内定辞退を防ぐ! 新卒採用で重要性が増す『オヤカク』とは
採用活動にかかったコストや時間が無駄になってしまうため、企業としても就活生の内定辞退は可能な限り防がなければいけません。
そこで、注目を集めているのが『オヤカク(親確)』です。
オヤカクとは、内定を出した就活生の親が賛同してくれているか確認したり、就活生の親に自社を紹介したりする活動のことを指します。
内定辞退を防ぐことにもつながるオヤカクの重要性と、具体的な方法について説明します。
なぜ親が子どもの就職先を気にするのか
新卒採用の一般的なスケジュールでは、3月から広報活動をはじめ、6月から選考、10月までに内定出しを行います。
採用担当者にしてみれば、内定を出したところで一つの区切りにしたいところですが、まだ安心はできません。
内定を受けた就活生が、企業に対して内定辞退を申し出る可能性があるからです。
内定辞退は企業から届いた内定通知に承諾して、入社の意思を示した就活生が、自身の都合で内定を辞退することを指します。
採用の現場では、少子化と企業側の人手不足によって、学生に有利な『売り手市場』が長らく続いており、一人で複数の企業から内定を獲得する就活生も少なくありません。
結果的に内定辞退を申し出る就活生も増え、多くの企業が対策に追われています。
また、近年は就活生の親の意向も無視できなくなりました。
就職情報サイトのアンケート調査によると、就活生が内定先の決定にあたり相談した相手として最も多かったのが、父親・母親の61.9%でした。
内定を出した就活生から親の意向で辞退されたり、内定者の親から会社の内情について問い合わせの電話があったり、直接来社して対応を迫られたりするといったケースもあるようです。
昔に比べて、親が子どもの就職先について関心が高まったのは、ブラック企業や過労死、職場のハラスメントなどの詳細を、報道によって知る機会が増えたことも原因の一つだといわれています。
大切な子どもの就職先について「長時間労働や過重労働を課す企業ではないか」、「上司からハラスメントを受ける職場ではないか」などと不安を募らせた結果、実態を確かめたくなるのは、親として当然のことかもしれません。
こうした親の不安を取り除き、就活生の内定辞退を防ぐための手段として有効なのが、「親の確認」を意味する『オヤカク』です。
オヤカクの目的は、就活生の親に自社がどのような企業か知ってもらい、不信感を取り除いて、学生の入社に賛成してもらうことにあります。
子どもの働く職場について知ってもらう
就活生の親を納得させるための取り組みであるオヤカクには、さまざまな方法があります。
その一つが会社案内の実施です。
近年は就活生の合同企業説明会に、就活生の親に向けた会社案内のスペースを設ける企業も出てきました。
説明会の段階で親に自社を詳しく説明することで、理解してもらうための施策といえます。
また、親に対して、会社案内のパンフレットやDVDなど送付する企業もあります。
子どもの就職先に不安を抱いているのは、会社の情報や評判などを能動的に調べる親だけではありません。
なんとなく印象だけで「大丈夫かな?」と思っている親にこそ、手元にあり自社のことをいつでも詳しく調べられるパンフレットやDVDが有効です。
特に、中小企業やBtoB向けサービスを提供している企業は、誰もが名前を知っている大企業に比べると認知度は低いため、「何をしている会社なんだろう……?」と、マイナスのイメージでとらえられてしまう可能性もあります。
会社案内の実施や、パンフレットやDVDなどの送付は、そうした誤解や不信感を親から払拭するための取り組みでもあります。
また、企業によっては、親を対象とした社内でのオリエンテーションや懇親会、職場を見学できるオフィスツアーなどを催しているところもあります。
実際に子どもが働くことになる現場を見てもらうことで、納得感を持って入社に賛成してもらうのが狙いです。
ほかにも、オヤカクには「親に同意書を書いてもらう」、「社長や採用担当者が電話や自宅訪問などで親にあいさつする」、「自社の商品を送って使ってもらう」、「採用サイトに親向けの説明ページを設置する」などの方法があります。
2024年卒の学生の保護者を対象にしたアンケートによると、半数以上の親が子どもの内定企業から内定確認の連絡を受けたことがあると回答しました。
このようにオヤカクは世間一般に広まりつつあります。
一人っ子の増加や、子どもの教育や将来への関心の高まりなどから、近年は昔に比べると親子関係もフラットになり、なんでも気軽に相談できる仲のよい親子が多くなったといわれています。
就職について親子で考える家庭が増えている今だからこそ、オヤカクの重要性も増しています。
就活生の内定辞退を防ぐためにも、自社でどのようなオヤカクに取り組むことができるのか、考えてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2024年5月現在の法令・情報等に基づいています。