藤垣会計事務所

静かな顧客『サイレントカスタマー』への向き合い方に要注意!

26.02.10
ビジネス【マーケティング】
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企業に対して直接不満を伝えることなく、静かに去っていく顧客のことを、マーケティング用語で「サイレントカスタマー(物言わぬ顧客)」と呼びます。
サイレントカスタマーは、商品を購入したりサイトを閲覧したりはするものの、レビューを書かず、アンケートにも答えず、ただ静かに「次はもう買わない」「もう利用しない」と決断する人たちです。
この「見えない不満」こそが、企業の業績を低迷させる大きな要因になります。
隠れたリスクであるサイレントカスタマーの実態と、その対策について深掘りしていきます。

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見えにくい「サイレントカスタマー」の正体

「サイレントカスタマー」とは、文字通り、製品やサービスに対して何らかの不満や違和感を抱いているにもかかわらず、それを企業側に直接伝えることなく、静かに購買や利用を辞めてしまう顧客層を指します。
一般的に、不満を持った顧客のうち、実際に企業へクレームや要望として声を上げるのは全体のわずか数パーセントに過ぎないといわれています。
つまり、企業が認知しているクレームは氷山の一角であり、水面下にはその何倍もの「声なき不満」が渦巻いているということです。

サイレントカスタマーが声を上げない理由は、「手続きが面倒だから」「伝えても変わらないだろう」といった諦めや、「クレーマーだと思われたくない」などの心理が働いているからと推測されています。
しかし、注意しなければならないのは、サイレントカスタマーが「誰に対しても沈黙しているわけではない」ということです。
企業には直接伝えなくても、友人や家族との会話、あるいはSNSといった個人的なコミュニティのなかで、その不満を吐露している可能性があります。
企業側が気づかない間に、見えないところで静かに多くの顧客が離れていくだけでなく、潜在顧客にもネガティブな影響が出かねない怖さがサイレントカスタマーにはあります。

改善策はわからず、ネガティブな意見も拡散

サイレントカスタマーを放置することは、企業にとって真綿で首を絞められるような慢性的な経営リスクにつながります。

まず懸念されるのは、既存顧客の離脱による収益の低下です。
顧客が離れていく明確な理由がデータとして残らないため、企業側は「なぜ売上が落ちているのか」「なぜリピート率が下がったのか」という原因を特定できないまま、誤った対策を講じ続けてしまうおそれがあります。
改善すべきポイントがわからないまま走り続けることは、マーケティング投資の効率を著しく低下させます。

不満の声が届かない環境は、企業の競争力そのものを低下させます。
顧客からの厳しい意見は、製品やサービスの質を高めるための貴重な資源です。
その資源が入ってこないということは、自社の弱点に気づく機会を逸失し続けることを意味します。
結果として、顧客のニーズからずれた独りよがりなサービス展開となり、市場での優位性を競合他社に奪われてしまうでしょう。

さらに深刻なのが、ネガティブな口コミの拡散です。
先述の通り、企業には沈黙を守る顧客も、SNSや口コミサイトでは雄弁になることがあります。
現代のマーケティングにおいて、消費者は企業の公式情報以上に、第三者のリアルな口コミを信頼する傾向にあります。
たった一つのネガティブな投稿が、購入や利用を検討していた多くの潜在顧客の意欲を削ぐことになりかねません。
直接クレームを伝えてくれる顧客は、対応次第でファンに転換する可能性がありますが、サイレントカスタマーは不満を抱えたまま市場にネガティブな感情を拡散させる「見えないアンチ」となり得ます。

顧客をサイレントカスタマーにさせない

サイレントカスタマーに対して、企業はどのように向き合えばよいのでしょうか。
最も重要なのは、顧客が声を上げやすくするための「心理的・物理的なハードル」を下げることです。
多くのサイレントカスタマーは、問い合わせフォームを探す手間や、電話がつながるまでの待ち時間にストレスを感じ、離脱してしまいます。
そのため、Webサイト上のわかりやすい位置に問い合わせ窓口を設置するのはもちろんのこと、気軽に質問や意見が送れるチャットボットを導入するなど、顧客がアクションを起こす際の負担を極限まで減らす工夫が求められます。
「ご意見をお聞かせください」と、ただ待つのではなく、顧客がストレスなく声を届けられる導線を設計することがサイレントカスタマーを減らすための第一歩です。

さらに、企業側から能動的に声を集めに行く姿勢も大切です。
SNS上で自社製品名や関連キーワードを検索し、メンション(宛先指定)されていない独り言のような投稿まで拾い上げましょう。
そこには、アンケートでは出てこないような、生々しくも本質的な顧客の本音が隠されています。
こうした小さな不満の種を早期に発見し、製品改善やサポート体制の見直しに反映させることで、サイレントカスタマーが離反する前に、対策を打つことが可能になります。

サイレントカスタマーは、決して「満足している顧客」ではなく、企業に対して期待することを諦め、静かに去っていく予備軍の顧客です。
クレームが少ないことを良しとするのではなく、むしろ「声が聞こえてこないこと」に危機感を持ちながら、見えない不満を発見・解消するための仕組みづくりに力を尽くしましょう。


※本記事の記載内容は、2026年2月現在の法令・情報等に基づいています。