佐々木税理士事務所

火災リスクの高い飲食店、防火のための安全管理を見直そう!

21.08.03
業種別【飲食業】
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飲食店は火を扱うことが多く、油汚れも多いことから、潜在的な火災リスクが高い業種です。
仕込みのためにコンロの火をつけっぱなしにしてその場を離れることも、よくあるのではないでしょうか。
防火には、日常的な安全管理が大切です。
今回は、飲食店で火災が起きる原因や、火災を出さないための具体的な対策について、消防庁の資料をもとに解説していきます。
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飲食店での火災は、目を離した隙に起こる

東京消防庁によると、管内での火災発生件数は年々減少傾向にあるなかで、飲食店からの火災件数は増加傾向にあり、その約半数は厨房設備などから出火しています。(出典:『飲食店の厨房設備等に係る火災予防対策ガイドライン』(2017年))

出火原因としては、火を『放置する・忘れる』というケースが30%で最も多く、調理中に火をかけたまま、その場を離れた結果、火災に至ってしまうケースが目立つそうです。

さらに、厨房設備を適切に維持管理していない場合にも、火災予防上のリスクが高まります。
排気ダクトなどの付属設備は、普段目に入りづらく触れることもないため、つい清掃が後手に回りがちです。
そのため、放っておくと、この排気ダクトなどに多量の油脂などが溜まることがあるのです。
排気ダクトはもともと不燃材料でできていますが、吸い込んでたまっていた油脂分を放置していたがために、火がついて一気に店舗まで延焼してしまうようなケースもあります。
排気ダクトなど、見えにくい場所の清掃や管理は、火災防止に非常に重要だということは、押さえておいた方がよいでしょう。


大事なのは安全管理と従業員教育

東京消防庁のガイドラインでは、火災の発生原因となりやすい、厨房設備に関連する火災の現状や予防対策などについて、説明しています。

たとえば、厨房付属設備に関する点検表を見てみると、天蓋、グリス除去装置、排気ダクト(天蓋部から目視できる部分・できない部分)、防火ダンパー、排気ファン・たわみ継手と、細かい部位ごとに、清掃の必要な時期を判断するための点検の要点を紹介しています。
もし天蓋であれば、以下のような部分を目視で確認するとよいでしょう。

●内面にワックス状の油塵(油の混じったほこり)などの付着がないか
●変形、損傷、腐食などがないか
●樋に油脂分などの溜まりがないか
●オイル抜きのプラグからの油漏れがないか

ほかにも、ガス付近には可燃物を置かない、火を使っている時は絶対に放置しないなど、火をうかつに扱わないようにすることが重要です。

特に最近では、アルバイト従業員によるワンオペ店舗も増加しており、従業員への防火教育や意識の向上、点検・清掃などの火災防止対策を、日頃から徹底しておく必要があります。
実際に現場で働くスタッフには、『飲食店は常に火災のリスクが高い』と認識させ、危険を防止するという視点を持ってもらうようにしましょう。


実際にどのようなシーンで火災が起きているか

飲食店の火災は厨房設備からの出火が多いのですが、次に多いのが、コンセントや差し込みプラグなどの電気設備です。
コンセントがしっかり差し込まれていなかったり、接続部分が固定されていなかったりなど、少しの不注意が、大きな火災に発展することもあります。

また、七輪や炭火ロースターなど、客席に備え付けている調理機器や、提供直前に火を付けるタイプの固形燃料を使った料理、喫煙所などでお客が残したタバコにも、注意が必要です。
昨今では、新型コロナウイルスの感染対策で、アルコール消毒器を設置する飲食店も増えていますが、このアルコールもまた、可燃性が高いので、火のそばに置かないように気を付けましょう。

飲食店の火災は、圧倒的に人為的不注意によるものが多いため、まずはこの『うっかり』をなくすことが一番の対策といえます。
万が一、火がついてしまった場合も、排気ダクトなどの清掃を徹底していればすぐには延焼しません。
清掃・点検はなるべく小まめに行いましょう。

また、実際にどのような火災が起きているのかを知っておくことも火災予防に役立ちます。
以下に、いくつか例をあげてみましょう。

(1)フライパンで油を熱している隙に、離れた冷蔵庫から食材を取り出していた最中、フライパンが熱くなりすぎて出火
(2)鍋の廃棄油に凝固剤を入れ、火にかけている間に洗い物をしていたら、油が熱くなりすぎて出火
(3)コンロ付近に洗った布巾を広げて乾かしていたが、火のついたコンロに落下して引火
(4)コーヒーメーカーに繋いでいた延長コードの変換プラグ接続部分が、異常加熱を起こして出火
(5)長年掃除やメンテナンスを怠っていたガス給湯器のフィルターが、ホコリや油などで目詰まりを起こして出火

いずれも、適切な管理を怠らなければ防げた事例であるといえます。

小さなところにも火災の危険は潜んでいます。
火を扱う飲食店は危険と隣り合わせであることを意識して、日々の業務に取り組んでいくことが大切です。


※本記事の記載内容は、2021年8月現在の法令・情報等に基づいています。