佐々木税理士事務所

よかれと思ってやったのに……究極のありがた迷惑『みなし贈与』

19.11.05
業種別【不動産業(相続)】
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自分の子や配偶者のために、自らの財産を譲りたいと思う人は多いでしょう。
その際に、贈与税が発生するか否かは、多くの人が気にするところです。
ですが、『みなし贈与』はどうでしょうか?
贈与税は、贈与した場合にだけ発生するものではないのです。
ここを見落とすと、よかれと思ってやったのに、あとに遺された人が思わぬ課税で苦しむということにもなりかねません。
そうならないためには、どうしたらよいのでしょうか?
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どういったものが『みなし贈与』になるのか

まず、『贈与』とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって成立する契約をいいます(民法549条)。
この定義からすると、たとえば、安く財産を譲り受けた場合や借金を帳消しにしてもらったような場合には、法律上は『贈与』には該当しません。
しかし、法律上『贈与』には該当しなくても、対価を支払わないで利益を受けたり、著しく低い価額の対価で利益を受けたりする場合には、実質的には贈与を受けた場合と同様の経済的効果が生じます。
そこで、課税の公平を図る観点から、このような場合にも、贈与により財産を取得したものとみなして、贈与税を課すことにしているのです。
これが、『みなし贈与』といわれるものです。
次に、代表的な事例をご紹介します。


みなし贈与の具体例(1)保険金や年金など

親が「子どもが将来受け取れるように」と生命保険をかけたり、個人年金の積立てを行ったりすることがあると思います。
しかし、これは保険料や掛金を親が支払っているわけですので、子どもが満期を迎えた保険金などを受領する場合には、子どもに贈与税が課されることになります。
このようなケースの多くは、その子の幼いうちから、親が子に知らせることのないまま支払いを行っているため、子は保険金などを受け取った後に、突然の税務署からの通知によって贈与税の存在を知ることになります。
親の死亡によって保険金を受け取る場合(この場合の保険金は『みなし贈与』財産ではなく『みなし相続』財産となります)と異なり、非課税とはなりませんので、注意が必要です。


みなし贈与の具体例(2)不動産の譲渡など 

息子が結婚することになったので、自分が所有する不動産を息子に譲ろうと考えた親がいるとします。
その場合、無償で譲ったのでは贈与税がかかってしまうと考えて、安く譲ってあげることを検討することがあると思います。
この場合、たとえば、通常1億円の不動産を息子が1億円で買い取れば、不動産を譲り受けた息子に贈与税が発生することはありません。
しかし、これを1,000万円で譲渡した場合には、法律上は『贈与』にはなりませんが、1億円との差額9,000万円について贈与税が発生することになります。
贈与税はほかの税目よりも税率が高いので、せっかく安く不動産を譲り受けることができたとしても、息子は高額の贈与税の支払いに苦しむ事態が想定されます。
また、その場合の贈与税を親が立て替えれば、厳密にはそれも『みなし贈与』に当たり、立て替えた部分に更に贈与税が発生するという悪循環に陥ります(実際に税務署が立て替えた事実まで把握するかどうかという問題はあります)。

また別の例では「長年連れ添った妻が安心して老後を過ごせるように」と、家の名義を妻に変更することを考える夫がいるとします。
この場合も、妻は無償で家を取得できることになりますので、妻には贈与税が発生することになりますが、妻に収入や預貯金などがなければ、妻自身が数百万円(不動産の価値によっては数千万円)もの贈与税を支払うことは不可能でしょう。


みなし贈与を回避するためにできること

これらの事例からわかるように、家族のためによかれと思ってやったことなのに、結果として、家族が高額の贈与税の支払いに苦しむという事態になりかねないのが、『みなし贈与』の怖いところです。
しかも気づいた時(税務署からの通知を受けた時)には申告期間を過ぎているため、もれなく加算税が上乗せされてしまいます。
このような事態を回避するための第一歩として、まずは、法律上『贈与』ではなくても贈与税が発生する場合があるということを知っておきましょう。
そのうえで、配偶者に居住用不動産を贈与するような場合や親から子へ住宅取得資金を贈与するような場合など、税法上用意されているさまざまな非課税制度を上手に活用しましょう。
ただし、非課税制度の適用を受けるためには贈与税の申告をすることが必要になりますので、申告を忘れると、多額の贈与税が発生することになります。
この点も、ご注意ください。


※本記事の記載内容は、2019年11月現在の法令・情報等に基づいています。