藤垣会計事務所

消費者庁も『解約の容易化』を要求!「解約しづらいWebサービス」

26.07.28
ビジネス【企業法務】
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ネットショッピングやニュースの購読、動画配信などのWebサービスは、今や生活に欠かせません。
その一方で、契約した後に「解約できない」「手続の仕方がわからない」といったトラブルが後を絶ちません。
国民生活センターに寄せられる解約にまつわる相談件数も、年々増加傾向にあります。
こうした事態を受け、消費者庁では消費者を守るための法規制の強化を検討し始めました。
Webサービスを取り扱う企業はもちろん、将来的な事業展開を考えている事業者も、「解約しづらいWebサービス」が抱える法的な問題点を把握しましょう。

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解約できないWebサービスの類型

毎月一定額を支払うサブスクリプション(定額制サービス)や、健康食品や化粧品などの定期購入(ECサイト)など、多くの企業がWeb上で商品やサービスを提供しています。
こうしたWebサービスのなかには、利用開始の手続が簡単である一方で、解約しようとすると途端にハードルが高くなるものがあります。

解約ページへのリンクが意図的に見つけにくく設計されている、解約までに何度も不要な引き止め画面を経由しなければならないといった手法は、「ダークパターン」と呼ばれます。
消費者を錯覚させたり操作をむずかしくしたりする悪質なWebデザインとして、世界的に問題視されています。

また、Webで簡単に契約できるにもかかわらず「解約手続は電話のみ」と指定しているケースも少なくありません。
指定された番号に電話をかけても、まったくつながらない、長時間の順番待ちを強いられるといった問題が起きています。
さらに、解約手続を期間内に完了させないと自動で契約が更新され、意図しない支払いが続いてしまうトラブルも相次いでいます。

こうしたWebサービスの解約をめぐる問題に対して、2022年には改正消費者契約法が成立し、事業者に「解約手続に必要な情報提供を行う努力義務」が課されました。
事業者は、消費者の希望に応じて、解約に必要な情報を提供するよう努めなければなりません。

また、インターネット通販などのルールを定めた「特定商取引法」も厳格化されています。
特に定期購入のトラブルを防ぐため、消費者が注文を確定する「最終確認画面」において、事業者には契約期間や支払い総額だけでなく、「解約の条件や方法」についても適切かつ明確に表示する義務が課せられました。
もし、解約条件を隠したり、誤解を招くような表示をしたりした場合は、罰則の対象となるだけでなく、消費者が契約の取消しを主張することができます。

さらに、民法の定型約款に関する規定や消費者契約法のルールに沿って、「消費者の権利を一方的に制限する解約条項は無効」と判断される可能性があります。
そのため、利用規約に「いかなる理由があっても解約できない」と記載していたとしても、当然、有効になるわけではありません。

規制後も増加する解約トラブル

さまざまな規制がありながらも、Webサービスにおける解約トラブルは、依然として増加傾向にあります。
国民生活センターの報告によれば、通信販売などにおける2024年度のトラブル類型のうち、「解約トラブル」が全体の57.2%を占め、2023年度の53.6%から大きく増えていることがわかりました。

トラブルがなくならない背景には、企業側の設計上の問題点があります。
企業側が「解約率を下げること」を現場の目標(KPI)として強く設定しすぎた結果、過度な引き止め策やわかりにくい解約フローを構築してしまうケースが少なくありません。
企業側が現場の実態や法的リスクを正確に把握していないことが、トラブルを生む温床になっているといえます。

また、スマートフォンやパソコンの操作に不慣れな高齢者など、デジタルリテラシーの低い層がターゲットになりやすいという構造的な問題も無視できません。

将来的に法規制がさらに厳しくなる可能性

消費者庁は2026年1月26日、「現代社会における消費者取引の在り方を踏まえた消費者契約法検討会」の第2回会合を開催しました。
この会議における議論の焦点は、サブスクリプションなどの解約を不当に妨げる「ダークパターン」に対する法的規制のあり方です。
検討会の委員からは「解約の容易化」を求める声が相次ぎました。

これまで努力義務にとどまっていた情報提供を法的な「義務」へ格上げすることや、契約時と同等の簡単な手順で解約できるシステム(ワンクリック解約など)の導入を事業者に義務づける法整備も視野に入ってきました。

こうした規制が現実のものになれば、企業側は実務の見直しを迫られることとなり、Webサイト上の契約フローや解約手続の画面設計、自動更新の仕組み、違約金の設定根拠に至るまで、適法性を厳しくチェックされる可能性もあります。

解約しづらい仕組みをつくることで一時的に顧客をつなぎ止めたとしても、結果的にユーザーは離れてしまいます。
逆に、解約手続をわかりやすく簡単にすることで、一度解約したユーザーも、「必要になったらまた利用すればよい」と考え、再び戻ってくるかもしれません。
さらに法規制が厳しくなる前に、自社のWebサービスの契約フローや解約手続が、現在の法律や今後の規制強化の方向に合致しているのか、今一度見直すことをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2026年7月現在の法令・情報等に基づいています。