ウィルサイドコンサルティング合同会社

求人で性別を制限できる? 男女雇用機会均等法における適用除外とは

22.11.29
ビジネス【労働法】
dummy
『男女雇用機会均等法』では、 採用活動において、『性別を理由とした差別的な取り扱い』を禁止しています。
したがって、求人広告に『男性限定』や『女性優遇』といった記載はできませんし、男女のいずれかを優先してはいけません。
しかし、性別を限定して求人を行っても違反にならない、適用除外の項目もあります。
今回は、『性別を限定した求人』について、男女雇用機会均等法の知識を交えながらお伝えします。
dummy
差別的な取り扱いと受け取れる求人広告に注意

求人を行う際に、男女のいずれかを排除したり、男女で異なる採用・募集条件をあげると、男女雇用機会均等法違反となります。
たとえば、下記の表現はすべて禁止されているので注意が必要です。

●『男性限定』や『女性限定』など、男女のいずれかを排除する表記
●『男性のみ要運転免許』『女性は未婚者限定』など、男女で異なる条件
●『男性7名、女性3名の採用を予定』など、偏った募集人数
●『ウエイター』『○○レディ』など、男女のいずれかを表す名称
●『男性限定』『女性向きの職種』など、どちらかを優遇するかのような表記

ただし、業務を遂行する上で、どうしても性別を限定する必要がある場合は、男女雇用機会均等法の除外規定に該当し、性別を限定して求人を出すことが認められています。
除外規定に該当するのは、以下の(1)~(3)の職務です。

(1)芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から男女のいずれかのみに従事させることが必要である職務
たとえば、俳優やモデルなど。

(2)守衛、警備員等のうち防犯上の要請から男性に従事させることが必要である職務
たとえば、有事の際に不審者に対応する必要があるビルの警備員や、現金輸送車の警備員などは、男性に限定して求人を出しても問題ありません。

(3)宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上、そのほかの業務の性質上、男女のいずれかのみに従事させる必要性のある職務
たとえば、神社などで働く巫女やレースクイーン、男女それぞれの更衣室の清掃担当、介護施設における同性の介助者など。

ほかにも、坑内業務や危険有害業務など、労働基準法で定められている女性の就業を禁止している業務や、保健師助産師看護師法に規定される男性を就業させることができない業務などは、性別の制限が認められています。


性別を限定して人材を募集するには

男女雇用機会均等法では、もともと女性労働者に対する取り扱いに差があった場合、これを改善する目的であれば女性のみを求人の対象としたり、女性を有利に取り扱うことが認められています。
この措置を『ポジティブ・アクション』の考え方に基づいた、性別限定の求人を行うことができます。

具体的には、女性従業員が全体の4割を下回っている企業であれば、男女間に格差があると判断され、ポジティブ・アクションを行うことができます
しかし、女性従業員が4割を下回っていても、単に女性に有利な求人を出したいとか、女性を優先して採用したい、といった動機で性別を限定した求人を行うことは禁じられています。

このように性別を限定した求人を行えるのは、男女雇用機会均等法の除外規定や、ポジティブ・アクションの要件に該当する場合に限られます。
しかし、表現の仕方によっては、その限りではありません。

たとえば、『女性活躍中』『女性スタッフ多数在籍』『男性の多い職場』といった表現は、職場や会社の現状や事実を表現しているだけなので、原則として法令違反にはならないとされています。
また、『気配りや心配りのできる方』『明るくコミュニケーションの取れる方』『パワフルな方』などの表現も、性別を限定しているわけではないので問題ないといえるでしょう。
『主婦・主夫歓迎』も、男女双方について記してあるため、男女差別にはなりません。

以上のように、求人を行う際は、求人票に必要な情報を記載するだけでなく、法律に則った内容になっているかどうかを検討することが大切です。
法律に抵触する内容を記載していると、求職者からの信頼も得られにくく、社会的な信用を失う可能性もあります。
求人を行う際は、男女雇用機会均等法に配慮することを忘れないよう注意しましょう。


※本記事の記載内容は、2022年11月現在の法令・情報等に基づいています。