佐々木税理士事務所

故意ではなくても『施工管理技術検定』の不正受検に注意

23.12.05
業種別【建設業】
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現場を統括する主任技術者や監理技術者になるには、施工管理技術検定に合格して『施工管理技士』という国家資格を取得する必要があります。
しかし、一定の実務経験が必要な検定において、この実務経験の年数を虚偽申告して受検する、いわゆる『不正受検』がこれまでにも大きな問題となっていました。
会社が受検資格を満たしていないことを知りながら従業員に受検を指示することはもちろん、知らずに受検させることも不正受検となり、会社がペナルティを受けることもあります。
施工管理技術検定の内容や不正受検の現状、確認しておくべき内容について解説します。
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施工管理技士の工種と級種、検定の試験区分

施工管理技士の資格を取得するための施工管理技術検定は、工事の種類によって以下の7種目に分かれており、それぞれ1級と2級の区分があります。
2級は一部の種目がさらにいくつかの種目に分かれています。

●建設機械施工 1級・2級(第1種~第6種)
●土木施工管理 1級・2級(土木、鋼構造物塗装、薬液注入)
●建築施工管理 1級・2級(建築、躯体、仕上げ)
●電気工事施工管理 1級・2級
●管工事施工管理 1級・2級
●電気通信工事施工管理 1級・2級
●造園施工管理 1級・2級

2級の合格者は施工管理技士の有資格者として、すべての工事現場に配置が必要な主任技術者になることができます。
また、1級の合格者は同じく有資格者として、請負額が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)以上の工事現場に配置される監理技術者になることができます。

主任技術者や監理技術者の配置は、建設業法によって定められた義務となるため、工事を行う建設業者は施工管理技士を確保しなくてはいけません。
そこで、建設業者のなかには従業員に受検を指示し、施工管理技士の資格を取得させるケースもあります。

施工管理技術検定は、1級・2級ともに学科試験に相当する第一次検定と、実地試験に相当する第二次検定があり、第一次検定に合格するだけでも『施工管理技士補(技士補)』という資格を得ることができます。
技士補は2021年に創設された施工管理技士を補佐するための資格で、1級の技士補であれば、監理技術者の代わりに工事現場に配置することが可能です。
2級の技士補は資格を取得しても実務的に変わりはありませんが、第二次検定の受検資格を得ることができます。

いずれにせよ、施工管理技士や技士補の資格を取得するためには、施工管理技術検定を受検する必要があり、なかでも受検資格について注意が必要です。
2級の第一次検定は、17歳以上であれば学歴や実務経験を問わずに誰でも受検することができます。
しかし、2級の第二次検定と1級の検定を受検するには、学歴や修了した学科に応じた実務経験が必要です。

実務経験を虚偽する不正受検が起こる背景

施工管理技術検定を受検するには、実務経験の年数が重要になります。
たとえば、大卒者が土木科などの指定学科で学んでいれば、実務経験1年以上で2級の第二次検定を受検することができます。
しかし、指定学科で学んでいない高卒者は、4年6カ月以上の実務経験を積まなければいけません。
1級になると、さらにその差は広がります。指定学科で学んだ大卒者は卒業後3年以上の実務経験があれば受検できますが、指定学科で学んでいない高卒者は、実に11年6カ月以上もの実務経験が必要になります。

そのため、常に人手不足の建設業界では、経験の浅い従業員でも実務経験の年数を虚偽申告して受検させるケースが多発しました。
事態を重く見た管轄の国土交通省は、ペナルティの強化や、実務経験の証明方法、試験問題の見直しなどを検討しています。

また、実務経験の算定の不備も頻出しています。
ある大手住宅総合メーカーのケースでは、資格保有者4,189人のうち357人が、実務経験の要件を満たさずに不正受検していたことが判明しました。
別の建設会社のケースでは、社員65名(退職した社員含む)が保有する施工管理技士の資格について、受検時における実務経験の不備があったことがわかっています。

建設業者として気をつけたいのは、故意ではないものの、実務経験の要件を理解しておらずに不正受検になってしまうケースです。
実務経験の年数の計算は細かく規定されており、会社側がよく把握しないまま、従業員が受検に必要な実務経験を満たしていると思い込んで、不正受検に至ってしまうことがあります。

具体的には、実務経験とは認められない工事を実務経験としてカウントしていたり、複数の工種が含まれる工事の実務経験を合算で計算していたりする場合です。
たとえば、建築施工管理の施工管理技士であれば、道路工事やトンネル工事など、建築工事以外の工事は、実務経験として認められていません。
複数の工種が含まれる工事の実務経験は、合算ではなく、いずれかの工種の実務経験として算定することになります。
また、建築工事を請け負った際に、そのなかの電気工事を下請けに出している場合は、建築工事を実務経験として年数に計上することはできますが、電気工事を実務経験に数えることはできません。

このように、施工管理技術検定の受検資格はとても複雑で、故意ではなくても間違えて受検してしまう可能性があります。
こうした勘違いが起きないように、受検者はもちろん、事業者側も施工管理技術検定の手引をよく読み、実務経験の要件を正確に理解したうえで実務や検定に取り組むことが重要です。


※本記事の記載内容は、2023年12月現在の法令・情報等に基づいています。