Management LABO 経営会計事務所

社員が自身の裁量で働ける『ホラクラシー組織』とは

24.05.28
ビジネス【人的資源】
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近年、役職や階級などが存在せず、各従業員がそれぞれの裁量で働く『ホラクラシー組織』が注目を集めています。
ホラクラシー組織は、組織内に上下関係がなく、少人数のメンバーで構成されたグループが意思決定を行います。
『役割』に人が紐づく考え方のもとで運営されるホラクラシー組織は、トップダウン式の『ピラミッド型組織』が主流の日本の企業にマッチするのでしょうか。
メリットやデメリットも交えながら、ホラクラシー組織の歴史や導入方法などを解説します。
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ピラミッド型組織とホラクラシー組織の違い

日本において、多くの企業は上層部が現場に意思や指示を伝達していく『ピラミッド型組織』です。
ピラミッド型組織では、上層部によって決められた経営方針や戦略などが現場に伝えられ、従業員は上層部の指示通りに動きます。

このような階層構造を持つピラミッド型組織は、国家や軍隊などでは古くから採用されてきたスタイルで、18世紀の後半に起きた産業革命を契機に、組織の統制と意思伝達の効率が重視されるビジネスの世界にも取り入れられるようになったと考えられています。
今では世界中の多くの企業がピラミッド型組織を採用しており、日本でも大企業を筆頭に、代表的な企業の組織形態として認識されています。

国家や軍隊などのように、意思決定が効率的に行えるうえに、指揮命令系統も明確なピラミッド型組織ですが、一方で、階層構造が原因で生じる問題もあります。
上層部から現場まで関わる人員が多ければ多いほど、組織の柔軟性やスピード感は失われていき、上層部と現場に距離があるからこそ、組織の一体感を欠いたり、コミュニケーション不全が起きたりもします。

大企業は中小企業よりも階層が多くなる傾向にあるため、こうした問題が起きがちで、そのため上層部と現場の溝を埋める中間管理職の任命や、組織の一体感を高めるための施策、活性化のための人事異動などを行う必要があります。

こうしたピラミッド型組織の欠点を克服するための組織形態として、2007年にアメリカのソフトウエア開発会社『ターナリー・ソフトウエア』の創業者であるブライアン・J・ロバートソンが『ホラクラシー組織』を提唱したといわれています。

ホラクラシー組織の特徴は、社員一人ひとりに役職や階級などが与えられず、上司や部下などの上下関係も存在しないところです。

ホラクラシー組織では、少人数で構成された『サークル』と呼ばれるグループごとに『ロール』と呼ばれる役割が与えられます。
各サークルはピラミッド型組織のように上層部からの指示を受けることなく、目的の達成に向けて、担当している責務に取り組んでいきます。
このロールを具体例で表すと、「資金調達」や「戦略策定」、「人材確保」や「リスクマネジメント」といった実務が該当します。
つまり、ホラクラシー組織は役職ではなく、『役割』に人材が紐づけられる組織形態といえます。

ホラクラシー組織のメリットとデメリット

ホラクラシー組織のメリットは、組織に必要な役割がロールとして割り当てられているため、個人の行うべき業務が明確になり、従業員が自分の仕事に集中できることにあります。
上下関係に縛られることがないため、意思決定や問題改善もスムーズで状況の変化にも迅速に対応することが可能です。

また、組織の最小単位が、少人数で構成されているサークルなので、個人の意見も反映されやすく、達成感やモチベーションの向上にもつながるでしょう。
サークルが一丸となってロールに取り組み、目標に到達したときの達成感は、ピラミッド型組織ではなかなか味わえない感覚かもしれません。
社内の他部門との調整や上司の確認待ちなどとも無縁で、従業員がストレスを感じることなく働けるのも大きな利点です。

ただし、既存の組織をホラクラシー組織に変えていくことは容易ではありません。
ホラクラシー組織はサークルや個人の裁量で業務に取り組むことになるため、個人の自主管理能力が高くないと、組織として機能しないおそれがあります。
セルフマネジメントの苦手な従業員はホラクラシー組織のシステムに順応できない可能性があります。

また、進行管理を行うファシリテーターは存在するものの、ピラミッド型組織のような管理職が不在のため、十分な検討や精査を行わないまま意思決定が進んでしまい、思わぬリスクやミスを生んでしまうことも起こりえます。
このような組織のリスク管理対策として、業務に必要のない情報を制限したり、情報管理のルールを設けたりすることが有効です。

自社にホラクラシー組織を導入するのであれば、まずは一部のチームやプロジェクトなどの小規模なかたちで、実験的に始めてみることをおすすめします。
メリットはありつつも、すべての従業員が概念を理解して、実際に運用していくには時間もコストもかかります。
現場に混乱を招かないよう、慎重に進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。