『不機嫌ハラスメント(フキハラ)』のない組織にするアプローチ
「パワハラ」や「モラハラ」といったハラスメントの一種として、「不機嫌ハラスメント」、略して「フキハラ」が問題視されています。
フキハラとは、ため息や舌打ち、無視など、不機嫌な態度で周囲にプレッシャーを与え、精神的な苦痛を与える行為を指します。
フキハラは誰にでも起こり得る日常的な感情の起伏から生じるため、見過ごされがちですが、放置すれば組織全体の生産性低下や、人材流出を招くことにもなりかねません。
人事担当者などに向けて、フキハラの具体的な行動や問題視される背景、企業が負うリスクなどを解説します。
不機嫌な態度が職場に与える悪影響
「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」は、不機嫌な態度や言動によって周囲に無言の圧力をかけ、精神的な苦痛を与える行為のことです。
言葉による直接的な暴言がなくても、職場の空気を悪化させ、周囲の業務に支障をきたすのが特徴です。
具体的には、「あからさまなため息を何度もつく」「パソコンのキーボードを強く叩いて音を立てる」「書類やファイルなどを机に乱暴に置く」「特定の人物にだけ冷たく接する」「挨拶を無視する」「話しかけられても目を合わせず、素っ気ない返事しかしない」といった行動がフキハラとされることがあります。
これらは日常のささいな行動の延長にあるため、加害者側に「ハラスメントをしている」という自覚が乏しいことが多く、そのことが解決をむずかしくしています。
ハラスメントとして広く認知されているパワハラ(パワーハラスメント)は、職場における優越的な関係を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える行為です。
上司から部下への行為に限らず、同僚間などでも起こり得ます。
一方、フキハラは役職や立場の上下に関係なく発生する点に大きな特徴があります。
「個人の気分の波」をコントロールせず、そのまま周囲に押し付けることで不快感を与える行為であり、部下から上司、あるいは同僚間でも成立します。
フキハラの相談が寄せられる背景
近年、企業の人事部門や外部のコンプライアンス相談窓口に、フキハラに関する相談が寄せられるようになっています。
背景には、社会全体でハラスメントに対する意識が高まっていることが考えられます。
かつては「職場の人間関係の悩みだから」「あの人は気分屋だし、仕方ない」と個人的な問題として片付けられていた事象が、働く環境を害する不適切な行為として認識されるようになりました。
被害を受けた側も、不当な扱いに対して声を上げやすい環境が整いつつあるといえます。
また、働き方の多様化やコミュニケーション手段の変化も影響しています。
テレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッド型の働き方が定着したことで、対面でのコミュニケーション機会が相対的に減少しました。
その結果、限られた対面でのやり取りにおいて、相手のちょっとした不機嫌な態度や素っ気ない反応がより強く印象に残り、ストレスに感じやすくなっている可能性もあります。
チャットツールなどテキストベースのやり取りにおいても、意図的な返信の遅延や、あえて冷たい文面を送るといった「オンラインでのフキハラ」も問題視されるようになりました。
企業がフキハラを放置する危険性と対策
フキハラを放置したままだと、職場の雰囲気が著しく悪化し、生産性が低下する可能性があります。
不機嫌な態度をとる人物が一人いるだけで、周囲のメンバーは常に顔色をうかがいながら仕事をしなければなりません。
報告や連絡、相談といった業務上不可欠なコミュニケーションが滞り、情報共有の遅れやミスの隠蔽につながります。
チーム全体の連携が崩れれば、当然のことながら業務効率は落ち、企業としてのパフォーマンスも低下してしまいます。
また、社員の離職を引き起こす要因にもなります。
優秀な人材や周囲への配慮ができる人材が、職場の空気に耐えきれず、早期に離職する可能性もあります。
人材不足が深刻化するなかでの予期せぬ離職は大きな損失ですが、さらにフキハラの放置は法的なリスクを抱えることにもなります。
フキハラによる精神的苦痛が深刻な場合、状況によっては「故意または過失により他人の権利または法律上保護される利益を侵害する行為」とみなされ、民法上の不法行為に該当する可能性があります。
フキハラが原因で従業員が適応障害やうつ病などのメンタルヘルス不調に陥った場合、企業は労働契約法に基づく安全配慮義務違反に問われる可能性があります。
職場環境を適切に保つ義務を怠ったとして、企業自身が損害賠償請求の対象となる可能性もあります。
フキハラを防ぐには、企業としての明確な方針と、実効性のある対応策を講じることが重要です。
経営層や管理職はもちろん、全従業員を対象とした研修を実施し、「自分の不機嫌な態度が周囲にどれほどの悪影響を与えるか」を客観的に認識してもらいましょう。
誰もが安心して相談できる窓口の整備や、相談後の迅速な対応を可能にする体制の構築なども大切です。
フキハラへの対策は、さまざまなハラスメントを防ぎ、風通しのよい職場をつくる第一歩です。
自社の体制を今一度見直し、健全で生産性の高い組織づくりに取り組みましょう。
※本記事の記載内容は、2026年10月現在の法令・情報等に基づいています。