ウィルサイドコンサルティング合同会社

同居している家族のモノを盗んだら犯罪!?

18.09.11
ビジネス【法律豆知識】
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「この間うちの子が、勝手に私の財布からお金を盗ったのよ」「どうもウチの旦那、私の財布からお金を抜いてる気がするのよね」。
こんな相談、受けたことありませんか? 
子どもや夫が、母や妻のお金を盗んだ場合、家族間であってもこの行為は犯罪になるのでしょうか。 
今回はこのような問題について考察していきます。
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家族のモノでも犯罪行為!?

上記事例の犯罪該当性を検討する場合、まず「窃盗罪に該当するのでは?」と考えると思います。
窃盗罪について、刑法は以下のように規定しています。

<刑法第235条>
『他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する』

上記事例の場合、自分の財産以外の財産を盗るため“他人の財産”という要件は満たします。
次に、“窃取”とは、当該財物を占有する者の意思に反して『当該財物の占有を移転させること』と説明されます。
つまり、『財物を掌握している人の許可を得ずに財物を移転してしまう行為』ということです。
上記事例の場合、母や妻の許可を得ず、母や妻の知らないうちにお金を盗ったわけなので、“窃取”という要件も満たしそうです。
そうすると、上記事例の息子や旦那は犯罪行為を行ったこととなり、犯罪者、前科者になりうるとも思えます。


親族という特別な身分関係が重視される

しかし刑法は、親族間の窃盗行為について以下のように規定しています。

<刑法第244条>
『配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第二百三十五条の罪、第二百三十五の二の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯したものは、その刑を免除する』

つまり、配偶者や直系血族の行った窃盗行為については犯罪には該当するが、その刑を免除するということです。

この規定の趣旨は、“法は家庭に入らず”との思想の下に、親族間の窃盗事例について、国家は刑罰権による干渉を差し控え、親族間の規律・ルールに委ねるのが望ましいという政策的な価値観にあります。

上記事例の場合、夫は配偶者であり、子どもは直系血族なので、本条に該当し、刑が免除されることになります。

つまり、夫や子どもが行った行為は、刑法が規定する犯罪行為に該当する。
それ故、起訴して判決を出すとすれば“有罪判決”となる。
しかし、親族という特別の身分関係を重視して刑は科さないということです。

上記の結論がみえていることから、実務上検察官は、上記事例のような場合には不起訴処分にすることが多いようです。


別居中の夫や妻がモノを盗ったら……?

それでは、息子がすでに家を出て家庭をもっているにも関わらず、実家に帰ってきた際に母親の財布からお金を盗った場合、あるいは別居している夫が妻の留守中に家にやってきて、テレビやパソコンを盗った場合にはどうでしょうか?

刑法244条が刑を免除する対象は、
①配偶者
②直系血族
③同居の親族
です。

③の『親族』は、①と②に該当しない親族(例えば、いとこや義理の父母など)を意味し、③にだけ“同居の”という要件が加わっています。
このことから、①と②の場合は同居要件は不要という解釈になります。

つまり、別居中の配偶者やすでに独立して家庭を持った子どもが、家族の財物を盗ったとしても刑法244条が適用されて刑は免除されます。
そのため例えば、別居中の夫が留守中にやってきて、通帳を持ち出して預金を引き出してしまったとしても警察は相手にしてくれないと考えた方がよいということです(但し、民事上の問題は残るのでご注意ください)。

実際にこのような事件は起きうることなので、身の回りには十分ご注意下さい。