株式会社ストックフォルム

引き抜きは当たり前? 美容業界の『ヘッドハンティング』を考える

25.04.01
業種別【美容業】
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美容業界では優れた技術や経験を持つ美容師をほかのサロンから引き抜く、いわゆる「ヘッドハンティング」が頻繁に行われています。
美容師のヘッドハンティングは、人材不足が深刻な美容業界において、即戦力となる人材を確保するための有効な手段の一つです。
しかし、その一方で倫理的な問題や法的なリスクも無視できません。
美容師のヘッドハンティングを「する立場」と「される立場」の両面から、そのメリットやリスクなどを解説します。

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人材不足の美容業界は引き抜きがよくある?

美容業界は常に人材不足の状態が続いています。
厚生労働省の「令和5年度衛生行政報告例」によると、2023年度末の美容所数は27万4,070施設と過去最多を記録しましたが、競争の激化や離職率の増加などによって、1店舗あたりのスタッフ数は平均2.1人と、小規模経営が多数を占めています。
また、美容業の有効求人倍率もほかの産業と比較して高水準で推移しており、優秀な美容師を確保することが、美容室経営における大きな課題となっています。

高い技術や集客力を持つ美容師は、どのサロンにとっても喉から手が出るほど欲しい存在であり、競合サロンから優秀な人材を引き抜く「ヘッドハンティング」も日常的に行われています。

高い技術や集客力を持つ美容師を迎え入れることで、即戦力として活躍してもらえるのはもちろん、サロン全体の技術力や集客力を向上させることも可能です。
競合サロンから優秀な人材を引き抜きできれば、その美容師が担当しているお客が、そのまま自分のサロンの顧客になる可能性は高いでしょう。
また、経験豊富な美容師を引き抜くことで、新卒や未経験者を育成する時間とコストを削減することも期待できます。

競合サロンに差をつけ、売上のアップにもつながるヘッドハンティングですが、具体的な方法としてはスカウト会社を利用するやり方と、オーナー自身が直接スカウトするやり方の2つがあります。

美容業界に特化したスカウト会社は、豊富なデータベースから最適な人材を探し出せるうえ、ヘッドハンティングに関するノウハウも持っているため、希望の条件に合う人材を確保しやすいというメリットがあります。
スカウト会社はクライアントの要望に応じて、すでに転職支援サービスに登録している美容師にアプローチしてくれるのはもちろん、要望があれば転職の意向がない美容師にもアタックしてくれます。

一方、サロンのオーナー自身が直接スカウトするやり方は、主にSNSを活用することになります。
いきなりスカウトするのではなく、まずは希望する美容師のSNSをフォローしたり「いいね」やコメントをしたりすることで関係を作り、自然な形で接触するようにしましょう。
実際にオファーする際はDMを介して、給与や歩合だけでなく、働きやすい環境や集客サポート、教育体制など、その美容師にとってメリットになるポイントを伝えることが大切です。

ヘッドハンティングのリスクと予防策

ヘッドハンティングする際には、一定のリスクがあることを理解しておきましょう。
たとえば、優秀な美容師が多いからといって、一つの店から複数の美容師を引き抜いてしまうと、経営者同士のトラブルに発展し、場合によっては損害賠償請求や引き抜きの差止請求などを受ける可能性があります。

また、引き抜いた美容師に顧客の個人情報を持ち出すように指示すれば、不正競争防止法や個人情報保護法に抵触する可能性があります。
違法な引き抜きはしないことを前提に、引き抜き先のサロンとの関係性も考慮しながら、円満な形で移籍できるよう配慮しなければいけません。

逆に、引き抜かれる側のサロンは、ヘッドハンティングに法的な問題点がないか確認しておきましょう。
ヘッドハンティングという行為自体は違法ではありませんが、他店の利益を不当に侵害した場合は、違法性が認められる可能があるからです。
もし、違法性が少しでもあると感じたら、弁護士に相談することをおすすめします。

さらに、優秀なスタッフを引き抜かれないように、前もって対策を講じておくことも重要です。
働くスタッフの満足度が低いと、ほかのサロンから容易にヘッドハンティングされてしまいます。
給与や待遇面だけでなく、働きがいや成長機会を提供することで、スタッフの満足度を高めましょう。
スタッフのキャリアパスを明確にして、目標を持って働ける環境を整えることがスタッフの引き抜きを防ぐことにつながります。
ほかにも、研修制度や資格取得支援などを充実させ、スタッフの成長をサポートすることで、定着率を高められるでしょう。

ヘッドハンティングは、する側もされる側も、慎重な判断が必要です。
サロンのオーナーはヘッドハンティングのメリットとデメリット、そして、法的リスクを十分に理解したうえで、必要な対応を講じましょう。


※本記事の記載内容は、2025年4月現在の法令・情報等に基づいています。