佐々木税理士事務所

雇用のヒントに! 変わりつつある日本企業の雇用形態

23.11.28
ビジネス【労働法】
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コロナ禍の影響を大きく受け、この数年で企業における従業員の雇用形態にも変化がみられるようになりました。
日本には正社員、派遣、パート、アルバイトなどさまざまな雇用形態がありますが、現状では非正規雇用労働者が全体の約4割を占めているといわれています。
今回は、非正規雇用労働者が増加した背景を確認しながら、労働者にとって変わりつつある雇用に対する意識と、企業にとって有用な雇用形態について考察します。
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働く人の約4割が非正規雇用労働者

厚生労働省の2023年度第1回雇用政策研究会の参考資料『足下の雇用・失業情勢や働き方等の変化について』によると、正規労働者・非正規労働者ともに増加傾向にあります。
特に、勤め先でパート、アルバイト、派遣社員、契約社員、委託などと呼ばれる、いわゆる『非正規労働者』は2010年以降増加が続き、一旦2020年で減少を見せましたが、2022年は対前年比で26万人と急増しています。
現在では役員を除く雇用者に占める非正規雇用労働者の割合は、全体の約4割です。

非正規労働者の数が増えた理由は、労働供給側である企業および労働需要側である労働者それぞれに要因があります。
まず、2001年以降、人件費の削減や雇用調整という目的で労働供給側である企業の雇用形態に、非正規雇用を活用する動きが強まったという背景があります。
その結果、一般的なパートタイム労働者(パートタイマー、アルバイト)や派遣労働者、契約社員(有期労働契約)以外の、業務委託(請負)契約を結んで働く人、家内労働者、自営型テレワーカーといった、時間や場所を選ばすに働ける職種が増えました。

コロナ禍によるリモートワークの推奨やワークライフバランスを重視した働き方など、人々の就業形態や労働意識が変わってきたことも、非正規労働を選択する人が増えた理由といえるでしょう。

現在の日本にある雇用の形を理解する

次に、現在の日本企業で導入されているさまざまな非正規雇用の形態を見ていきましょう。

(1)派遣労働者
労働者が人材派遣会社(派遣元)との間で労働契約を結んだうえで、派遣元が労働者派遣契約を結んでいる会社(派遣先)に労働者を派遣し、労働者は派遣先の指揮命令を受けて働きます。なお、給与は法律上での雇い主である人材派遣会社から支払われます。

(2)契約社員(有期労働契約)
正規労働者(正社員)と異なり、労働契約にあらかじめ雇用期間が定められている場合があります。

(3)パートタイム労働者
1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されている正規雇用労働者(正社員)と比べて短い労働者を指します(「パートタイマー」や「アルバイト」など呼び方は異なっても、この条件を満たせばパートタイム労働法上のパートタイム労働者となります)。労働時間によって、労働保険や社会保険の適用、年次有給休暇の扱いが変わります。また一般的に、福利厚生などは正規雇用労働者(正社員)と異なります。

(4)業務委託(請負)契約を結んで働く人
正規雇用労働者をはじめ、これまで紹介した(1)~(3)の働き方は労働者として労働関係法令の保護を受けることができます。一方、業務委託や請負といった形態で働く場合には、注文主から受けた仕事の完成などの成果に対して報酬が支払われるため、注文主の指揮命令を受けない事業主として扱われ、基本的には労働者としての保護を受けることはできません(ただし、業務委託や請負といった契約をしていても、その働き方の実態から労働者であると判断されると労働関係法令の保護が受けられる場合もあります)。

(5)家内労働者
委託を受けて物品の製造や加工などを個人で行う人であって、その業務について同居の親族以外の者を使用しないことを常態とするものを指します。家内労働法が定められており、事業主として扱われます。

(6)自営型テレワーカー
注文者から委託を受け、インターネットなど情報通信機器を活用して主に自宅または自宅に準じたみずからが選択した場所において、成果物の作成または役務の提供を行う人を指します(法人形態により行なっている場合や他人を使用している場合などを除きます)。

このように労働契約や、労働時間、労働場所などにより、さまざまな種類の非正規雇用の形態があります。

非正規労働者を活用するメリットデメリット

では、企業にとって非正規雇用労働者を活用することで、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
大きなメリットの一つは、高度な知識や専門技術を持つ即戦力となる労働力を確保できることです。
また、非正規雇用には正規雇用労働者(正社員)と比較して手厚い福利厚生を用意する必要がないため、人件費の削減につながるのもメリットといえます。

一方で、非正規雇用労働者ばかりを利用すると、知識や技術といった会社の資産が社内に蓄積されにくくなったり、それらが社外へ流出してしまったりというデメリットがあります。
自社で雇用している従業員であれば、育成することで会社の資産につながります。
しかし、非正規雇用の場合は「いつ退職や転職をされるかわからない」、契約によっては「一つのプロジェクトが完結すれば契約終了」となるため、後継者が育ちにくい環境になりがちです。
このようなことから仕事を限定してしまうことに繋がり、正規雇用労働者と比較すると、高度な知識や専門技術を持つ即戦力の確保という目的とかけ離れてしまうことがデメリットといえるでしょう。

非正規労働者の雇用は、企業側・労働者側の意向が合致してこそ多くのメリットを生み出すものといえます。
多様な働き方を自社の労働環境や事業内容やその時の目的にあわせて上手く取り入れることができれば、新たな労働力の確保につながるでしょう。


※本記事の記載内容は、2023年11月現在の法令・情報等に基づいています。