藤垣会計事務所

企業資産と個人資産を正しく区別し、現金管理と信頼を確保

25.01.14
ビジネス【税務・会計】
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中小企業の経営において、企業資産と個人資産は時に混同しがちです。
しかし、この線引きがあいまいなままだと、後にさまざまなデメリットをもたらす可能性があります。
また、しっかりと区別することにより、金融機関をはじめ外部関係者からの信頼を高められるというメリットもあります。
今回は、企業資産と個人資産を区別することの重要性、そして具体的な方法を解説します。

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企業と個人の資産を明確に区別する必要性

企業資産と個人資産を分ける一番の理由は、企業の場合は原則、会社の負債に対して経営者個人が責任を負わなくてすむようにするためです。
この原理原則を成立させる前提として、企業資産と個人資産の明確な区分が必要となります。
これに加えて、資産を区分するメリットは複数、存在します。

第一に、外部関係者からの信頼向上という観点です。
会社が事業を展開していくうえで、銀行からの融資や取引先との良好な関係構築は欠かせません。
その際、企業の財務状況が適正かつ明確であることは、信頼関係を築く重要な要素となります。
たとえば、融資を受ける際に企業資産と個人資産の区別があいまいだと、融資された資金が事業目的ではなく私的な用途に流用されるのではないかという疑念を持たれかねません。
これは会社の信用力を大きく損なう要因となります。

次に、税務リスクの軽減です。
企業資産と個人資産を混同していると、私的な費用を会社の経費として処理するなどの不適切な経理処理が発生する可能性があります。
具体的には、家族との食事や私的な旅行の費用を接待交際費として計上するケースが該当します。
その結果、特定の経費が前年と比較して急激に増加しているなど、例年と大きく違う点があると、税務調査で詳細な確認を要求される可能性が高くなります。

さらに重要なのが、事業の健全な成長という観点です。
企業資産と個人資産が混在していると、正確なキャッシュフローの把握が困難になります。
表面上の決算書では黒字に見えても、実際には資金繰りが悪化している、といった事態に陥りかねません。
事業の健全な成長のためには、財務状況を正確に把握することが不可欠なのです。

契約や個人資産の移転など資産の区別方法

企業資産と個人資産を明確に区別することの重要性について理解できたところで、具体的にどのように区別し、管理していけばよいのでしょうか。

まず重要なのが、経営者個人が所有する資産を会社が使用している場合の対応です。
このような場合は賃貸契約を締結し、適切な賃料を支払うことが必要です。
たとえば、経営者所有の建物を会社の事務所として使用している場合、市場相場に基づいた賃料を設定し、契約書を取り交わすことで、会社と個人の関係を明確にすることができます。

また、事業に使用している経営者個人の資産については、会社への移転を検討することをおすすめします。
たとえ、会社と契約を取り交わしていたとてしても、経営者の都合で個人の資産が第三者へ売却などされた場合、金融機関から事業の継続に関して疑念を抱かれる可能性が考えられます。
経営者個人の資産を会社所有にすることにより、資産の管理が一元化され、経理処理も簡素化されるというメリットもあります。

経営の基本である現金管理の徹底も重要なポイントです。
企業活動における現金の出入りを正確に記録し、社内での不正や誤りを未然に防ぎましょう。
特に注意すべきは、個人としての費用(私的な飲食代など)を法人の経費(接待交際費など)として処理してしまうケースです。
また、会社から経営者への貸し付けも、事業上の必要性が認められない限り、行わないようにしましょう。

経営の透明性を高めることも、重要な取り組みの一つです。
「中小企業の会計に関する基本要領」などを参考に、信頼性のある計算書類を作成するのも重要なポイントです。
また、金融機関に対して自社の財務情報を定期的に報告することで、企業としての信用力向上にもつながります。

これらの取り組みを効果的に進めるために、今一度、社内の資産や契約状況などについて把握しておきましょう。
現金管理など、企業規模や業態によって最適な方法は異なりますので、自社の状況に合わせた方法で、できるところから進めていくことをおすすめします。


※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。