佐々木税理士事務所

軽減税率が契機に!?  “ゴーストレストラン”普及の兆し

19.11.05
業種別【飲食業】
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消費税率アップに伴い、実店舗を持たない宅配専門の飲食店“ゴーストレストラン”に注目が集まっています。
軽減税率の対象となるデリバリーは、今後ますます利用者が増えるとされる市場です。
ここでは、ニューヨーク発といわれるゴーストレストランの仕組みと利点を見ていきます。
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海外で増加する“ゴーストレストラン”とは?

一つの店舗を展開するには、都内だと最低でも1,000万円は必要といわれています。
しかし、多額の資金を費やしたにもかかわらず、3年以内で廃業に追い込まれてしまう店がその7割とも。
そこで今、日本でも広まってきている新たな形態が“ゴーストレストラン”です。
アメリカでは“クラウドキッチン”や“バーチャルレストラン”とも呼ばれています。
“ゴーストレストラン”では、お客に店に来てもらうのではなく、電話で注文を取り、お客の自宅に料理を運ぶ営業形態です。
Uber Eatsなどの宅配代行サービスを利用すれば、調理だけに集中できるので、電話が鳴り響くわずらわしさからも解放されます。

また“ゴーストレストラン”の場合、さまざまな飲食店経営者とキッチンをシェアすることもあります。
シェアキッチンにはいくつかのメリットがあります。
まず、必要器具などが完備されているため、開店前のスタートアップにかかる費用を格段に押さえることができます。
また、シェアキッチンは、さまざまな飲食店経営者らとのコミュニケーションの場にもなります。
たとえば、移動販売でサンドウィッチを提供するA店と、配達専門のラーメン店を営むB店、カレーデリバリーを主軸とするC店が一つのキッチンをシェアしているとします。
キッチンを共有する仲間として、販売地域に関する情報交換をしたり、新作の味見をしてもらったりなど、相乗効果が生まれるといいます。
さらに形態によっては、キッチンを貸し出す側が配達代行や店のPRなどを一任しているケースもあります。
“ゴーストレストラン”は、資金も従業員を雇う余裕もないけれど、店を出したいという挑戦者にとって最大のチャンスの場なのです。


料理人のためのコワーキングスペースが拡大

ゴーストレストランで成功するにはポイントがあります。
それは宅配を希望する人に合わせてサービスを提供する時間帯や拠点を調整することです。
たとえば、ターゲットがビジネス街なら、ランチタイムの11時~14時だけ食事を提供するようにします。
逆に、飲食店の少ない住宅街の住人がターゲットであれば、休日の夕方から夜にかけて家族向けの食事を提供するのです。
さらに、宅配を希望する人の数によって、昼間はA町で、夜はB町で、さらに祝日はC町で……と、サービスの拠点を変えていきます。
このように臨機応変に動くことができるのも、ゴーストレストランの強みといっていいでしょう。


1日シェフも可能! 手軽に飲食店経営を

ゴーストレストランは低料金で飲食店をスタートできるとはいえ、キッチンをシェアするにも契約料はかかります。
キッチンスペースを提供する事業者によっても異なりますが、3カ月で50万円、1年で100万円程度が少なからず発生します。
そこで、最近では“1日ごとに利用できるキッチン”も登場しました。
東京エリアで、その日に空いている場所を1日借りるというシンプルなもので、料金は定額よりも格段に抑えられます。
また、キッチンの“家主”には、料理人と運営事業者との間で交わされた契約料の80%が支払われるという仕組みのサービスも。
たとえば、調理器具や電気代、ガス料金などがすべて込みで、1日10万円の場合、2万円が事業者へ、残り8万円は“家主”へ。
一見、事業者の儲けが少ないように思えますが、1日都内数カ所×30日と考えれば、決して安くはありません。
また、すべてクラウド(インターネット)上でのマッチングになるため、人件費なども不要。
この新たなサービスが、ゴーストレストランの普及を加速するかもしれません。

これから飲食店を始めたい人にとっても、初めてオーナーになりたい人にも適したゴーストレストラン。
現在は都内を中心に広まっていますが、今後は日本各地でも展開されていきそうです。


※本記事の記載内容は、2019年11月現在の法令・情報等に基づいています。