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明示ルール変更と同時に検討したい『労働条件通知書』の電子化

24.02.26
ビジネス【労働法】
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労働契約の締結と更新の際に事業者が行わなければいけない『労働条件明示』について、2024年4月から新たな明示事項が追加されることになります。
また、労働基準法に基づく省令の改正によって、2019年4月から労働条件通知書の電子化が解禁になりました。
今度の労働条件明示のルール変更のタイミングで、労働条件通知書の電子化を検討している事業者も多いのではないでしょうか。
どのように労働条件通知書の電子化を進めていけばよいのか、事業者が注意すべきポイントを解説します。
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メールなどでの交付には労働者の同意が必要

労働条件通知書とは、賃金や労働時間や有給休暇など、労働者に明示しなければいけない労働契約の条件を記した書面のことで、事業者は労働者に対し、この書面を交付する義務があります。
これまでは原則として紙の書面による交付しか認められておらず、正社員はもちろん、頻繁に契約の更新が必要な非正規労働者に対しても、更新ごとに労働条件通知書を交付する必要があったため、事業者と労働者の双方にとって、労働条件通知書の交付はとても手間がかかるものでした。

そこで、事務的な負担を減らし利便性を高めるための措置として、労働基準法施行規則が改正され、2019年4月1日から書面以外の方法による交付が認められることとなりました。
具体的には、FAXや電子メール、その他メッセージの送付が可能なSNSやアプリ、クラウドサービスなどでの送付が可能となりました。
労働条件通知書の書面での交付を定めた労働基準法施行規則は、電子メールやSNSなどが存在しない1947年に作られたものなので、交付方法の追加はおよそ70年以上ぶりの改正となります。

労働条件通知書の電子化により、多くの会社で業務の効率化が図られると同時に、ペーパーレス化により、コストの削減も実現しました。
しかし、こうした労働条件通知書の電子化は便利な反面、いくつか気をつけるべきポイントがあります。

まず、労働条件通知書をFAXや電子メールなどの方法で送付する際には、必ず事前に労働者の同意を得ておく必要があります。
たとえば、自宅にFAXやパソコンなどの機器がなく、労働者がFAXや電子メールを受け取れないケースも考えられます。
労働者が希望しないのであれば、これまでと同様に書面での交付を行いましょう。

もし、労働者が電子メールを受け取れない状態にもかかわらず、電子メールで労働条件通知書を送付した場合などは、「労働条件通知書を交付した」とはいえず、法令違反になる可能性があります。
事業者の法令違反が認められた場合は、労働基準法の第120条に基づき、30万円以下の罰金が科せられる可能性があるので注意してください。

閲覧を証明できるクラウドサービスが便利

労働基準法施行規則の改正により、自社サーバーやクラウドサービスを介した労働条件通知書の交付も認められるようになりました。
従業員が少人数であれば、労働者一人ひとりに電子メールで送付するかたちでも問題はありませんが、大規模の企業の場合、電子メールの送付にも時間と手間がかかってしまいます。
そこで、労務管理の効率化を目的に、自社サーバーに労働条件通知書をアップロードし、従業員が個人的に自分の労働条件通知書を閲覧できるスタイルを採用している企業もあります。
このとき注意したいのは、個別にパスワードを設定するなどして、ほかの従業員に個人の労働条件通知書を閲覧できないようにしておくことです。
労働条件通知書は労働条件が明記された個人情報なので、取り扱いには十分気をつけましょう。

また、労働条件通知書を交付しても、労働者が閲覧していなかった場合、労務トラブルに発展することがありますので、本人に届いているかを確認することも望ましいとされています。
しかし、一人ひとりの閲覧状況を確認しようとすると、事務作業の工数が増大してしまいます。
そこで労働条件通知書の閲覧ができるクラウド型の雇用管理システムや電子契約サービスであれば、従業員がWeb上で同意ボタンをクリックすることで、閲覧と確認を行なったことが証明できます。
特に従業員が多い企業は、法務的な側面からも労働条件通知書の閲覧とその証明ができるクラウドサービスがあると便利でしょう。

ほかにも、電子化された労働条件通知書は、交付を受けた労働者が紙に印刷できるようにしておかなければいけません。
印刷用に設定したPDFファイルを電子メールに添付するケースなどは問題ありませんが、SNSやメッセージアプリの文章内にそのまま労働条件通知書の内容を記載して送る方法では、レイアウトや書式が崩れて正確に出力できず、必要な文書が途切れてしまうなど要件を満たさない可能性がありますので注意しましょう。

日本におけるスマートフォンの普及率は9割を超え、多くの人が労働条件通知書の電子化を受け入れることのできる環境にあります。
労働条件明示のルール変更は、紙で労働条件通知書の交付を行なっている事業者にとって、電子化に切り替えるよいタイミングかもしれません。
業務効率化とコスト削減のためにも、労働条件通知書の電子化を前向きに検討していきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年2月現在の法令・情報等に基づいています。