佐々木税理士事務所

『130万円の壁』、条件つきで2年間は扶養のままってホント?

24.01.30
ビジネス【労働法】
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日本では労働の中心を担う生産年齢人口が減り続けており、各企業でも労働力の確保が大きな課題となっています。
そこで、政府は企業の人手不足の解消を目的に、『130万円の壁』への対策を打ち出しました。
130万円の壁とは、100人以下の企業で働いている被扶養者の年収が130万円を超えてしまうと扶養から外れ、自身が国民年金や国民健康保険料に加入しなければならなくなることを指します。結果として、手取りが減ってしまいます。
2023年10月からは、被扶養者が働く時間を抑えることがないよう、130万円を超えても扶養から外れないようにする「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」がスタートしました。
被扶養者を雇用している事業主に必要な対応を把握しておきましょう。
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130万円の壁の問題になっているポイント

厚生年金や健康保険に加入している配偶者等の扶養に入っている「被扶養者」は、社会保険料を支払わなくても、保険診療を受けたり、年金を受給したりすることができます。
しかし、被扶養者がパートやアルバイトとして働いた場合に、一定の年収を超えると、扶養から外れてしまうことがあります。
扶養から外れると、被扶養者ではなくなり、みずから社会保険料を支払わなければいけません。
扶養から外れてしまう要件はさまざまありますが、これまで特に問題視されていたのが130万円の壁でした。

従業員100人以下の企業で働くパートやアルバイトなどの被扶養者が年収130万円を超えると、配偶者等の扶養から外れ、自身の勤務先の社会保険に加入するか、国民健康保険や国民年金に加入しなければいけません。
国民健康保険の保険料は、前年度の所得や自治体によって異なりますが、国民年金の保険料は月額16,520円で、それらが給与から引かれるため、手取りが130万円から減ってしまうことになります。
扶養から外れて手取りを減らさないために、130万円を超えないように働く被扶養者が大多数です。

人手不足や繁忙期の企業では、被扶養者であるパートやアルバイトに働く時間を増やしてもらいたいところですが、被扶養者としては労働時間を調整して、収入が上がるのを避けなければなりません。
結果として事業主は、長時間で働けない被扶養者の代わりに正社員の労働時間を調整したり、新たな人材を確保したりといった負担がかかることになります。

こうした問題を解消するために、政府は130万円の壁などを意識せずに働くことができる措置を講じました。
その一つが、『事業主の証明による被扶養者認定の円滑化』です。

この取り組みは、被扶養者の年収が130万円を一時的に超えても、事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることができるというものです。
これまでも過去の給与などに基づき、一時的に130万円を超えても、過去の課税証明書や給与明細書を提出することで、扶養から外れないようにすることはできました。しかし、今回の施策によって、より簡単に被扶養者が扶養に留まることができるようになります。

一時的なら130万円超えも場合により2年まで扶養に

今回の措置では、事業主が一時的な収入増であることを証明することで、被扶養者は年収が130万円を超えても、連続して2年間(年1回の収入確認をする場合)は引き続き配偶者等の扶養に入ることができます。

ただし、注意したいのは、あくまで収入増が一時的なものであるということです。
人手不足や仕事量の増加によって、労働時間を延長することになった場合など、扶養に留まれるのは、一時的な収入変動に限定されます。
たとえば、被扶養者の基本給の額を上げたり、手当を増やしたりすることによる収入増は、措置の対象になりません。
ほかにも、被扶養者が同一世帯に属した被保険者の収入を上回っている場合は、扶養から外れることになるので注意が必要です。

事業主の証明による被扶養者認定の円滑化で必要となる証明書は、厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。
事業主の欄に必要事項を記入し、必要な被扶養者に渡しましょう。

また、政府は「130万円の壁」以外に「106万円の壁」の問題についても、対策を打ち出しています。
106万円の壁とは、従業員101人以上の企業で被扶養者の年収が106万円を超えると、厚生年金や健康保険に加入する必要があり、手取りが減ってしまう状況のことを指します。
政府は、2023年10月20日よりキャリアアップ助成金『社会保険適用時処遇改善コース』の手続きを開始、被扶養者の手取りを減らさない取り組みを行なった事業者に、労働者一人当たり最大50万円の助成を行うことを発表しました。

こうした「年収の壁」への措置は、2025年に予定されている年金制度改正までの暫定的なものとなります。
今後、政府が年収の壁の問題にどのように対応するのか、注視していきましょう。


※本記事の記載内容は、2024年1月現在の法令・情報等に基づいています。