佐々木税理士事務所

設備や患者を引き継げる医院承継のポイントとは

21.06.01
業種別【医業】
dummy
医院を開業する際に自分で場所を確保して機器などを揃える方法と、既存の医院を引き継ぐ、いわゆる『医院承継』と呼ばれる方法が存在します。
親族のなかに開業医がいる場合は親族間での承継になりますし、第三者への承継も可能です。
医院承継には開業のコストを抑えられるほかに、医療設備や地域の患者を引き継げるなどのメリットもあります。
一方で、老朽化した設備の入れ替えなどが必要になる場合もあります。
今回は、スムーズに医院承継を行うためのポイントを説明します。
dummy
既存の医院を譲り受けるメリット

社会の少子高齢化が加速するなか、医療業界においても医師の高齢化が進んでいます。
医師には定年がありませんし、体が動く限り診療を続けるという人もいますが、記憶や判断力の衰えとともに、リタイアを考える医師も少なくありません。
個人の開業医にとっては、自分が引退した後の医院の取り扱いは悩みの種でもあるでしょう。
一方、これから新規で医院を開設しようと考えている医師にとって、ゼロからの開業は時間もコストもかかり、容易なものではありません。
特に開業直後は何かと費用がかさむものなので、できる限り低コストで開業したいというのが、医師の本音ではないでしょうか。
そのようなとき、医院承継は双方にとって有効な手段といえます。

医院承継であれば、これまでの医院の実績から今後の事業計画が立てやすいという利点もありますし、今まで診てきた患者も引き継ぐことになるため、集患に困ることも少ないでしょう
場合によっては、看護師などの有資格者を引き継ぐこともできるので、新たにスタッフを雇用する必要もなくなります。
さらに、その医院をかかりつけ医として頼りにしていた地域の人々に、安心を提供できるというのも、大きなメリットだといえるでしょう。


リスクを回避して医院承継を成功させるには

ところで、費用もリスクも最小限に抑えられる医院承継ですが、メリットばかりではありません。
まず、院長となって新たにスタートする暁には、医院全体をリフレッシュさせる必要があります。
医療機器が老朽化している場合には、新しい機器と入れ替えなければいけませんし、建物自体が古ければ、リフォームをする必要が出てくるかもしれません。
また、医院を譲り渡す際、対価の支払いが不要だとする医師もいますが、基本的には譲り受けた側が承継した財産の対価を支払うことになります。

ほかにも、前の医師の診療方針と合わなかったり、前の医師の治療方法が特殊だったりした結果、医療内容を引き継ぐのに手間どってしまい、患者が離れてしまう可能性もあります。

スムーズに引き継いだとしても親の代から診療を受けている患者から、親と比較されてしまうこともあるでしょう。
第三者間でも親子間でも、医院承継を検討する際は、新規開業と比較したメリットとデメリットをよく見極める必要があります。

また、第三者間の医院承継は、承継する側もされる側も、個人でマッチングすることは難しいため、ほとんどの場合は仲介業者に依頼することになります。
承継する側は、契約した仲介業者が用意した承継先の候補から、条件にあった医院を紹介してもらい、情報の開示や医院の内見、さらには承継先の医師との面談などを行いながら、条件を詰めていきます。

医院を承継した後にリスクが顕在化することもあるため、承継先の医師や仲介業者とよく話し合い、費用面や懸念事項などについて確認しておきましょう。

医院承継は、自分が作りあげてきた診療所を引き継いでもらいたい医師と、新たに開業したい医師のどちらにも利益がある方法です。
双方にとって実りある承継になるように、事前にしっかりと意思のすり合わせを行うことが大切です。


※本記事の記載内容は、2021年6月現在の法令・情報等に基づいています。