『現金商売』の事業者が注意したい税務調査のポイント
税務調査は納税者が申告した内容に誤りがないか確認するために行われます。
通常は「事前通知」といって税務署から連絡が来て、調査を実施する日を調整しますが、事前通知は義務ではないため、飲食業や小売業など顧客から直接現金を受け取る『現金商売』の場合は事前通知をせず、抜き打ちで調査が行われることもあります。
なぜなら、税務調査は現金が正しく計上されているか現場で確認する必要があり、現金商売の場合、事前に通知してしまうと数字のごまかしや改ざんができてしまう可能性があるためです。
今回は、現金商売の税務調査について解説します。
店舗にいきなり税務調査官がやってくる!?
『現金商売』とは、飲食業や小売業のように、商品やサービスを提供した対価として、顧客から直接現金を受け取る商売のことを指します。
そして、現金商売の大きな特徴は、お金の記録が残りづらいことにあります。
通帳に取引の履歴が残る振込などと比べると、現金での取引は履歴が残りづらく、売上を少なく計上するなど、帳簿の改ざんも容易にできるため、税務調査の対象になりやすいといわれています。
それでは、もし現金商売で税務調査が実施されることになったら、どのような点に気をつければよいのでしょうか。
まず、現金商売の税務調査は、店舗を中心に行われます。
調査の性質上、税務調査官(以下、調査官)は事前通知を行うことなく、抜き打ちで店舗を訪れることがあります。
一般的には営業時間外に調査を受けることになりますが、強制捜査ではなく、その多くが任意調査なので、どうしても都合が悪ければ、調査官と相談したうえで調査の実施を延期してもらうことも可能です。
ただし、現金商売の税務調査の目的は、現場でその日の現金の動きを確認することです。
基本的には抜き打ちであっても調査を受け入れなければいけません。
調査官の訪問を受けたら、事業者は正式な調査官かどうか把握する目的で、所属の税務署や氏名の確認や身分証明書の提示を求めてしっかりチェックしたうえで、店舗内に入ってもらいます。
調査には事業者の許可が必要になるため、事業者は必ず立ち会う必要があります。
また、その際には顧問税理士にも連絡して、立ち会ってもらうのが望ましいでしょう。
調査は税理士が到着するまで待ってもらいます。
調査では、レジロールや領収書の控え、売上伝票などの記録と、実際にレジや金庫に保管されている現金を照らし合わせ、お金の動きにおかしなところがないか調べます。
また、売上の記録も入念に調査されます。
たとえば、申告している売上に対して、領収書の控えの枚数やレジの履歴が合わないと、脱税を疑われてしまうので注意が必要です。
『現金実査』で疑われないために大切なこと
一度、調査官に脱税を疑われてしまうと、細かい部分まで入念に調べられますが、適正に現金が管理できていれば、そこまで煩雑なことにはならず、比較的スムーズに調査が終了します。
大切なのは、日頃から正しい現金管理を行なっておくことです。
現金の額と帳簿や伝票が一致しているかどうか、現金をどのように保管しているのかなどを調査することを『現金実査』と呼び、現金商売の税務調査では必ずこの現金実査が行われます。
そして、現金実査で疑われないためには、帳簿や伝票と現金残高に差が生じないようにすることが重要です。
差が生じている日数が多ければ多いほど、調査官に疑われることになるため、帳簿や伝票と現金残高は毎日一致させるようにしましょう。
特に現金商売では、伝票の書き損じや、帳簿の書き忘れなどが起きがちです。
忙しくて手が回らず、現金を受け取ったものの、レジに打ち込むのが後回しになってしまうケースなどもありえます。
意図せず売上をごまかしてしまうことにもなりかねないので、現金を受け取ったら、すぐにレジに打ち込んだり、伝票に記入したりするなどして、その都度、売上を記録するようにしましょう。
また、その日の営業が終了したら、現金残高と帳簿残高を突き合わせて、差額が出た場合は、その原因を突き止める必要があります。
その日の現金売上は毎日、口座に入金すると同時に、現金出納帳などに記入し、記録として残しておきましょう。
現金に関してはもちろんですが、ほかにも在庫や仕入れ、経費の計上なども細かく調査されます。
特に個人商店では、個人的な支払いをレジに入っているお金で済ませてしまうなど、事業とプライベートの支出があいまいになりがちです。
顧問税理士などにも相談しながら、いつ税務調査が行われても問題のないよう、すべてにおいて適正な現金管理を行うことが大切です。
※本記事の記載内容は、2024年10月現在の法令・情報等に基づいています。