ウィルサイドコンサルティング合同会社

仕事と育児を両立する子どもの年齢に応じた柔軟な働き方とは?

24.11.12
ビジネス【労働法】
dummy

2024年5月に「育児・介護休業法」および「次世代育成支援対策推進法」が改正され、2025年4月1日から、段階的に施行されます。
今回の改正では、働く男女が仕事と育児・介護を両立するため、子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現する措置を講じるよう事業者に求めています。
そのため、事業者においては新たな制度の創設や対応が必要になる場合があり、従業員への周知や意向確認も行わなければいけません。
改正の内容をよく理解して、自社がどのような義務を負うことになるのか確認しておきましょう。

dummy

育児・介護休業法等改正の背景と改正の内容

日本では、多くの働く男女が仕事と育児・介護の両立に課題を抱えています。
厚生労働省が公表した女性正社員へのアンケート調査では「妊娠・出産を機に退職した理由」の1位が「仕事と育児の両立がむずかしくて辞めた」(41.5%)でした。
また、2021年度の育児休業取得率は、女性が約85%なのに対し、男性は約14%で、この数年で大きく上昇しているものの、いまだ低水準です。

こうした現状を踏まえ、働く男女がこれまで以上に仕事と育児・介護を両立できるよう、2024年5月24日に育児・介護休業法および次世代育成支援対策推進法の改正が国会で成立しました。
改正法は一部を除いて、2025年4月1日から施行されます。

育児・介護休業法および次世代育成支援対策推進法(以下、改正法)の改正の柱となるのは、以下の3点です。

(1)子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
(2)育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
(3)介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

今回は、特にすべての事業者に関係する(1)の「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」について、解説します。

近年は、子どもの年齢に応じて「フルタイムで残業をしない働き方」や「フルタイムで柔軟な働き方」を希望する労働者の割合が高くなっています。
これを受けて、改正法では「残業免除」の対象が拡大されました。
これまでは3歳未満の子どもを養育する労働者が、事業者に請求した場合に所定外労働の制限(残業免除)の対象となっていました。
改正後は小学校就学前の子どもを養育する労働者まで、その対象となります。

また、改正法の施行によって、事業者は、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に対して、職場のニーズを把握したうえで、柔軟な働き方を実現するための措置として、以下のなかから2つの措置を講じる必要があります。
労働者はその2つのなかから1つを選択して利用することができます。
そして事業者は、選択した措置について、個別の周知・意向確認を行う必要があります。

・始業時刻等の変更
・テレワーク等(10日/月)
・保育施設の設置運営等
・新たな休暇の付与(10日/年)
・短時間勤務制度

さらに、3歳未満の子どもを養育する労働者がテレワークを選択できるような措置を講じることが事業者の努力義務になります。
これらは、すべて労働者の「フルタイムで残業をしない働き方」や「フルタイムで柔軟な働き方」を実現するためのものです。

看護休暇の取得も範囲拡大と事由の追加

改正法では、子どもの看護休暇も見直されることになりました。
看護休暇とは、1年度のなかで、子ども1人につき5日を限度に看護休暇を取得できるというもので、これまでは小学校就学前の子どもを持つ労働者が対象でしたが、改正法では小学校3年生修了までに範囲が拡大されました。

さらに、看護休暇を取得する事由についても、これまでの子どもの「病気・けが」「予防接種・健康診断」に、「感染症に伴う学級閉鎖等」と「入園(入学)式・卒園式」が新たに加わります。
つまり、労働者は子どもの学級閉鎖や入園式・卒園式などでも看護休暇を取得できるようになるということです。

また、これまでは雇用された期間が6カ月未満の労働者は、労使協定の締結によって看護休暇の取得の対象から除外できましたが、改正後は除外できなくなります。
労使協定の締結によって看護休暇の取得の対象から除外できるのは、週の所定労働日数が2日以下の労働者だけに限られます。

事業者には、子どもを持つ労働者に対して、これまで以上の配慮が求められるようになります。
仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮も事業主の義務になりました。
これは、労働者が妊娠・出産を申し出たタイミングや、子どもが3歳になる前までのタイミングで、事業者は面談や書面交付などの方法により、対象の労働者に意向を聴取する必要が生じるというものです。

今回の改正法は、すべての子どもを持つ労働者と、その労働者を雇用している事業者に関係するものです。
厚生労働省のホームページなども確認しながら、必要な措置を講じるようにしましょう。


※本記事の記載内容は、2024年11月現在の法令・情報等に基づいています。