短期間で違法駐車を繰り返すと、社用車が運転禁止に?
短時間の車両の放置に対しても取り締まりが行われるようになり、過去6カ月以内に放置駐車違反を3回以上繰り返すと、車両の使用制限が命じられます。
特に仕事で車を使う企業にとっては、事業に大きく影響しかねません。
もし社用車が使用制限命令を受けた場合はどうなるのか、この制度と対応方法について解説します。
6カ月以内に3回以上の駐車違反で使用制限
自動車は今や人々の生活にとって欠かせないものです。
しかし、特に都心部においては違法駐車により、通行に支障をきたす状況が常態化し社会問題となっています。
こうした状況の解消に向けて、2006年6月1日に改正道路交通法が施行され、違法駐車に対する取り締まりが強化されました。
この改正で、違法駐車取り締まりの民間委託が始まり、放置駐車違反に対する違反金制度が導入され、短時間の放置駐車違反も取り締まられるようになりました。
東京都で最も早く民間委託が導入された地域では、2年間で5倍以上の取り締まりが行われ、主要路線の合法駐車を含む路上駐車の台数が58.9%減少するという成果が出ています。
また、2023年11月に警察庁交通局が公表した『駐車対策の現状』によると、道路交通法が改正される以前の2005年は、東京都特別区内の違法駐車が86,109件だったのに対し、改正後の2006年は68,656件と減少し、以降も年々減少傾向にあります。
しかし、減少しているとはいえ、2022年の東京都特別区内の違法駐車は38,756件と決して少ないとはいえず、依然として幹線道路などの交通渋滞や交通事故の要因となっています。
このような違法駐車への対策として、短い間に駐車違反を複数回繰り返した車両を対象にした『車両の使用制限』命令があります。
6カ月以内に同じ車両で3回以上放置駐車違反をし、違反金納付命令を受けている場合、公安委員会はその車両に対して3カ月以内の運転禁止を命ずることができます。
使用が制限される期間は車種によって異なります。
3カ月…大型自動車、中型自動車、準中型自動車、大型特殊自動車、重被けん引車
2カ月…普通自動車(軽自動車も含む)
1カ月…大型自動二輪車、普通自動二輪車、小型特殊自動車、原動機付自転車
この禁止命令は「車両」に対してであり、運転している「人」が対象ではない、ということに注意が必要です。
また、過去1年間に車両の使用制限を受けた前歴がある場合、その前歴の回数に応じて、より少ない回数の違反金納付命令で車両の使用制限を受けることになります。
基準以上の違反金納付命令を受けた車両の使用者は、その車両の使用制限命令を受ける際に、公安委員会による『聴聞』という弁明の機会が与えられます。
聴聞の場で意見を述べたり、証拠書類を提出したりすることで、一定条件のもとに車両の使用制限処分の「免除」または「軽減」を受けられる場合があります。
具体的に弁明が認められる例として、事実誤認などで違反をしていなかった場合、違反が起きたとされる日に当該車両の使用者でなかった場合、違法駐車が天災などの不可抗力に起因していた場合などがあてはまります。
正当な理由なく聴聞を欠席した場合は、使用制限命令に関する意見がないものとみなされ、車両の使用制限命令を受けることとなります。
社用車が使用禁止になったらどうする?
会社の事業で使用している社用車に使用制限命令が出ている場合、その車両は運転することはできません。
このとき、使用制限がかかっているのは車両自体のため、違反した当事者以外の社員が運転することもできません。
また、車両の使用制限が科せられる基準となる違反回数の前歴は、自動車検査証の「使用の本拠の位置」が同一の車両すべてをもとに計算されます。
つまり、会社の社用車が複数台あり、自動車検査証の「使用の本拠の位置」が全車両とも同じ住所だった場合、他の社用車の使用制限回数によっては、初めて違反してしまった車両にもかかわらず使用制限がかかってしまう可能性があるということです。
使用制限命令中に運転してしまうと罰則となり、3カ月以下の懲役、あるいは5万円以下の罰金が科される可能性があります。
過去には、この車両の使用制限命令を無視して車両を使用した運転手が、道路交通法違反容疑で逮捕された例があります。
社用車で駐車違反をした場合、罰金を払うのは原則として運転手です。
ただし、運転していた従業員が出頭しない、または罰金を支払わない場合、運転手の使用者である会社が放置違反金を支払うことになる場合があります。
道路交通法の改正により減少傾向にある違法駐車ですが、都心部ではいまだ交通の障害となっており、まだまだ改善が必要です。
これからも違法駐車に対する厳しい取り締まりは続くでしょう。
業種によっては社用車の使用禁止は、事業の運営に大きな影響を及ぼす死活問題となりえます。
社用車を使用する際は、今まで以上に駐車する場所が適切かどうか、しっかりと確認しましょう。
※本記事の記載内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。