もしも『欠陥住宅』を購入してしまったら!?
多くの人にとって、家は一生に一度の買い物です。
支払う金額も高額なので、絶対に失敗はできないものの、「欠陥住宅」を購入してしまう可能性はゼロではありません。
ある民間団体の調査によると、2022年には新築やリフォームをめぐる相談が3万5,000件以上も寄せられたというデータもあります。
では、もし購入した住宅が欠陥住宅だったら、どうすればよいのでしょうか。
万が一に備えて、欠陥住宅トラブルの対処法を説明します。
買主が欠陥住宅の売主に請求できること
「欠陥住宅」とは、「通常安全性を欠いた住宅」のこととされ、住む人の命や身体、健康に危険が及ぶ可能性のある住宅はすべて欠陥住宅といえます。
具体的には、家を支える基礎や壁のひび割れ、家の傾き、屋根の雨漏り、配管の水漏れ、柱や梁の不備などのある住宅が欠陥住宅に該当します。
もし、欠陥住宅を購入してしまっても、通常は施工業者やハウスメーカーなどの売主側に修繕や返金を求めることができます。
なぜなら、売買契約において、売主は民法に基づく「契約不適合責任」を負うことになるからです。
契約不適合責任とは、売主から買主に引き渡された物について、その状態が契約と異なる場合に売主が追及される責任のことです。
住宅販売において、施工業者やハウスメーカーなどの売主から引き渡された住宅に欠陥があった場合、当初の契約の内容と適合しないことになるため、売主は契約不適合責任において、なんらかの対応をしなければならないというわけです。
売主が対応できるのは、まず欠陥部分の補修です。
ひび割れや水漏れなどが見つかれば、買主は売主に修補を依頼しましょう。
多くの施工業者やハウスメーカーはすぐに対応してくれるはずですが、トラブルを防ぐ意味でも、欠陥部分はしっかりと写真に残し、売主側とのメールのやり取りなどはすべて記録に残しておきましょう。
もし売主がいつまでも修補を行なってくれなかったり、修補をはっきりと拒絶したりする場合は、民法第563条に基づき、住宅の購入代金の減額を求めることができます。
また、再三の修補の請求にも応じず、欠陥が深刻な場合は、住宅の売買契約を解除することも可能です。
契約を解除した場合は、支払った住宅の購入代金の全額の返還を求めることができます。
責任を追及することのできる期限に注意
修補や返金を求める際に注意したいのは、その期限です。
契約不適合責任では、民法566条によって責任を追及できる期間が定められており、買主が欠陥を知ってから1年以内に通知しなければ、売主の責任を追及できなくなってしまいます。
つまり、欠陥があることを知っているのにもかかわらず、いつまでも放置していると、何の対応もしてもらえないことになります。
また、民法166条では契約不適合責任の時効についても定めており、「権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しないとき」と「権利を行使することができるときから10年間行使しないとき」のどちらか早い方が適用されて、時効になってしまいます。
たとえば、住宅を購入して6年目で欠陥に気づいた場合、1年以内に通知をして、4年以内に修繕や返金の請求を売主にしなければ時効になってしまうということです。
さらに、売主が責任を負う10年間は特約によって短くすることが可能で、事業者や契約によるものの、一般的には2年間が相場となっています。
欠陥に気づいたときには時効を迎えていたということがないように、まずは契約内容をよく把握し、入居する段階で住宅をしっかりと確認しておくことをおすすめします。
場合によっては、建物状況調査を行うホームインスペクション(住宅診断)会社への依頼も考えておきましょう。
品確法で保証してもらえる範囲
住宅購入者を守るのは民法だけではありません。
1999年に公布されて翌年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」、通称「品確法」という法律も欠陥住宅を購入してしまった場合に役立ちます。
品確法は、住宅性能表示制度や新築住宅の保証などについて定めた法律で、売主は同法に基づき、「新築住宅の柱や壁などの構造耐力上の主要な部分」と「屋根などの雨水の浸入を防止する部分」に関して、引き渡し後から10年間にわたって保証をしなければいけません。
この売主が負うことになる責任を「瑕疵担保責任」といいます。
もし10年以内に上記の部分に工事の不備や欠陥が見つかったら、施工業者やハウスメーカーは瑕疵担保責任に基づき、無償で修繕をする義務があります。
この10年間は契約不適合責任の期限のように短くすることができず、買主と売主の合意があれば、特約で20年間に延長することもできます。
ただし、品確法の対象となるのは「新築住宅」に限られます。
契約不適合責任は中古住宅にも適用されますが、品確法の瑕疵担保責任は新築住宅にしか適用されません。
新築住宅とは、建設工事の完了から1年以内の住宅で、かつ、人が一度も住んだことのない建築物のことを指します。
工事が完了して1年を過ぎた物件や、1カ月でも人が住んだ物件は新築住宅に該当しません。
購入した住宅に欠陥が見つかった場合は、この品確法の瑕疵担保責任と民法の契約不適合責任、そして、場合によっては「宅地建物取引業法(宅建業法)」に基づき、売主に対応を求めることになります。
住宅に関する法律の知識が必要になるため、トラブルに発展しそうであれば、早めの相談をおすすめします。
※本記事の記載内容は、2025年1月現在の法令・情報等に基づいています。