が必要です。
ほかにも、申請書の記載事項の漏れや必要書類の不足があり、法務局からその不備を指摘されても修正しないままでいる場合も却下されます。
具体的には、相続登記において一部の相続人の戸籍謄本が欠けている事例や、売買による所有権移転登記において、申請書に記載された不動産が法務局の現在の登記記録と一致していない事例などがあります。
「却下」前の軽微な修正なら「補正」で対応
ただし、申請書類になんらかの不備があったとしても、軽微な記載ミスや一部の書類の不足であれば、「補正」という手続によって、修正や追加が行えます。
審査の過程で不備が見つかると、一般的には法務局から申請者に対して電話などで連絡が入ります。
連絡を受けた後は、法務局からの指示に従って手続を進めます。
たとえば、申請書の記載内容を訂正したり、不足している住民票などの書類を追加で郵送または持参したりするなど、申請内容の不備・不足を修正・補充する行為が該当します。
一方、オンライン申請の場合は、システムを通じて補正のお知らせが届き、申請情報の不備については、オンライン上で補正できる場合があります。
ただし、申請情報をオンラインで送信し、添付書面を別途提出する「特例方式」の場合、書面で提出した添付書類の補正をオンライン上で完結させることはできないため、注意しましょう。
補正が完了すれば審査が継続され、その後の審査で問題がなければ登記が完了します。
注意したいのは、補正には法務局から一定の期限が指定されるということです。
指定された期限までに補正しないと、不備が解消されないものとみなされ、そのまま却下されてしまいます。
「補正」できない場合は「取下げ」も要検討
法務局から不備の連絡を受けたものの、指定された期限内に遠方から必要な書類を取り寄せるのが間に合わない場合や、補正では対応できないような根本的な誤りがあることが判明した場合は、「補正」ではなく「取下げ」を検討しましょう。
取下げとは、申請者自身が「今回の登記申請を中止する」ことを法務局に申し出る手続です。
登記が完了する前であれば、取下げを行うことができます。
書面で窓口や郵送にて登記申請を行なっていた場合は、専用の「取下書」という書類を作成し、最初の申請書に押印したのと同じ印鑑を押して法務局に提出します。
オンライン申請を行なっていた場合は、システム上から取下げの処理を行います。
また、複数の不動産を一括で申請していたものの、そのうちの一つの不動産にだけ不備が見つかった際、申請内容によっては、全体ではなく不備のある部分だけを対象とする「一部取下げ」が可能な場合もあります。
取下げを行なった場合、所定の手続により提出済みの戸籍謄本や契約書などの添付書類の返却を受けることができます。
また、納付していた登録免許税については、還付を受けるための手続を行うことも可能です。
登録免許税を収入印紙または領収証書により納付していた場合、取下げ後に書類を整えて再申請する予定があれば、「再使用証明」を受ける方法があります。
再使用証明を受ければ、一定の条件のもと、取下げ後1年以内に同じ登記所へ再申請する際、納付済みの登録免許税を再使用できるため、あらためて収入印紙を買い直す手間や資金の負担を省けます。
なお、オンライン申請では、インターネットバンキングやATMを利用して登録免許税を電子納付する方法もあります。
取下げ後の取り扱いは納付方法によって異なるため、具体的な手続は法務局に確認しましょう。
登記申請に不備があり、法務局からの連絡を受けたにもかかわらず、補正も取下げも行わないと、最終的にその申請は却下されてしまいます。
却下されると、あらためて申請し直す必要が生じるだけでなく、登記の完了時期がずれ込み、不動産の取引や関連するスケジュールに大きな遅れが生じる可能性もあります。
もし、申請内容に不備が見つかり、補正すべきか取下げすべきか迷った場合は、登記の専門家である司法書士に相談することをおすすめします。
※本記事の記載内容は、2026年11月現在の法令・情報等に基づいています。