藤垣会計事務所

処理は適正?『労働時間』の端数の切り捨てに要注意

26.09.08
ビジネス【労働法】
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労務管理において、従業員の労働時間の端数の切り捨てが、問題視されることがあります。
タイムカードの記録を5分や15分単位で区切り、端数を切り捨てているケースがありますが、日ごとに労働時間を一律に切り捨てる処理は、労働基準法に違反する可能性があります。
原則として労働時間は1分単位で計算し、正しく賃金を支払わなければいけません。
「わずかな時間だから」「事務作業をスムーズにするため」といった理由から行われがちな端数の切り捨て処理の違法性と、正しいルールを理解しておきましょう。

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賃金は原則として1分単位で集計して計算

労働時間を分単位で切り捨てる処理は、労務管理において頻繁に発生している問題の一つです。
現在も労働基準監督署には、労働者から多くの相談が寄せられています。
たとえば、残業時間が15分単位で切り捨てられてしまう、あるいは、会社から30分単位で残業時間を報告するように指示されるといったケースです。
毎日の始業前に着替えや準備の作業があるにもかかわらず、その時間が労働時間として計算されていないという不満や、あらかじめ決められた休憩時間に業務を行なったにもかかわらず、その時間分の賃金が支払われていないといった声もありました。

また、最近の事例としては、2026年4月に大手飲食チェーンが、男子大学生を含む一部のアルバイト従業員の労働時間を切り捨てて賃金を計算していた問題で、労働基準監督署から是正勧告を受けたことが明らかになりました。

端数の切り捨ては、本来支払われるべき賃金が支払われていない状態であることを意味します。
賃金の未払いは、従業員との信頼関係を損なうだけでなく、企業の社会的信用を大きく低下させる原因にもなるため、もし端数の切り捨て処理を行なっているのであれば、自社の労働時間の集計方法を、今一度見直す必要があります。

日々の業務のなかでは、電話の対応や突然の顧客対応によって、予定されていた休憩時間中に業務が発生したり、あらかじめ決められた終業時刻に仕事を終えることができなかったりすることが少なくありません。
このように、従業員が本来の労働時間を超えて働く必要がある場面は、どのような職場でも日常的に発生します。

ここで重要なのが、労働基準法における基本的な考え方です。
労働基準法では、実際に働いた時間に応じた賃金を全額支払うことが原則とされています。
そのため、企業は従業員の労働時間を正確に把握し、実務上は原則として1分単位で集計して賃金を計算します。
たとえば、5分単位や10分単位、15分単位などで、日ごとの労働時間の端数を切り捨てることは、賃金全額払いの原則に反するとされ、行政の解釈上、認められていません。
終業時刻が18時であっても、実際に業務が終わったのが18時3分であり、その時間も会社の指揮命令下で労働していたのであれば、その3分間も労働時間に含まれ、賃金の支払い対象となります。

事務作業の負担軽減のために設けられた例外

原則として、実際に働いた時間を正確に把握し、労働時間を実務上1分単位で集計することが求められます。
一方で、厚生労働省の解釈では、企業側の事務作業の負担を軽減するため、一定のルールに沿った端数処理であれば、「賃金全額払いの原則に反するものではない」としています。

具体的な特例は大きく分けて2つあります。
1つ目は、労働時間の端数処理です。
1カ月における時間外労働、休日労働および深夜労働のそれぞれの合計時間について、1時間未満の端数が生じた場合に限り、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることが認められています。
この取り扱いはあくまで1カ月単位で集計した時間外労働、休日労働および深夜労働の各合計時間に適用されるものであり、日ごとの労働時間に適用することはできません。

2つ目は、割増賃金の端数処理です。
1時間当たりの賃金額や、これを基に算出した1時間当たりの割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げることができます。
また、1カ月分の時間外労働などに対する割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合も、同様に50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げることが認められています。

これらの処理は、切り捨てと切り上げが公平に行われることを前提としているため、例外として認められています。
したがって、端数処理のルールを社内で明確にしたうえで、認められた範囲内で適正に運用することが求められます。

従業員の労働時間を適切に把握し、それに応じた賃金を適正に支払うことは、労務管理における基本的な義務です。
トラブルを未然に防ぐためにも、自社の勤怠管理システムや就業規則が正しいルールにのっとっているか、今一度確認しておきましょう。


※本記事の記載内容は、2026年9月現在の法令・情報等に基づいています。