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理事長でさえクビにされかねない医療法人の社員の危険性とは?

20.03.10
ビジネス【法律豆知識】
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医療法上、医療法人においては、『社員』という地位が認められており、理事長の親族(妻や弟等)が社員となっているケースもしばしばあります。
しかし、このことが原因で、医療法人の存立を脅かすような事態が発生することがあります。
そこで今回は、医療法人における社員という法的地位の概要、特殊性及びその危険性について説明します。
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医療法上の社員の地位とは?

社員は、法律上、医療法人の構成員です。
医療法人の社員総会における議決権を有し、医療法人の経営における重要事項について決定することができる立場と位置づけられています。
社員には、自然人だけではなく非営利法人も就任できます。
しかし、株式会社のような営利法人は就任できません。
社員に就任するためには、社員総会の承認が必要となり、社員の資格喪失事由は、一般的に除名・死亡・退社とされています。
また、医療法人の創業者といえる理事(及び理事長)であっても、社員総会において多数決で解任できますので、社員総会は医療法人内における最高意思決定機関であると考えられます。


医療法上の社員の地位の特殊性とは?
 
まず医療法人の社員というと、従業員を指すと考えている人が多くいます。
しかし、法的には全く別であり、社員であるからといって給料が支払われるわけではありません。
次に、社員というと株主のようなものと考えている人もいますが、社員は議決権を1人1個有しており、かつ社員への就任には社員総会の承認が必要となるという点も株主とは大きく異なりますので、注意が必要です。
さらに、社員という地位と医療法人に対する出資はまったく連動していないため、医療法人に対して出資していても社員になれるわけではありません。
また、出資していなくても社員総会で承認されれば社員になることができます。
たとえば、株式会社は医療法人に出資はできますが、社員になることはできません。
医療法人に運営資金を拠出しているのにもかかわらず、医療法人の経営に参画できないのは理不尽であるようにも思えますが、医療法上はそうなっているので、この点も社員という法的立場の特殊性といえるでしょう。


医療法上の社員の地位の危険性とは?

医療法人の社員の地位は、その特殊性ゆえに医療法人の運営上、極めて危険な要素も含んでいます。
それは、社員という地位に結びついている議決権が『1人1議決権』であること、及び社員総会が医療法人における最高意思決定機関であることに関係します。
医療法人の運営に多額の資金を拠出している人物や、医療法人の創業から事業拡大などに多大な功績を有している人物など、医療法人の経営に貢献度が高い人物であっても、社員総会の過半数を押さえない限り、場合によっては社員総会の決議で医療法人から追い出される危険性があるのです。
医療法人の設立当初においては、理事長の親族など(たとえば、理事長の妻や弟、仲の良い医師)ということで社員に就任させていても、何らかのきっかけで仲が悪くなる場合(離婚、喧嘩など)があります。
そんなとき、親族などがいつの間にか新たな社員を入社させ、社員総会の過半数を牛耳り、創業者である理事長を医療法人から追い出すということが現実に起きてしまうわけです。

社員総会の過半数の社員を押さえられてしまうと、理事長であっても医療法人内で自らの地位を守ることは容易ではありません。
医療法人の理事などを務める医師は、医療法人の内部事情に目が行き届いていないこともありますが、社員の構成については、常に注意することが必要です。


※本記事の記載内容は、2020年3月現在の法令・情報等に基づいています。