佐々木税理士事務所

歯科医院の開業に必要な事業計画書のつくり方

23.04.04
業種別【歯科医業】
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銀行や日本政策金融公庫などの融資を受ける際に必要なのが『事業計画書』です。
開業には医院の賃料や、設備費、人件費など多額の資金が必要であり、金融機関から融資を受けるのが一般的です。
そのため、事業計画の見積もりが甘いと、審査が通らない場合もあります。
事業計画は開業時以外にも、分院などのために追加融資を受けたり、経営の見直しの際にも必要になります。
金融機関の審査を受ける際に必要な事業計画書の書き方を確認しておきましょう。
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事業計画書では開業予定地と初期費用が重要

事業計画書とは、いわば開業する歯科医院の設計図です。
開業準備で忙しいからといって適当な事業計画書をつくってしまうと、金融機関の審査に時間がかかったり、希望額の融資が受けられなかったりすることがあります。
新たな一歩を踏み出すためには、説得力のある適正な事業計画書が不可欠です。

では、どのような事業計画書を作成すればよいのでしょうか。
事業計画書は、開業予定地や従業員数などの『計画概要』と、初期費用や運転資金などの『費用』、そして開業までの『スケジュール』で構成されています。
計画概要のなかでも、開業予定地はそのエリアにおける外来患者数を割り出す『診療圏分析』の基準となるため、金融機関による審査では特に重視されます。
たとえば、小児歯科に力を入れているのであればファミリー層の多い新興住宅地、会社帰りのビジネスパーソンをターゲットにするのであれば利便性の高い駅前を開業予定地にするなど、歯科医院の方針とニーズが合致した場所を選ぶことが重要です。

また、費用面では最初に初期費用を計算しておく必要があります。
歯科医院の開業には、賃料や契約金などの物件費用のほか、人件費や医療機器などの設備費、宣伝広告費や求人費、場合によっては医院の内装・外装の工事費も必要になります。
開業にかかる金額を計算することで、金融機関からどのくらい借り入れればよいのか、おおよその金額が見えてきます。

開業する場所や購入する器材によっても異なりますが、一般に歯科医院開業には5,000~7,000万円以上の資金が必要だと言われています。
例として、その内訳を示すとおおよそ以下のようになります。

家賃等に係る費用:750~1,000万円
内装・外装費:1,500~2,000万円
歯科器材費:2,000~3,000万円
治療器具・材料費:150~200万円
事務関係設備費:100~200万円
広告宣伝・人材募集費:100~200万円
当面の運転資金:1,000万円以上

このとき、初期費用にどのくらい自己資金を投じられるのかも割り出しておきましょう。
自己資金が多ければ多いほど、金融機関からの融資は受けやすくなります。
融資額はもちろん、金利や返済期間は、さまざまな条件を加味して決められます。
自己資金が多ければ、返済能力が高いとみなされ、融資も受けやすくなるのです。

もちろん、自己資金が少ないからといって融資が受けられないわけではありません。
しかし、歯科医院を開業するには初期費用の2割ほどを自己資金でまかなうのが一般的といわれています。
たとえば、初期費用の見積もりが5,000万円であれば、1,000万円は自己資金を用意しておきたいところです。


事業の見通しは、現実的なプランを踏まえて

開業にあたり検討すべきことのなかには、運営が軌道に乗るまでの運転資金と、事業の見通しも重要事項としてあります。
たとえば、保険診療では患者の窓口での自己負担分は多くの場合、医療費の3割で、残りの7割は2カ月後に国民健康保険連合会や社会保険支払基金から振り込まれます。
つまり、開業して約2カ月は、自由診療以外は患者の窓口負担分しか現金収入が得られないため、当座の運転資金を確保しておく必要があります。

事業の見通しは、売上高や売上原価(仕入高)、経費などを見積もり、概算で利益を割り出します。
このとき、希望的観測で見通しを立てないよう注意しましょう。
患者が定着しなかったり、自由診療の割合が低かったりするのはよくあることと考え、常に最悪のケースを想定しておくことが重要です。
たとえば、文部科学省の学校保健統計では、虫歯に関しては昭和40~50年代をピークに減少傾向が続いており、平成30年には中学・高校で過去最低となるなど、患者数自体にも減少傾向が見受けられます。
事業計画ではこうした経営に対するマイナス要因も踏まえた見通しや計画を示し、それを支える資金計画をつくることが大切です。

ただし、事業の見通しは金融機関の査定時にもチェックされるので、あまり悲観的な見通しもよくありません。
前述の例でいえば、従来の虫歯治療中心の医療から、虫歯になる前にケアをしていく予防治療へ比重を移すといった見通しを示すことで、事業の将来性を示すことができるかもしれません。
あるいは、介護や医療に依存しないで、自立して過ごすことができる『健康寿命』への関心が高まるなか、歯周病ケアや高齢者への口腔ケアにおける可能性を示すといった方向性もあるでしょう。
現実に即した見通しを立てつつ、将来性を示すことがポイントです。

計画概要や費用を記入できたら、あとは開業までのスケジュールを立てます。
工事や機材の搬入などで時間がかかることもあるため、余裕を持たせたスケジュールの組み方をしていきましょう。

事業計画書は、時間をかけてでも完成度の高いものにしなければなりません。
もし、時間的な余裕がなかったり、計画に不安があったりするのであれば、歯科医院の開業を得意とする税理士や、開業支援を行っている歯科医療機材の業者などに作成を依頼するという方法もあります。
専門家の作成した事業計画書は融資が通りやすくなるなどのメリットもあるため、選択肢の一つとして検討してはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2023年4月現在の法令・情報等に基づいています。