佐々木税理士事務所

確定申告の際に押さえておきたい! 飲食店の勘定科目と仕訳の基準

19.12.03
業種別【飲食業】
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確定申告では、正しく『経費』を振り分けることが大切です。
架空計上とみなされた場合、追徴課税が生じて、結果的に損をしてしまうこともあるからです。
一方、さまざまな出費のなかから上手に経費として計上することで、節税にもつながります。
ここでは、飲食店の帳簿でよく使われる勘定科目と該当する出費の内容について、詳しく見ていきます。
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仕訳の判断を誤ると追徴課税が生じる原因に

飲食店の帳簿でよく使われる勘定科目は、『売上』『仕入』『消耗品費』『水道光熱費』などさまざまです。
改装時に発生する高額な厨房設備費など一度『資産』として計上し数年に分けて『減価償却費』として計上していくものや、『損害保険料』『修繕費』といった科目は仕訳しやすいでしょう。

しかし、日々帳簿を付けていくなかで、それらの経費が“どの科目に属するのか?”と判断に迷うことも少なくありません。
たとえば、料理を待つお客さん用に、店内に新聞・雑誌を置いている場合は、何の経費に属するでしょうか。 
この場合は、お客さんが店内で快適に過ごすためのサービスとみなされるため、『サービス費』として計上できます。
お客さんのために用意する新聞や週刊誌が、たとえオーナーや従業員の趣味であっても、サービスの一環には間違いないため、安心して計上できます。
また、店内にタブレットを置き、デジタルで新聞・雑誌を読めるようにする経費も『サービス費』になります。
さらに、店内で流している有線放送の利用料や、おしぼり、エントランスに飾る季節の花なども同じく『サービス費』です。
『サービス費』は、店舗によって『販売促進費』という名目で計上することも多いようです。

ここで気をつけたいのが、架空計上とみなされ追徴課税となる事態、つまり“脱税”です。
何でもかんでも『サービス費』などにしてしまい、実際より多く計上してしまうと、“架空”の疑惑をもたれてしまいます。
基本的ではありますが、最も注意が必要なのが『領収書』の扱い。
領収書は、損金(収益から差し引くことのできる費用)とするための重要な証拠であり、確定申告の際のマスト資料です。


仕訳の際に間違いやすいポイントとは?

店舗を清潔に保つために必要な経費は、一般的に『衛生管理費』に振り分けるのが妥当です。
たとえば、定期的に業者へ害虫駆除を依頼する場合の経費などがあげられます。
『雑費』や『消耗品費』として分類しがちなのが、毎日の掃除に使うゴミ袋、数百円単位のモップや雑巾などの掃除用具、定期的に補充が必要な洗剤や石鹸などです。
しかし、これらも『衛生管理費』です。
飲食店の場合、これらの経費を『雑費』や『消耗品費』として扱ってしまうと、会計上不透明な処理とみなされてしまうことがあります。
大切なのは、仕訳を具体的な科目で表記すること
ただし、10万円以上で使用可能期間が一年以上の掃除用具を購入した場合は、資産計上をして数年に渡って『減価償却費』になるため、注意が必要です。
また、共益費や管理費、家賃に含まれている“メンテナンス”としての経費がある場合は、『地代家賃』に仕訳して記帳することもあります。
さらに重要なポイントとなるのが、“毎回同じ出費を、同じ科目に計上する”ということ。
申告する際、帳簿によって勘定科目が異なる飲食店に対し、税務署は『経理がずさんである』と判断します。
勘定科目の選択は、一貫したルールのもとで行うことが大前提です。


従業員に関する経費で“計上NG”の科目も!

従業員の健康保険や制服代、一定の慰安行事などの経費はすべて『福利厚生費』として計上できます。
では、アルバイトなどの従業員を抱える飲食店では、食事=まかない代も発生しますが、これらも計上して問題ないのでしょうか?
厳密には、まかない代は『給与』扱いまたは『福利厚生費』としての計上となりますが、給与扱いにした場合、源泉徴収をしなければなりません。
給与として仕訳けてしまうと帳簿も複雑化してしまうため、シンプルな科目に分類したいところ。
そこで、書類上複雑化しないためには、記帳の時点で『福利厚生費』として仕訳をするのがベターといえます。
ここでも注意しなければならないのが、計上の原則。
福利厚生費にするには、『従業員などが食事の価額の50%以上を負担すること』かつ『会社の負担額が税抜1カ月3,500円以下であること』の両方の要件を満たすことが原則となります。
例外もありますが、店舗によっては食事にかかった金額の半額をアルバイトに負担させるケースもあります。
逆に、これらの原則から逸脱してしまうと、福利厚生費として“計上NG”と判断されてしまうため、留意すべきところです。

このように、飲食店の勘定科目と仕訳は複雑なように見えますが、ルールを把握し、一貫した記帳ができれば、節税対策になります。
これまでつけてきた帳簿を、確定申告前に一度、見返してみてはいかがでしょうか。


※本記事の記載内容は、2019年12月現在の法令・情報等に基づいています。