ウィルサイドコンサルティング合同会社

キーワードは「都市部集中」

16.02.05
業種別【医業】
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介護事業大手のT社が、今後は高齢者の多い80の「市区町」だけに集中的に介護拠点を設けていくとのこと。その7割は首都圏で、それ以外は近畿圏、中京圏、仙台や新潟などの地方中核都市が含まれます。地方の小市町村や山間部は、高齢者率は高くても、人口そのものは少ないため対象外です。 

この割り切りはさすが効率重視の企業ならではですが、ちゃんと人口動態予測というウラはとれています。いや、本当に民間企業のやることは迅速です。
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国立社会保障・人口問題研究所の「将来人口推計」によれば、2040年には全国で人口が減少するなか、首都圏を含む「南関東」エリアの人口だけが増加すると予測されています。全人口の30%が首都圏に住む時代が来るわけです。 

2010~2040年の30年間に、沖縄は65歳以上の高齢者数が1.7倍に、首都圏は1.5倍に、2025年ですら、東京都や全国大都市圏の高齢者世帯数は1.3倍になると予測されています(全国平均では1.2倍)。人口予測の計算方法は精緻なもので、実際とのずれはあまりないとのことです。 

日本の高齢化率の問題は、医療費をはじめ社会保障制度の維持や、生産人口減少による経済の衰退と絡めて語られることが多いのはご承知の通りです。しかし、こうなると首都圏など一部の大都市は如実に「介護力不足」が顕在化します。昨年の時点で、特別養護老人ホームの入居待ちが52万人など、問題はすでに始まっているのです。 

T社はその事態が見込まれるエリアだけに絞って、1つの市区町に3つのデイサービス、在宅介護支援事業所、有料ホームなど計5つの事業所を置き、利用者が必要に応じて行き来できるようにするようです。つまり、一社内で地域包括ケアのかなりの部分を担えてしまうわけで、これにもし今後、医療が加わると最強でしょう。

「囲い込み」という批判もあるかもしれませんが、在宅介護中の家族にとって、同じ関連施設に後方支援部隊があるというのは、とても心強いことだと思います。 

厚労省は昨年末、療養病床の転換先として「医療型施設」か「医療機関併設住宅型施設」の2種を示唆しました。もし、何らかの選択を迫られたとき、自施設のエリアの今後の人口動態と現在の介護サービス供給状況を調べてみると、おのずと答えは見えてくるかもしれません。


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[プロフィール] 
中保 裕子(なかほ・ゆうこ) 
医療ライターとして全国のがん医療、地域医療の現場を中心に医療者、患者、家族へのインタビューを行うほか、新聞広告等での疾患啓発広告制作、製薬企業等のマーケティング調査の実績も多い。有限会社ウエル・ビー 代表取締役。  
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