佐々木税理士事務所

インターネット上の発信行為に名誉毀損があったら?

20.04.24
ビジネス【法律豆知識】
dummy
インターネットを通じて手軽に情報発信ができるようになったことから、SNSや口コミサイト、ネット掲示板などで誹謗中傷がなされるといった事例が後を絶ちません。
被害を受ける可能性は誰にでもあり、また、思わぬところで加害者となってしまうこともあるかもしれません。
今回は、インターネット上の誹謗中傷によって生じる法的問題について紹介します。
dummy
どのような場合に名誉毀損となるのか?

法律論において『名誉』とは、端的にいうと、人が社会から受ける客観的な評価のことを指します。
そして、外部から受ける“客観的な社会的評価を低下させる行為”が『名誉毀損』ということになります。
したがって、Web上でなされた誹謗中傷行為には、刑事上の名誉毀損罪(刑法230条1項)、民事上の不法行為(民法709条)が成立する可能性があります。

名誉毀損が成立するか否かは、一般人がその表現を普通に読み取ったときにどのように解釈をするかという視点で判断されます。
実際に人の社会的評価を低下させたという結果を生じさせる必要はなく、社会的評価を低下させる危険性を生じさせただけで足ります。
もしかしたら、名誉毀損と評価される行為の範囲は、思っている以上に広いものかもしれません。

なお、名誉毀損については、一定の場合には免責が認められています。
今回は詳細を省略しますが、免責が認められるためには、情報発信した内容が真実であると信じてしまった相当な理由・資料があったことの証明が必要であり、この証明のハードルは低くはありません。


名誉毀損を受けた場合、何ができるのか?

では、名誉毀損といえるような誹謗中傷行為を受けた場合、誰に対し、何を請求できるのでしょうか。
考えられるアクションとして、次のようなものがあげられます。

(1)発信内容の削除請求
情報発信者が判明している場合、その者に対し、名誉毀損を発生させている表現を削除するよう請求することができます。また、当該表現内容が発信・掲載されているSNSサービスや掲示板等の管理者・運営者に対し、掲載内容を削除するように請求することも可能です。事業者によって、任意に削除してくれる場合もあれば、裁判手続が取られれば削除してくれる場合もあるなど、対応は異なります。

(2)発信者情報の開示請求
情報発信者がそもそもどこの誰であるのか、不明な場合も多くあります。そのような場合、発信者を特定するために、当該発信行為がなされたインターネット掲示板の管理者やSNSサービスの運営者等に対して『発信者情報開示請求』を行うことができます。適切な裁判手続を行った場合には、大半のケースで発信者が誰であるか特定可能です。

(3)不法行為(名誉段損)に基づく損害賠償請求
情報発信者に対し、誹謗中傷行為によって生じた慰謝料その他の損害賠償請求を行うことができます。また、Webサービス等の運営者・管理者において直ちに削除等の対応をとらなかった場合には、管理者・運営者に対し損害賠償請求をするという方法もあります。

(4)刑事告訴
刑法上の名誉毀損罪に当たりうる行為ですので、内容が非常に悪質な場合には、民事上の責任追及だけでなく、刑事責任を問うように警察に働きかけることもできるでしょう。

このように、被害者の視点からすると、Web上の誹謗中傷行為に対しては、民事上・刑事上の責任追及が考えられます。

他方、加害者側から見ると、たとえ匿名で誹謗中傷をしたとしても、上記のように、適切な手続がなされた場合には発信者に関する情報は開示され、特定されます。
したがって、Webサービス等の利用にあたっては、誹謗中傷を伴う情報発信行為が名誉毀損にあたり、被害者からの法的な責任追及を受ける可能性があるということを意識しておく必要があるでしょう。


※本記事の記載内容は、2020年4月現在の法令・情報等に基づいています。