ウィルサイドコンサルティング合同会社

『特別損失』には何が計上できる? 判断のポイントと注意点

20.07.07
ビジネス【税務・会計】
dummy
日本では毎年のように台風や地震などの自然災害が発生しており、会社の社用車や事務所、設備などが被害を受けるケースも少なくありません。 
このような、通常の企業活動では発生しない損失は、会計管理をするにあたって勘定科目のなかの特別損失として処理することになっています。 
さらに、会社が保有している固定資産を売却した際に出た損失や、投資目的で所有していた有価証券を売却した際の損失、企業を対象としたなんらかの犯罪に巻き込まれた際に出た損失なども、特別損失になります。 
今回は、特別損失として計上するうえでの注意点などをご紹介していきます。
dummy
特別損失として計上できるものとは

通常、企業が企業活動をしていれば、毎月の人件費や仕入れにかかる費用などの『損失』が日常的に発生します。
今回取り上げる特別損失は、こうしたいつも通りの企業活動とは直接関係ないところで発生した、特別な要因による臨時の損失のことです。

その年たまたま発生した大型台風や地震などの自然災害のほかに、有価証券を売却した際の損失や、災害や犯罪などによって発生した損失といったイレギュラーな損失も、特別損失として計上できます。

たとえば、2017年には、大手住宅メーカーの積水ハウスが、土地の所有者になりすました地面師グループに、東京都品川区の老舗旅館の土地購入代金として55億円を騙し取られる事件がありました。
この時の損害は、2018年1月期第2四半期決算において、特別損失として計上されています。

こうした詐欺の被害などは、滅多に起きることのない損失です。
臨時的な損失を経験しない限りは、あまり使わない勘定科目ではありますが、経営者であれば一応の知識は必要です。

ちなみに、銀行に融資を申し込むようなときには、決算書を見せる機会もあるかと思いますが、たまたまその決算期に、特別損失が原因で赤字になっていたとしても、銀行がそれによって『業績が悪化している』と判断することはありません。

ちなみに、似たようなケースで臨時的に発生した利益を『特別利益』として計上することもありますが、これも一時のもので、実力による利益ではないので、『業績が優良だ』という判断材料にはならないことも覚えておくとよいでしょう。

さて、特別損失に区分される勘定科目は、内容によってさまざまな種類があります。
たとえば、固定資産を売却したことによって生じた損失は、『固定資産売却損』となり、投資目的で所有していた有価証券の売却で生じた損失は『投資有価証券売却損』、自然災害による損失は『災害損失』、盗難などの事件によって発生した損失は『盗難損失』といった勘定科目になります。

ほかにも、固定資産を廃棄・処分した際の損失は『固定資産除却損』、子会社の株式を売却した際の損失は『子会社株式売却損』、社債を買い入れて償還した際の差額で発生した損失は『社債償還損』となります。


特別損失を計上する場合の注意点

もし、特別損失を計上する立場になったら、どのような注意点があるのかご紹介します。

まず、実際に損失が発生したという事実を証明するための証拠が必要になります。
固定資産や有価証券などの売却の際には、社内稟議書や契約書などがあるはずですし、ほかにも特別損失を証明するための資料があればすべて保管しておきましょう。
これらの証拠がないと、税務調査が入った場合、特別損失と認められない可能性も出てきます。

また、どの会計期間に特別損失があったのかも重要になるので、固定資産などの売却や廃棄の際には、いつ売却したのか、あるいはいつ廃棄したのかなどの日付がしっかりと記入されているかを確認し、きちんと整合性の取れている資料を用意しておきましょう。

ただし、たとえ普段の企業活動とは関係のないところで発生した損失であっても、継続性のある損失については、特別損失として認められないということもあるので、留意しておきましょう。
特別損失として計上できるのは、あくまで臨時的、突発的な損失だけです。
たとえば、固定資産の売却をした場合に、それを『固定資産売却損』として処理しようとしても、それが毎年、必ず入れ替える性質のものであったりした場合には、定期的な損失とみなされ、特別損失とは認められないので注意が必要です。

このように、特別損失はそのときの状況や、企業の状態によってケースバイケースで判断していくものです。
必ずしも、臨時的・突発的な損失がすべて特別損失になるわけではないので、むやみやたらに何でも計上していると、税務調査で指摘される可能性も出てきます。

特別損失に当たりそうな損失であっても、それが本当に『臨時的・突発的』かつ『普段の企業活動と関係がない』ものかどうかをよく考えて、判断していくことが大切です。


※本記事の記載内容は、2020年7月現在の法令・情報等に基づいています。