ウィルサイドコンサルティング合同会社

2022年4月から年金法が改正! 変わるシニア介護職の労働環境

22.05.02
業種別【介護業】
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介護業界において、「年齢に関係なく働き続けたい」と考えている人は少なくありません。
そうした人の就労を後押しするため、国は年金制度を見直し、元気に働ける人が労働時間をセーブしなくてもよいよう、年金法を改正しました。
今後も、シニア層労働者の働きかたにまつわる法律や制度は、現状に合った形に整備されていく見通しです。
今回は、身近なシニアの労働環境整備にも役立つ、最新の年金制度や保険等の知識を紹介します。
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足かせとなっていた、『在職老齢年金制度』

日本人の健康寿命は年々長くなっており、2019年には男性72.68歳、女性75.38歳となりました。
それに伴い、65歳を超えても働き続けたいと考える人も、増加傾向にあります。

近年、介護業界のシニア層労働者に対する需要は非常に高くなってきており、現段階においても60歳以上の労働者割合は全年齢の15%~20%を占めています。

少子高齢化が進むなか、従業員に長く働き続けてもらうことが、企業にとっても重要になってきており、これまでよりもさらに高齢者の雇用を推進するために、現在、政府はさまざまな分野で法改正を進めています。

たとえば、2021年4月に施行された『高年齢者雇用安定法』では、70歳までの就業確保措置が事業主の努力義務となりました。
これにより、65歳定年が天井になっていたシニア層が、より長く働き続けられる環境に近づいたといえるでしょう。

さらに、これまで60歳以上になっても働く人の足かせとなっていた、『在職老齢年金制度』についても、2022年4月1日より改正されました。

この在職老齢年金制度とは、60歳以降も事業所で厚生年金保険に加入している人が、働きながら受け取る老齢厚生年金の制度のことです。
在職中の老齢厚生年金は、年金の月額と給与・賞与の金額の合計が一定額を超えると年金額が減額されるという仕組みで、給与等が多い場合は全額が支給停止になることもありました。

この在職老齢年金制度は、60歳代前半(60~64歳)と65歳以降とでは計算の仕組みが異なります。
たとえば60歳代前半では、年金と給与等の月額の合計が28万円を超えると、老齢厚生年金が減額または停止されます。
そのため、元気に長時間働ける人であっても、年金が減額されないようにするため、給与等の月額の合計が28万円を超えないように、働き方を調整しなければなりませんでした。

こうした状況は、シニア層にとっても、企業にとっても、あまり適切ではありません。
そこで、シニア層が働きやすくなるよう、改正年金法が施行されました。


2022年4月に施行された、改正年金法とは

それでは、改正年金法のどのような点が変わったのか、見ていきましょう。

(1)60歳代前半の在職老齢年金制度の支給停止基準額引き上げ
60歳代前半の在職老齢年金の支給停止基準額が、2022年4月1日以降は、28万円から47万円に緩和されました。
この改正により、年金を受け取りながら働く60歳代前半のシニア層の就労意欲を後押しすると共に、働き方の幅が広がることになります。

(2)『在職定時改定』の導入
現行の年金制度では、65歳で一定の要件を満たした労働者に老齢厚生年金が支給されます。
しかし、65歳以降も年金を受給しながら厚生年金保険に加入して働いた場合、在職中に支払った保険料は資格喪失時(退職時もしくは70歳到達時)まで年金額に反映されませんでした。
法改正では在職定時改定が導入され、65歳以上の在職中の労働者は年に一度10月に年金額が増額されることになりました。
これにより早期に年金額に反映されるため、年金を受給しながら働く労働者の生活基盤の充実を図ることが出来ます。

(3)年金受給開始時期が最大75歳までに
原則、老齢年金の受給開始時期は65歳ですが、現行の制度では、本人の申請により受給開始時期を60歳から70歳の間で自由に選ぶことができ、70歳の場合は年金額が42%増額されていました。
法改正により、受給開始時期の年齢が70歳から75歳に引き上げられ、75歳から受給を開始した場合には、年金額が84%増額となります。

上記の改正以外にも今後は被用者保険の適用拡大が予定されており、アルバイトやパート勤務など短時間労働者に対する企業の社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務付けが、2022年10月には『従業員101人以上の規模』、2024年10月には『従業員51人以上の規模』の企業というように、段階的に拡大されることになっています。
これも、シニア層の労働者にとって影響の大きな変更だといえます。

シニア層労働者の働き方への選択肢が増えれば、慢性的な人材不足に悩まされている介護業界にとって、大きな戦力となる可能性があります。

シニア層労働者には、仕事をするという以外にも、さまざまな選択肢があります。
個人のライフプランにあわせた働き方ができるよう、フォローする体制を作ってみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2022年5月現在の法令・情報等に基づいています。