佐々木税理士事務所

労使協定の締結などに関わる『過半数代表者』の正しい選出方法

24.04.09
ビジネス【労働法】
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従業員と労使協定を結ぶ際などには、従業員の過半数で組織する労働組合から意見を聞く必要があります。
そして、もし会社に組合がなければ、従業員のなかから『過半数代表者』を選出してもらうことになります。
過半数代表者とは、従業員の過半数を代表する者のことを指します。
しかし、過半数代表者の選出方法が適正ではないと、締結した労使協定や変更した就業規則が無効になる可能性があります。
労働法に基づく正しい過半数代表者の選出方法を理解しておきましょう。
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従業員の主導で選ばれる過半数代表者とは

労働基準法により、法定労働時間は原則1日8時間以内、1週間に40時間以内と定められています。
これを超えて従業員に労働させる場合は、使用者と従業員との間で、労働基準法第36条に基づく労使協定、いわゆる『36(サブロク)協定』を結ばなければいけません。

また、36協定以外にも1カ月または1年単位などの変形労働時間制に関する協定や、フレックスタイム制に関する協定、事業場外労働に関する協定や代替休暇に関する協定、賃金控除に関する協定など、多くのケースで従業員との労使協定の締結が必要になります。

常時10人以上の従業員を使用する事業場では就業規則を定める義務があり、この就業規則を作成したり変更したりする場合も、本来はすべての従業員の意見を聞くことが望まれます。
しかし、使用者である事業者側が全従業員と協定を結んだり、意見を聞いたりすることは現実的ではありません。
そこで、労使協定を締結したり、就業規則を変更したりする場合は、過半数の従業員で組織する労働組合か、組合がない場合は『過半数代表者』を選出して、やり取りをすることになります。

労働組合は全国に約2万3,000組合ほどありますが、事業規模が99人以下の企業における労働組合のある割合は0.8%ほどなので、多くの中小企業では過半数代表者が労使協定や就業規則に関わる当事者となります。

この過半数代表者を決める際に注意したいのが、選出方法です。
過半数代表者は従業員の過半数を代表することになるため、従業員のなかから選んでもらう必要があります。
会社が代表選出の手続きに関与したり過半数代表者を指名したりしてはいけません。
会社の意向に基づいた過半数代表者と結んだ労使協定は、無効になります。
たとえば、使用者が指名した場合や、社員の親睦会の幹事などを自動的に選任した場合なども、労使協定を結ぶために選ばれたとはいえないため、過半数代表者とは認められません。
また、労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者も経営者側の立場とみなされ、過半数代表者になることはできません。
ここでいう管理監督者は、労働条件の決定や労務管理について経営者と一体的な立場にある人のことで、肩書や職位でなく、その職務内容や責任と権限などの実態によって判断されます。

全従業員が参加して民主的な方法で選出

過半数代表者は、従業員一同による投票や挙手、もしくは話し合いや持ち回り決議など、従業員の過半数がその人を選んだことがわかるような民主的な方法で選出します。
ただし、すべての従業員に対して過半数代表者の選出に関するメールを送り、返信のない人を信任(賛成)したものとみなす方法は、過半数が支持しているとはいえない場合があるので注意が必要です。

また、過半数代表者はすべての従業員の過半数を代表することになるため、選出には正社員だけでなく、パートやアルバイトなどにも参加してもらう必要があります。
会社は選出に関与してはいけませんが、意見の集約に必要な社内メールや、事務スペースの提供などは必要に応じて行うようにしましょう。

選出において、過半数代表者が適正な方法によって選ばれたことを証明するために、会議の議事録や投票記録などを提出してもらいましょう。
同時に、選ばれた過半数代表者が管理監督者ではないことを示すため、そのときの労働条件なども記録しておくことをおすすめします。

そして、使用者が特に注意したいのは、過半数代表者に対する取り扱いです。
過半数代表者であることや、過半数代表者になろうとしていたことを理由に、当該の従業員に対して、解雇や降格、減給などの不利益な取り扱いをしてはいけません。

使用者は過半数代表者が従業員の過半数を代表する者であることを意識しながら、労使協定や就業規則に関するやり取りを進めていきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年4月現在の法令・情報等に基づいています。