ウィルサイドコンサルティング合同会社

電子契約と契約書の証拠力について

22.10.12
ビジネス【企業法務】
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企業や個人の間で何らかの取り決めがなされた場合、合意内容を証拠として残すため、契約書を作成します。
従来は紙の書類に捺印をするのが一般的でしたが、近年は電子契約も普及してきました。
ただし、電子文書はデジタルデータを編集できるため、改ざんされてしまうリスクがあります。
電子文書の脆弱性を克服し、法的効力を失わないように保存するためには、どのような点に気をつけたらいいか解説します。
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電子契約のトラブルを回避するには?

企業間の契約において、電子文書に電子署名をして取り交わす、電子契約の割合が増えています。
電子契約は、印紙税がかからないため、税制面でもメリットがあります。
では仮に、契約に関するトラブルが発生した場合には、従前の契約書と比較して電子契約は裁判所ではどのように扱われるのでしょうか。
裁判所ではどう判断されるかに基づき、確認していきましょう。

紙の契約書の場合、まず最初に、押印のある契約書について確認していきます。
押印のある契約書については、民事訴訟法228条4項に『私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する』という規定があります。

この条文の内容は、『本人が署名をした、または、印鑑を押したことが分かれば、契約書は本人が作成されたものと推定される』というものです。
実務上では、実印を押印した場合、本人が押印したものと考えられます。
したがって、契約書は本人が作成したものと推定されます。
実印は、本人が厳重に管理しており、他人が使用することはないという経験則を根拠としています。

では、電子契約の場合は、どうでしょうか。
『電子署名及び認証業に関する法律』第3条には以下のような規定があります。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る)が行われているときは、真正に成立したものと推定する

この条文も民事訴訟法228条4項とほぼ同じ趣旨だと考えてよいでしょう。
電子契約なので、署名や押印はありませんが、本人による電子署名がなされたことが分かれば、電子署名それをもって『本人が契約した』ということが推定されます。

ただし、電子署名は改ざんしやすいというリスクがあります(もちろん、押印のある契約書も改ざんの可能性はあります)。
そのため、電子署名が本人によってなされたことをきちんと証明する機能が必要となります。
押印のある契約書の箇所で述べた実印の管理と同じような要件が電子契約でも求められているということになります。
その点については、電子署名の定義として『電子署名及び認証業に関する法律』第2条に規定があります。
この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること

本人が電子署名を行ったことが分かること(本人性)および改変が行われていないこと(非改竄性)を確認できるもののみが、法律上、電子署名として扱われることになります。
電子契約サービスを提供している会社では、本人性については電子証明書(認証局が発行するもの)によって、非改ざん性についてはタイムスタンプによって担保することとしているようです。

以上のとおり、電子契約についても法律上、実印で押印した契約書と同じような証拠力が認められます。
ただし、電子契約においては、電子証明書及びタイムスタンプが必須となりますので、その点は意識しておくとよいでしょう。


※本記事の記載内容は、2022年10月現在の法令・情報等に基づいています。